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攻略対象者なのに悪役令嬢を溺愛中  作者: のあ
第一章【学園入園前)】
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フエゴ目線 パーティーから討伐まで

10歳になったら王様から、パーティーでお祝いの言葉をいただく。


名誉なことだし、通常の10歳児は緊張する。


そんなことはわかっているけど、俺がパーティーの招待状を受け取って思ったのはシャルル王子がどんな格好で参加するのかな、ということくらいだった。


週に数回、剣の訓練を一緒に行い、顔を合わせているのにシャルルのキラキラ具合は消えない。


初めて会った時は女の子といっても過言では無いほど身長も低く、線も細かった。


3年経った今では身長も伸び、適度に筋肉もついて、もう女性だと思うやつはいないだろう。


それでも、俺より低い身長、相変わらずしなやかな動き、黄金の髪、妖精のような顔立ちのシャルル王子を見ると俺はいつもどきどきしてしまう。


「シャルルが女だったら良かったのに、、、」

とつい本音が口から漏れてしまい慌てて周りを見回す。


俺の部屋だし、俺1人しかここにはいないのだからそんなに慌てる必要はないのに。


「はああぁぁ・・・・」


長い長いため息をつき、眠りにつく


*******


パーティー当日


パーティーに到着後、両親は揃って王族への挨拶に向かい、俺は1人で両親を待ちつつパーティー会場を見渡す。


両親の茶会やパーティーで貴族の子供たちは顔見知りになったりするのだが、騎士団長である父はそういった催しをほとんどしない。

母も、自分の屋敷で開催することは少なく、母1人で呼ばれた催しに参加するので俺の知り合いは騎士団の団員かシャルル王子くらいだ。


知り合いが少ないこともあり、見つけられなかったので1人でガツガツと料理を食べていると父が呆れた顔で戻ってきた。


「母上は?」

「友人のご婦人と歓談しているよ。」

「親父は話してこなくていいの?」

「お前も知っているだろう、こういう場は苦手だ」


騎士団長という立派な役職があるのに父は社交には興味がない。

俺もこんな場は苦手なので、早く王様に挨拶して帰りたい。


そんなこんなで親父と飲み食いしながらだらだら話しているとシャルル王子が近づいてくるのがわかった。


明らかに周りの視線を一身に受けている。


それも仕方のないことだろう。

しょっちゅう顔を合わせている俺でも見慣れることのない、美しい容姿。

いつもは汚れても良いような、動きやすい服に身を包んでいても光り輝く容姿が、今日はさらにドレスアップしている。


オーダーメイドで体にぴったりと仕立てられた社交着は淡い紫色。そのか細いようにみえる長い手足が、薄らと筋肉を纏っていることがわかる。

黄金色の髪は王族である証でありながら、その色の美しさが整った顔を際立たせている。

例え髪の色が違ったとしても会場中の皆が彼に見惚れることだろう。


「この度は10歳になられまして、おめでとうございます。」父がシャルル王子にお祝いを述べている声をきいて、放心状態に陥っていたことに気付く。

「・・・おめでとうございます。」

俺も父に倣い、祝いの言葉を述べる。


「フエゴもおめでとう」


そう俺に声をかけられて我に帰る。

お祝いされたことに顔が熱くなるのを感じる。


今の俺はシャルル王子が見上げるほどに身長が伸びているので、話すときに上目遣いになられてしまう。

俺の方が身長が伸びたことをシャルル王子は悔しく思っているようで、ちょいちょい拗ねられる。


「同じ年齢なのにな」

上目遣いのまま悔しそうにいうシャルルが可愛すぎて更に顔が赤くなる。


「いつか追いついてやるから気にするな」

と、負け惜しみのようなことを言うので思わず


「で、殿下はそのままで充分です」

というか、それ以上育たないでほしい、と本音を漏らしてもらう俺。

馬鹿にされたと思ったのか、

「ぜったい!追いつく!」

と、シャルル王子には言われてしまったが、せめて身長だけは勝ち続けたいな、思うのだった。


その後、親父の友人のユアン、伯母のイフリータ、従兄弟のラファルが近づいてきた。


ラファルはナヨナヨしていて女みたいなやつだ。

俺はあまり話が合わない。


「ラファル、君の父上にはお世話になっている。もし良ければ君とも一緒に勉強できると嬉しい。俺の周りは大人ばかりで、剣についてはここにいるフエゴと修行しているが、魔法を一緒に学ぶ同年代の友人が欲しかったのだ」

「ふぇ!?私ですか!?よ、よろしくお願いします。」


ちょっとショックだった。

同年代の友人は俺だけで満足しているかと思っていたのに。

魔法も頑張ってみようか、とこっそり決意した。



*****



シャルルは何かを見つけたように俺たちの場から立ち去った。

ついまで追ってみると、見知らぬ少女の元に向かったようだ。


何か少し話した後、シャルルからダンスを申し込んでいるのがわかる。


心臓が激しく波打っているのを感じた。


ファーストダンスは通常大きな意味を持つ。

恋人、婚約者、妻。

決まった相手がいない時は親族。


シャルルの相手は黒髪の少女だ。王族の親族であれば金色の髪だ。


気まぐれの相手であって欲しい、と願ってしまう。


幸いなことにこの取り合わせには会場の全ての人が注目していたので、俺が凝視していることに気付く人はいなかった。


2人がダンスを踊ると、皆が2人に目を向ける。


優しげに何かを囁く様子のシャルル、赤くなる少女。


会場は完全に2人の世界だった。


******


その後、王からの婚約発表があった。

先程の仲睦まじい2人の様子に反対する者は誰もいなかった。


俺はその後、自分の部屋にどうやって辿り着いたか分からないくらいに放心していた。


わかってはいた。シャルルは第一王子、ほぼ間違いなく次代の王だ。

通常より早く婚約者候補が国の方針として定められて然るべき存在だ。


ベッドに横になりながら当たり前なことを考える。


いつも俺と剣を打ち合う、粗野な服に身を包んだシャルルと、ドレスアップして黒髪の少女と踊るシャルルの顔が頭に次々と浮かんで、眠りにつくことができない。


「・・・あれ?」


俺は熱くなった眼から涙が溢れていることに気づいた。


どうしてかは理解しているのだが、おれはその感情に強引に気付かぬふりをした。


明日もシャルルとの練習があるというのに、、、



*****


騎士団練習場。


俺はシャルルと会ったら開口一番言おうと思っていたセリフを言った。



「シャルル王子!昨晩はご婚約おめでとうございます。」

ちょっと怪訝な顔をされたり、俺の目の涙の跡を気にしたりされたがうまく流せた。




撃ち合いの際の雑談で、どうしても昨日の婚約者発表が頭から抜けない俺はその話題をふってしまう。「・・・綺麗な方でしたね」

遠目でしか見ていないけれど。


「ベアトリスか、そうだな。」

そんな名前だったのか。綺麗な人なんだな。


どうしても聞きたかったことを聞いてしまう。

「シャルル殿下は婚約に納得されているんですか?」

きょとん、とした顔で

「納得も何も、俺に合う家格と魔力を持つのは彼女だけという話だろう?」

と返すシャルル王子に俺は変な事を聞いてしまった事を後悔する。

立場上、王が決めた婚約者に納得するとかしないとか、そんな事は考えてもいけない事だ。



「とはいえ」

俺の突きが躱され、

「婚約者が彼女で良かったと思っている。」

にっと微笑みながら、カウンターを入れようとするシャルル。


意外な言葉をむけられ一瞬遅れたものの、強引に力でシャルルの剣を受けきる。

力勝負では俺に分がある。

それを理解しているシャルルはまた間をとる。


お互いに剣を構え、じりじりとお互いの動きを見据える。

「フエゴは婚約者はいないのか?」

お前がそれを言うか!?

と本人は理解していないセリフを吐かれた事に動揺してしまった隙をつかれ、胴に打ち込まれる。

パーン、といい音を立てて鎧の胴部分を叩く。

やっぱり力も強くなっているな、練習用の防具である簡易な鎧の上からでも腹に来る一撃だ。


「いてててててて」

思わず腰を押さえる。

シャルルが近づいてきて俺の鎧を外す。

「赤くなっているな。珍しいな、あんなに動揺するとは。久しぶりに綺麗に決まったからおれは満足だ。」

くそーと思っていると突然痛んでいた部分に冷たい指の感触がする。

「ひやっ!」

「変な声を出すな」

「き、急に触らないでください!ぞわっとします!」

あ、つい本音を、、、

シャルルがにやりと笑ったかと思うと俺の後ろに周りこみ脇腹をくすぐりだした。

「お、王子、止めっ!!」

力が入らないみたい。指でさわさわと触られている感触に全身が泡け立つ。こいつ、人の気も知らないで!



「コホン、仲が良いのは何よりだが、魔物が森から出たので討伐に行くが同行しますか?」

親父がいつの間にか近くに来ていてシャルルを止めたことにホッとした。


*******



ウォーウルフ討伐。


魔物討伐は今までにも騎士団に同行させてもらっていた。

今回も余裕だろう、とたかを括っていた俺は心底後悔した。


恐らく群れのボスだろう、明らかに他のウォーウルフと違う個体は、この人間の群れで1番弱い俺に向かってきた。


前線の直接攻撃部隊に参加したが、俺は後方に位置していたのに、真っ先に俺に向かってきたのだ。

更に後方には弓隊とシャルルがいる。ここで食い止めないと。


と勇ましく対峙した俺だったが、明らかに力量差があった。


噛みつきはなんとか防いでいるものの、その素早い動きから繰り広げられる引っ掻き攻撃は避けきれず、ついには肩から胸にかけてかなり大きな傷を負ってしまった。

血が流れてふらふらしてくる。


親父には2匹に囲まれたら声をかけろと言われていたがこいつは2匹どころの強さではない。

もうここが潮時だ。

「誰か、こっちに!」大きく叫ぶ。


意識を手放さないようにしていると金色の髪が目に入る。

「シャルル王子!」

1番来てはいけない人が来てしまった。


「フエゴ、動けるか!?他の騎士が来るまで粘るぞ!」

「はい!」

なんとしても倒れるわけにいかない。


シャルルが、ウォーウルフと戦う様を見ながら、情けないことに俺は立っているだけで精一杯だった。


「フエゴ、シャルル王子!下がれ!」

父が来てくれた、もう安心だ、

と思ってしまった俺は一気に気が抜けてしまいガクンと膝をついた。

なんとか意識を保とうとしたが、朦朧としていた。




次に意識をしっかり取り戻したのはシャルルの柔らかい囁きだった。


「フエゴ、どうだ?」


なんかよくわからないが耳元で囁かれくすぐったくなる。

「ん、んん、、、えっ!?」

口付けでもされるのではないか、という近いところにシャルルの端正な顔がある。


「シャインヒールをかけたのだが、見た感じ傷は治っているが痛みはあるか?」

普段よりずっと近いところで、優しい声がかけられる。



「!!!!だ、大丈夫です!どこにも痛みはありません!」

と言いながら起きあがろうとしたらくらっと血の気が引いてまた倒れた。

もしかして、もしかしなくてもこの体勢は膝枕なのでは、と気付く。



「流した血は戻らないようだな。

このまま膝をかしてやるからもう少し休め。」

「そんな、、、」

「王子の膝枕なんか、一生に一度も味わえないぞ?

大人しく寝ているがいい」

やっぱり膝枕か!


昨日、婚約発表を聞いて気持ちにケリをつけたはずなのに、、、

これ以上赤くなった顔を見られたくなくて手で塞ぐ。


ずるいなあ、俺が危ないところを助けに来てくれて、傷まで治してくれて、さらに膝枕。

完全に落としにかかっているとしか思えないけど。

全て素でやってくれているんだもんなあ。


戦況を見ているシャルルの顔を眺めながら考えていた。


一区切りついたのか、こちらを見るシャルル。

「なんだ?」

「!あ、あの、ありがとうございました。

一生着いていきます。」


「むしろ、近衞騎士を目指すなら一生お守りいたします、とでも言ってくれた方が良いがな」

もうそれはプロポーズだと思う。


「、、、もっと強くなって、言い直します」

俺はぼそっと呟いたのだった。


******


討伐終了後


親父が、ボスウォーウルフの大きな魔石を俺にくれる、と言った。

正直、俺は全然攻撃を当てられていないしシャルル王子に守ってもらって、最終的には騎士団全員で倒したようなものだ。


俺がもらっていいのかな、と思ったが特に反対もない。


もらった魔石は俺が見た中で1番大きい。

繁々と見ていると


「勇敢だったぞ、かっこよかった。」


とシャルルに言われ、完全に撃沈した。


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