学園祭当日12演劇男装騎士は月夜に夢を見る10
104学園祭当日12演劇男装騎士は月夜に夢を見る10
フエゴ視点
「よう。」
「ようじゃないでしょう。気軽に来ないでくれるか。」
嫌そうな台詞のくせに、俺が訪ねるといつも嬉しそうにしてくれる。俺が騎士団の訓練に参加するようになって、シャルルに会いやすくなった。
騎士団の訓練場は王城のすぐ近くなので、帰り際に寄る、という名目で騎士団によった後にシャルルの元にも立ち寄るようになった。
何気にシャルルは暇なようで、顔を出すと大抵会える。
元々王女殿下に着いている護衛騎士はベテランだし、ポッと出のシャルルはあまり重要な位置にいないのが窺い知れる。
ならなんで学生の時に引っ張り上げたのか、どんな裏があるのだろうか。
まだわからないが、こうやってシャルルの話を聞いたり、騎士団での話を聞いていけば真実に辿り着けるだろう。
「そういうなって。
同期のお前と話がしたくてな。」
いくら憎まれ口を叩こうが、実際のところは俺が来ると嬉しそうだ。言っちゃ悪いが暇なのだろう。
ここ最近、学校で有ったことやら、騎士団での訓練の様子なんかを楽しそうに聞いている。
目がキラキラしていてとても可愛い。
でも、いつも思うんだよな。学校はすっかり味気なくなってしまった。
元々、剣術のクラスだけが楽しみだった。実力が拮抗しているシャルルがいなくなってからはただの惰性としか感じ無くなってしまった。
お前がいてくれたらよかったのに、とつい口を滑らせてしまったが、コイツが退学したのは彼自身が望んだことではなかったのに、と慌てて取り繕った。
私も出来ればもう少しお前とやり合いたかった、と、呟くシャルルに居た堪れない気持ちになる。
「………………なあ、シャルル。」
「ん?」
「お前さえよければ、騎士団の訓練に俺と一緒に参加しないか?王女様の護衛についていても、まだ俺もお前も半人前だ。空き時間に鍛えることは王女様の為になると思うんだが。」
「確かにな!王女殿下に進言してみる!」
我ながら良い案だ。何故今まで思いつかなかったのか。
こうして、暇を持て余している様子を見ると、せっかくの才を腐らせるようで勿体ないといつも感じていた。
こんなに近くにいるのなら、一緒に訓練するのは最高の案のように思えた。
「そうか!俺も騎士団にお伺いを立てておくよ。」
シャルルが王女から許可を貰えさえすれば、騎士団の許可はあっさり降りるだろう。
これで、シャルルと今後も一緒に訓練できる!
案の定、王女、騎士団の許可は簡単に降り、シャルルの訓練参加が決まった。
その時点で、俺は今まで失念していたことに思い至った。
もしかして、ヤバいかも?
シャルルは、学生の中でも線が細く美形だ。
騎士団学校の中では、学生達がまだ身体が出来上がっていないこともあり、体型についてそこまで悪目立ちしていなかった。
ただ、騎士団は大人の集団だ。そりゃあ数人細身の団員はいるものの、その大半は筋肉質で体格が良い。
シャルルがこの中に入れば明らかに浮くだろうな、ということは想像がつく。
とはいえ、シャルルの剣の腕は確かだ。最初は異質に感じるかもしれないが、すぐに馴染むだろう。
一応騎士団の先輩方に事前に線は細いけど、腕はいい、と伝えて回っておいた。
シャルルが初めて参加すると騎士団から騒めきが起こった。
あんなに言って回ったのになあ、と思っていたが、複数の先輩に囲まれ、
「あれ、お前の同級生だろ?女じゃないのか?」
「めっちゃ美人じゃん」
「やべえ、新たな道を開きそう」
等と責め立てられた。
見た目で舐められるだろうとは思っていたが、完全に女扱いされるとは。
先輩方の言いようにイラッとするが、まあ、実際に剣を合わせば評価も変わるだろう。
「…………ご指導願えますか?」
シャルルは、周りの視線に負けず、先輩騎士団員に挑んでいた。
自然と、皆が注目する。
2人は長く打ち合っていたが、見るからにシャルルの気迫が勝っていた。
アイツも舐められないために、と必死なんだろう。
周りで見ている騎士団員も舐めた目から、アイツの剣の巧みさに見惚れる目に代わっていった。
シャルルは凄いんだぞ、と友人として誇りに思う。
「参った。」
遂にシャルルが相手に一本とり、決着がついた。
あの先輩は強いのに、凄いな。
騎士団長がシャルルに歩み寄る。
「お嬢ちゃんがやってきた、と思ったが、これは立派な護衛騎士だな。」
騎士団員達も、今の一戦でシャルルの実力を測っていたが、騎士団長の一言で、実力は問題ないと決定付けられた。
団長は異次元の強さを誇り、団員全てに尊敬されている。
彼のお墨付きを貰えたことで、名実ともに護衛騎士として認められたと言っても過言ではない。
その後、シャルルは果敢にも騎士団長に挑んでいたが、ボコボコにされていた。
騎士団長の強さは騎士団員には知れ渡っているため、団長に挑むものは少ない。
知らなかったこととはいえ、団長に挑む、という無謀かつ勇敢な行いに騎士団員達からは暖かい目で見られるようになっていた。
「やるな、シャルル。」
訓練終了後、ようやく話しかけた。
騎士団に上手く溶け込めるか多少心配していたが、全く問題なかった。
「騎士団長に勝てる気がしない。」
「ははっ。学生が入団直後に勝てるような騎士団長なら国が心配になる。」
打ち合って団長との実力差がわかっただろうに、悔しそうにしている様子を見ると勝つ気でいるんだろう。どれだけ向上心が強いんだ。
「いつか、届くといいな。」
そう呟いたシャルルを見て、急に不安な気持ちになる。
どこまでも剣の道を突き進む、それはストイックな生き方だ。
剣士としては真っ当な考え方なのかもしれない。
だが、シャルルはそうでなければならない、という追い詰められたような、糸が切れれば崩れるような危うさがあるように感じるのだ。
「…………シャルルは剣の道を突き詰めていくのか?」
「当たり前だろう?」
当然のように答えるシャルルにやはり危うさを感じる。
剣の道を進めなくなったとき、ポキリとコイツの軸が折れるんじゃないか、という危うさだ。
「世の中には…………結婚、、とか、家庭の幸せ、みたいな道もあるんだぜ。」
「は?」
呆れた顔をされた。
いや、ゴメン、俺も何を言っているかわからない。
剣以外の道もあるんだ、と指し示してやりたかったんだが、咄嗟に何も出てこなくて。思いついたのが、プライベートの方だった。
俺もシャルルも、結婚を考える年だからそれほどおかしい事は言っていないはず!
「…………いや、結婚、は家の義務みたいなところがあるから、恋人を作って、楽しむとか。
ああー。何言ってんだ、俺。
いや、別に男女の仲云々じゃなくてもだな、男同士でも、楽しめ……いや、いやいや!」
ヤバい!どんどんよく分からないことを口に出している!
最後ら辺は俺の願望になって、いや、うん?!
「男女の色恋なんか必要ない。私は女性に興味はないからな。男同士の仲、というなら私とお前は最高の仲だろう?」
頭が真っ白になりそうだった。
女性に興味がない?
俺とお前は最高の仲?
…………プロポーズ?
気付けばシャルルのことを抱きしめていた。
「!…………俺、お前のこと大事にするから。」
「いや、もう充分大事にしてもらってると思うが。」
男同士でも良いのか?
てか、本当に男なのか?
筋肉はついているのに柔らかいとか意味がわからん!あと、やっぱり良い匂いがする!
ラファル視点
「ラファル先生、ご無沙汰しています。」
今日は久々にシャルル君に会いに来ました。
相変わらず素直そうなシャルル君の笑顔に癒されます。
ただ、私は怒っています。
ただでさえ、突然の学生の引き抜きに怒っていたのに、城内で情報収集したところによると、第二王女殿下の護衛騎士は充分足りていたとのこと。
わざわざ学生のシャルル君を引っ張りあげる意味がわかりません。
基本彼の働きは護衛騎士の中で補助的なものに徹しているのに、隣国のテール王子が来る時はメインの位置にいる、ということはテール王子からの圧力があった、と見るのが妥当でしょう。今日は同席していただいている王女殿下を揺さぶってみましょう。
「お久しぶり、シャルル君。本来まだ学生のはずな君が、ここでどんな仕事をしているか知りたくてね。」
「いやあ、本来まだ学生であるはずの君を引っ張り上げた王女殿下にも拝顔したくてね。」
「学生の内の青田買いはルール違反。騎士団にのみ黙認されていると思っていましたが、王族自らそのルールを破られるとは。本当に驚きました。」
「シャルル君は非常に優秀な生徒で……したので、お気持ちはよく分かりますが、いささか横暴が過ぎたのでは?魔術師団としても勧誘していたのですが、まさかご存じなかった……とは、おっしゃるまい?」
バタン。
「王女殿下ー!!医者を!!早く!」
王女殿下は泡を吹かれて倒れられました。
いやはや、情けない。
これからテール王子の件を追求していこうと思っていましたのに。
軽いジャブを打って、精神的に追い詰めてから、と思ったのが裏目に出たようです。
「申し訳ございません!先生もお忙しいのに、お付き合いいただいてしまいました。お仕事に戻っていただいて大丈夫ですよ!」
「いえいえ、僕にも原因の一端はありますからお気になさらず。」
「いえ!先生は王女のご不調とは無関係です!なんなら私からも証言いたします!」
今のやり取りを聞いていたのに無関係とは?
驚きましたが、そんな純粋さが彼の魅力でしょう。
願わくば、擦れずにずっとそのままでいてほしいものです。
「シャルル君、王女殿下のご様子も心配だと思いますが、王宮の医師に任せておけば大丈夫でしょう。君がここ最近どう過ごしているか聞きたくて伺いました。お話を聞かせてください?」
今日の本題その2。
シャルル君が今の任務をどう過ごしているか聞き取ることにします。
その1である、テール殿下からの圧力の内容確認については、王女殿下が倒れられて有耶無耶になってしまいましたが。
シャルル君から問題のない範囲で仕事内容を伺い、疑いが確信に至りました。
やはりというかなんというか。
「……なるほど。充実しているようで良かったです。」
とりあえず、シャルル君に安心させるよう声をかけます。
「…………やはり護衛任務はみせかけですか。」
ただ、本音がつい口に出てしまいましたが。
「え?今なんと?」
小さな声だったので聞こえなかったようです。
聞こえていても誤魔化しましたけどね。
一生懸命職務を全うしようとしているシャルル君は知らなくても良いことです。
「いえ、なんでもありません。それより、せっかく王城に勤めているのですから、魔術師団の方にも見学に来てください。いつでも歓迎しますよ?」
今目が輝きましたね?
シャルル君もやはり魔術師団に興味が?
「ぜひ!あー、でも、お忙しいですよね?」
「いえいえ、いつでも大丈夫ですよ。戦争でも起きない限り、通常は研究ばかりしていますので。」
いやあ、数十年前の戦争は大変でした。
私が出ないといけない場面を作り出すとは、本当に無能な王族です。
まあ、私が出向いたことにより敵軍を一瞬で蹴散らしましたけど。
「ありがとうございます。近々お邪魔しますね。」
後日、約束通り、シャルル君から訪問伺いの打診が来まして、予定は全部キャンセルしておきました。
「ようこそ、我が研究室へ!」
私の研究室に訪れたシャルル君はキョロキョロと見回しています。小鼠さんみたいで可愛いです。
「…………大きい、ですね?」
「ええ、シャルル君は学校の方の研究室も見ているから代わり映えがしないように見えると思いますが、並べている本も薬品も全く違うんですよ。」
学校に置けるものと、王城の研究室に置けるものはまったく違います。こちらの方が機密事項に触れる物が多い為、より濃い研究が出来るのです。
爆破物や毒性の強い薬品など、一国を滅ぼすことができるようなものもあります。流石に其れ等は告げずに、説明を続けます。
シャルル君の有用性についても熱弁を振るいます。
彼がいてくれると私の研究も進みますし、別に彼が何もできなくても居てくれるだけで私のモチベーションが上がります。それだけでもこの国にとって最大のメリットです。
ここに来てほしい理由について述べていると、よくわかっていなそうですが、頷いてくれています。
「そういうわけで、シャルル君がいるべき場所はここなんです!」
キョトンとした顔も可愛いですが、今は畳み掛けるべきでしょう。
「護衛騎士、という任務もお飾りのものでしょう?私達魔術師団は、本当のシャルル君を欲しているのです。誰にでも出来る仕事ならシャルル君でなくでもいいはず。シャルル君本人を欲している私達の元で働く方が貴方の幸せに繋がると思います。」
そう告げた後、シャルル君はショックを受けたような顔をした後、
キリリと表情を引き締めました。
「確かに、先生の仰る通り、護衛騎士としての任は私には過大なもの。お飾りと受け取られるのは覚悟の上。でも、その事実を受け取ってしまえば私は永遠に奮起出来ないでしょう。」
「私は第二王女殿下の護衛騎士シャルル!例え物足りない我が身であっても!第二王女に心も体も捧げます!!」
………………やり方を間違えたようです。
私としたことがなんたる失態。
真面目なシャルル君のことですから、逆に煽ってしまう結果になったようです。
仕方ありません、今回はこちらが折れるとしましょう。
「わかりました。シャルル君は護衛騎士としてやっていかれるのですね。でも、魔術師団も諦めませんよ。色々と迷いが出た時は私たちも全力で対応します。」
そう言って、シャルル君の頬に手を添える。
「シャルル君、今後も色々と葛藤があると思います。魔術師団はいつでも貴方を歓迎します。王族にだって歯向かえる力があります。いつでも来てくれていいんですよ。私たちが全力で貴方を守りますから。」
シャルル君の瞳が潤みます。そんなに辛い思いを抱えているなら、お飾りの護衛騎士なんか投げ出してこちらに飛び込んで来れば良いのに。
「ここに来てくれたら、ずっとどこからも守り通してあげますから。…………ここからも出られないですけれど。」
離してあげられる気がしません。
テール視点
「王女殿下!御息災か?」
王女への面談にかこつけてシャルルに何度会いに来ても全く私達の仲が進展している感じがしない。
王女ではなく、護衛騎士であるシャルルにばかり話しかけていれば自身で気付かないか?
いや、不審には思われていそうだが、その理由には思い至らない、というのが不思議だ。自分に会いに来てるとはつゆほども感じていないということがわかる。
女性だと私に気付かれていないと思っているから考えに至らないのだろうか。いや、ダンスも踊って至近距離で接したのだから気づいていると思っていてもおかしくないのだが。
巷では、私が頻繁に王女殿下に面談を申し込んでいる為、王女殿下と私の婚約間近か!?という話まで出てしまっているらしい。
このままではいかん、と思い打開策を検討することにした。
「シャルル、私と試合をせよ。」
剣での試合で、正々堂々と身柄をいただくことにした。
王女殿下からは、シャルルは貴族の嫡男であり、簡単に私に譲り渡すことは出来ないが、本人の了承があればやむなしと(半ば強引にだが)許可を取ってある。
「賭けるのはお前自身だ。お前が負ければ俺の元に来てもらう。」
「………………お戯れを。」
!シャルルの殺気が膨れ上がるのを感じる。
護衛騎士といっても、所詮か弱い御令嬢の身だ、と侮っていた。
しかし、この殺気。
侮りすぎていたか?
「王女殿下、受けて立たせてください。これほどの屈辱、剣で晴らすより他なりません。」
「わかったけど木剣しか許可しませんわよ?!」
「大丈夫です。木剣だろうとぶち殺します。」
「ダメですわ!殺さないでくださいまし!」
もはや抑えるまでもなく、口頭にまで殺気が漲っていた。
何故かわざわざ騎士団長まで審判役として呼んできたかと思えば、御身を守る為になどと言われてしまう。
物騒な発言があったシャルルの目はギラついていて、実際身の危険を感じてしまうほどだ。
試合開始の合図と共に突っ込んで来たシャルルの一撃になすすべもなく負けてしまった。
更に追撃を加えようとするシャルルの打撃を騎士団長がいなしてくれた。本当にボコボコにするつもりだったらしい。
何も良いところを出せず、一方的な試合だった。
アソコまで他人に敵意を向けられたのは初めてだ。
殺してやりたい、という思いと怒りが伝わってきた。
「くそ!俺は諦めんぞ!」
完全な負け惜しみだった。今の俺ではシャルルに勝てない。
この一線で実力差がわかってしまったのだが、そう易々と諦めることもできない。
やはりこの女が欲しい、と思ってしまう。
それからは日常は剣の鍛錬に勤しみつつ、毎回シャルルとの試合を楽しみにしていた。
ずっと剣一本でやってきたシャルルと、他にも学ぶことがあった俺とでは下地が違うことは自覚しつつ、いつか一本をとって、その時は堂々と告白して嫁に来てもらいたいと夢想しつつ。
フエゴとラファル視点
「ついにフエゴまで駆り出されたのか。忙しい中すまないな。」
ここ最近、シャルルとテール殿下が頻繁に試合をしていて、騎士団の人員が審判役及びシャルルのストッパーとして駆り出されている。ストッパーとしての力量は物足りないものの、シャルルの友人である俺から事情を確認してこい、との指令を受けてこの場に来た。
「いや、何で隣国の王子様が毎回お前と試合ってんだ?騎士団内でも訳が分からないって噂になってるぞ。喧嘩でも売ったなら早く謝った方がいいぞ。」
「私も訳がわからないんだ。私が負ければ隣国に連れて行くと言われて、意地でも負けられないんだ。」
「「は?!」」
何だそれは?!
王女殿下の身柄を賭けた戦いと言われた方がまだ納得はいく。
何でシャルルが掛札になっているんだ!?
「あ、ラファル先生?」
「こんにちは、シャルル君。君が面倒に巻き込まれていると城内で噂を聞いて真偽を確かめようと伺ったのですが、今の内容、どういうことですか?」
シャルル君をテール王子が狙っているのではないか、という私の推測が正しかったようです。
王女殿下の護衛騎士になった経緯から危ぶんでいましたが、まさか本当に危惧していた通りだとは!
「テール王子から剣の勝負を挑まれまして、私が負ければ国に連れて帰るとふざけたことを仰られて、勝負を受けたのです。何度私が勝っても、また勝負を挑まれる、の繰り返しになっていまして、キリがないのです。意地になっているんですかね?」
「…………ふふふ、面白い冗談ですね?」
シャルル君は気づいていないようです。ポンコツ可愛いですが、気付かないうちにテール王子には退場願いたいですね?
「いやあ、まさかそんな話だったとはな。王子様には2度とそんな気が起きないようにしないとな。」
ここ最近の試合はシャルル狙いだったとは。俺が代わりに受けてたってやるしかない。
「どうしたら諦めて頂けると思いますか?毎回、毎回試合をさせられるのも疲れますし、王子の腕も上がってきているので一回くらいマグレで勝たれてもおかしくない状況になっています。私はこのままこの国で騎士としてやっていきたいのです。」
ん?
何で俺じゃなくて、この、ラファル先生だっけか?に相談するんだ?
確か学校の特別講師で魔術師団長だったはずだ。
シャルルとどんな関係なんだ?先生だったからこいつの方に相談するのか?
俺に任せればいいのに。
「大丈夫ですよ、シャルル君。先生がテール王子と話し合って納得してもらいます。」
「俺が変わりにコテンパンにしてやる。」
「先生!お願いします!
フエゴ、隣国の王子をぶちのめしたらダメだ。騎士団から聞いていないのか?私がボコボコにしないためのストッパー役が騎士団員の審判役の役目だ。ぶちのめしていいなら私がそうしている。」
ふふ、やはりシャルル君が頼るのは私ですね。
フエゴ君といいましたかね?シャルル君の友人は把握しています。君より僕の方が頼り甲斐のある大人なんですよ?
なんかイライラさせられるな。ラファル、ドヤ顔でこっちを見やがって。
ストッパーとしてここに来ているから止められているだけで、通常ならシャルルに頼られるのは俺の仕事なんだよ!
2人で睨み合っていると噂のテール王子がやってきた。
「お?今日は審判役は2人か?今日こそお前に勝って我が国に来てもらうぞ、シャルル。」
なんだと?ふざけんじゃねえ。
何を言っているのか、身の程を知らせてやりましょう。
先程まで睨み合っていた2人の心の声が一致した。
「お初にお目にかかります。私は当国魔術師団長のラファルと申します。」
「む?」
「我が国の護衛騎士を引き抜こうとしていらっしゃるとお伺いしまして、流石に看過できない事態と思い馳せ参じました。」
「この件は第二王女の許可をとっておる。お前に言われる筋合いは無い。」
「………………ふふふ、面白いことを仰る。我が国の内情をご存知ないのですね。無知をひけらかすとは。」
「……そうか、聞いたことがある、お前があのラファルか。」
「ご存知だったようで、話が早い。そこにいるシャルル君は我が愛弟子、引き抜くなら別の者をお願いしたい。」
この国の最大戦力である私の名前くらいは知っていたようだ。
叩きのめすのは容易だが、戦争をしたいわけではない。
穏便に引き下がってもらえるのならそれで良い。
私の言葉にテール王子は流石に少し考え込んだようだ。
そしてこう宣った。
「誤解があるようだが、シャルルには護衛騎士として来てもらうつもりはない。よって、引き抜きではない。我が妻として迎えようと思う。」
「変態だー!?」
シャルル君の絶叫が響く。
やはり本人は気付いてなかったようですね。
騎士としての実力を買われるなら、失礼ながら騎士団長クラスの者が誘われることでしょう。
シャルルくんが狙われるというのは、、、そういうことだと。
「テール王子、貴方が特殊性癖だということは理解した。我が国ではそれは許されていない。そういう心積りで私を国に誘われるなら、私は貴方を叩きのめすのみ!そして今日の勝負に負ければ、金輪際私と関わらないと誓っていただこう!」
「それは誓えん!私は諦めないぞ!」
よく分かっていないシャルル君とテール王子のやり取りはこれ以上続けても無意味でしょう。
「いえ、もう入国拒否させてもらいましょう。」
テール王子は毒にしかならない。
穏便且つ速やかに退国願いましょう。
「お前、ふざけた事を言うな!シャルルは俺のものだ!既に思いあっている!」
「「は?」」
そんな話は聞いていません!
「ど、どういうことだ!?」
「シャルル君、フエゴ君が言っていることは嘘ですよね!?」
その後
フエゴ君の話を聞いて、シャルル君の反応を見る限り、2人の認識の齟齬がハッキリしたものの、安心はできません。
この2人がシャルル君に寄せる想いは私と同じ物だと認識し、最後には私が勝ってみせると思いを強くしました。
3人の睨み合いで幕は降ろされ、観客の気持ちは置いてきぼりになった。
モヤモヤしっぱなしの観客の前に、幕に書かれた「続く」の文字が光り輝いた。
演劇終了後、来年に続く予定です。とアナウンスが流れ、
「待てるか!」
という抗議の声が挙がったのは言うまでもない。




