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攻略対象者なのに悪役令嬢を溺愛中  作者: のあ
第一章【学園入園前)】
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侍女長デリア 婚約の儀

初めまして、私はシャルル王子の侍女長を務めますデリア・ラジヴィと申します。

中級貴族の私は娘が産まれた直後にこの国のシャルル王子がお生まれになったことから、シャルル王子の乳母として王宮に召し抱えられることとなりました。乳母としての任を終えたのち、王妃様のお誘いもあり、そのままシャルル王子の身の回りのお世話をする侍女たちを取りまとめる、侍女長の役目についたのです。


親の身としては我が子が1番可愛いのは当然のことなのですが、シャルル王子と接していると、間違いなくこの方が1番お可愛いと思ってしまいます。

高貴なお生まれのシャルル王子は、その高貴さはもちろん他の者と比べられるべくもない美しい容姿のお子様でした。


赤ん坊の頃から天使、妖精と崇められ、ある程度の御歳になられると女神に例えられ、10歳となられても益々そのお美しさは輝きを強めています。


若い侍女がシャルル王子を見ると惚けてしまい、まるで仕事にならないため、シャルル様御付きの侍女は、既婚の者のみに統一しております。


とはいえ、既婚の者であっても対面する者は全て顔を赤らめることになるため、シャルル様は侍女たちの体調を気遣う羽目になっていることは嘆かわしい限りです。


一度、思いつきで侍女の代わりに男性の御付きをつけてみましたが、男性であってもシャルル王子に魅了されてしまうのを目の当たりにしてしまい、大人しく侍女に戻すことにしたのでした。


この後さらに成長していかれるシャルル様がどうなられるのか、期待半分、心配半分といったところでしょうか。


さて、昨日王族が主催されたパーティーでベアトリス様がシャルル様の婚約者として発表されたとのことです。


私はパーティー当日は王宮のシャルル様のお部屋の片付け等があり会場には出向いておりません。会場の給仕については、また別の担当のメイドがこなしています。


会場で、ベアトリス様にお会いできていればどんな方か知れたのに、と少し残念でもあります。

侍女長として、シャルル様のお妃になられる方の詳細は知っておくべきことなのです。


正直、職務以外でもとても気になってしまう、という個人的な思いも強いです。


男声も女性も魅了してしまうお美しいシャルル様の横に並んで見劣りしない人間は存在しない、と確信しております。同じ女性として同情を禁じ得ません。


我が子のように大切なシャルル様が気分を害すような酷い性格の女性であることも心配の一つです。貴族の中には宝石や服を湯水のように購入することに戸惑いのない方も少なくありません。また、侍女たちを奴隷のように扱う方もいらっしゃいます。

侍女たちは、それでも表面上は何もないように対処できますが、それを見たシャルル様が御心を痛められることはわかります。


宰相のベルナール様の御令嬢とのことですので、マナー等は教育されていらっしゃることと存じますが、これから王宮で何度もお会いすることになる方が、嫌な方でない事を祈るばかりです。



******



婚約発表から2週間、色々と段取りがついたベアトリス様が本日初めて王宮にお越しになります。


婚約契約書にサインをし、婚約の儀を執り行われます。

婚約の儀は城内の神殿で行い、その後皆様で昼食をとり、私目がベアトリス様に王宮内をご案内する予定でございます。


年甲斐もなく、緊張するのは一体何年ぶりのことでしょうか。




王宮の玄関口のホールにて、国王、王妃、シャルル王子、シャルロッテ王女、アンリ第二王子がお出迎えになり、ドアバック家の方々を迎え入れます。

王族の皆様毎に数人ずつの侍女、執事が後ろに控えながら並ぶので結構な人数ですが、王宮の玄関ホールの大きさでは充分にあり、問題になりません。


馬車の音が近づいてくるのが聞こえ、大きな扉を門番が開き、ドアバック家の方々が入室されます。


宰相のベルナール様、その奥方様と御子息フェルディナンド様。そして1番最後に静々と入ってこられた方がベアトリス様ですね。

私は頭を下げたままベアトリス様を盗み見ておりました。


話にはきいていたのですが、茶色い髪の奥様以外の御三方は皆様美しい黒い髪をしていらっしゃいます。

宰相であるベルナール様は王宮にて何度かお見かけしておりましたが、揃われると圧巻の光景です。


ドアバック家の皆様は、奥様以外は目尻の上がったお顔立ちで、ベルナール様とフェルディナンド様は少し怖い印象を持ってしまいます。

ただ、皆様大変見目麗しく、ベアトリス様もパッチリとした大きな瞳の大変にお美しい方でした。

この方であれば、シャルル様とお並びになっても辛い思いはしなくてよいのだと、誠に失礼ながら将来のお妃様の御容姿に安心を抱いてしまいました。


その後、皆様で婚約の儀に赴かれた後、王宮の食堂にて御昼食の運びとなりました。




ご昼食後、ベアトリス様のお兄様であるフェルディナンド様も同行されるとのことで、お2人に王宮内をご紹介して回ります。


シャルル様も同行されたい、とおっしゃりましたが本日は魔法の鍛錬の日、ユアン様がお待ちですので同行をお断りいたしました。

その時フェルディナンド様が喜んでいらっしゃるご様子でしたので、フェルディナンド様はあまりシャルル様のことを好きではないのだと察しました。

この方には気をつけないといけませんね。


王宮はかなり広いため、歩いて回ると1日はかかります。

本日は当面必要となる主要な施設のみご案内いたしました。

特に、婚約者としての教育を行う部屋を中心にご案内いたしました。

婚約者として、王宮内にベアトリス様の私室をご用意させていただく旨ご説明した際、フェルディナンド様が激昂し、ベアトリス様が嗜められるのを見て、先程のフェルディナンド様のシャルル様への敵対心は妹のベアトリス様に対する愛情によるものだと察して微笑ましく感じました。


王宮見学が終わって帰られる際、侍女である私に対してもきちんとお礼を言い、美しいお辞儀をしていかれました。


*******


「デリアから見てどうだった?」


夜にシャルル様へお茶をお持ちすると、シャルル様からベアトリス様の印象を尋ねられました。


「お美しい方ですね。」

と、当たり障りのないことを申し上げる。

わかりやすく不満な顔をされるシャルル王子。


「俺はデリアのことはとても信頼している。

元乳母であり、第二の母と言っても過言ではない。

俺のことを1番理解しているデリアに、また侍女長の立場として、彼女が王妃としてやっていけるか、率直に感じた事を教えてほしい。」


信頼いただいているのは知っていましたが、言葉で伝えていただけるととても嬉しいものですね。

それでは、ご期待通り、私の印象を申し上げましょう。


「シャルル様のが婚約者として、申し分のない方だとお見受けしました。

まず、立ち振る舞い、全てのマナーはほぼ完璧。10歳と言う御歳を鑑みると満点と言って良いでしょう。」

ふむふむと頷きながらきいてくださるシャルル様。

「失礼ながら心配しておりましたご容姿の面でも問題ございませんでした。シャルル様が思っていらっしゃるより貴方様の横に立つ、というのは女性にとって厳しい事ですのよ。」

と言うと苦笑いを浮かべるシャルル様。


「その点、ベアトリス様はお顔立ち、髪色ともシャルル様と系統が違いますが、類稀な美貌を持っていらっしゃいます。

シャルル様の太陽のような黄金色の髪とベアトリス様の宵闇のような黒髪のコントラストが際立って、お二人が並び立った際には大神お二人が並びたたれたようで、想像するだけでうっとりしてしまいますわ。」

「デリアにそんな風に言われると照れてしまうな、、、」

あらお可愛いらしい。珍しく赤くなられてますわね。


「侍女たちへの対応も完璧でしたし、しっかりとした高級貴族のマナーは抑えつつも、下々のものに対する優しさも見受けられました。

これなら、御付きする侍女たちからも不満が漏れることはないでしょう。



ただ、、、」


少し言い淀むと、シャルル様が怪訝な顔をして先を促す。


「これほどまでにお美しくて、立派な淑女でいらっしゃるベアトリス様について、今まで侍女の間でも貴族の間でも話題に上がることがありませんでした。

いくら社交会デビュー前だったとしても通常考えにくいことです。


考えられる理由としては、かなり幼少の頃から王族の方と宰相ベルナール様でのご婚約の密約があり、ずっと隠してこられたせい、ということ。


若しくは、、、」


本日、ベアトリス様に同行された兄上様、尋常ではない妹への可愛がり方に少し背筋が寒くなったのです。流石にこれは言えません。


「うん、そのことについては僕も理解している。

フェルディナンド、だろ?」


はっと顔をあげてしまう。

「・・・ご存知だったのですね」

「あれだけあからさまだと分からない方がおかしいよ。

でも結果としては俺だけではなく他の男からもベアトリスを遠ざけてくれていたのだから、よくやってくれた、と言ってやっても良いな」


お互い、ふふふ、と笑い合う。


「私どもはシャルル様とベアトリス様の味方ですわ。お任せくださいませ。」


「頼りにしている。」


そうやって私は素敵なお二人のためにフェルディナンド様排除の決意を固めたのでした。

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