101学園祭当日9演劇男装騎士は月夜に夢を見る7
101学園祭当日9演劇男装騎士は月夜に夢を見る7
フエゴ視点
シャルルが、大事な話がある、なんて真剣な顔で言ってきた。
他の学生には聞かれたくないから、2人きりになれる場所で、なんて言うものだから、変にドキドキしながら、シャルルの部屋に行った。
いったい何を切り出されるかと思ったら、騎士団学校を退学することになった、と打ち明けられた。
「は?退学!?」
あまりにも突然のことで、頭が真っ白になった。
卒業するまで、一緒に居られると思っていたのに。
そりゃあ卒業までそれほど時間はないが、当たり前にある日常だと思っていたのに突然の終了宣言に頭が真っ白になるのは仕方ないだろ。
「第二王女殿下直々に護衛騎士への着任依頼を受けた。大出世だろ?」
そう笑いながら話すシャルルはなんだか痛々しく感じる。
大出世なのは間違いない。
騎士団に入団しても、王族の護衛騎士になれるなんていうのは一握りだ。
学校を飛び級で退学して、王国騎士団に入団して、王族の護衛騎士になるなんて、皆が羨むエリートコースだ。
なのになんでそんな辛そうな顔で笑うんだ?
「そりゃそうだが、卒業もしていないのに…………」
あと少しで卒業するんだ。
なぜ今、と、どうしても疑問に感じる。
「さあな、私も詳しい事情は聞かされていない。騎士団の中に王女の護衛に適した人材がいなかったのか、王女のワガママで同年代を所望されたのか。
断ることもできないからな。学校を卒業出来ないのは残念だが祝ってくれると嬉しい。」
まるで用意してきたかのような理由。実際こう言おう、と用意してきたのだろう。
「…………そうだな。おめでとう。」
だから俺もそれに合わせて祝いの言葉を送る。
だけど、お前の本意じゃないことはバレバレだぞ?
どんな事情があるのかは知らないが、俺には言えなかったのか?
親友だと思っていたのは俺だけだったのか?
相談して欲しかった。
「ありがとう」
そう絞り出すように言ったシャルルの顔を見て、胸が締め付けられそうだった。
ラファル視点
シャルル君から進路の話で報告がある、ときいておや?と思いました。
前回は相談だったのに、今回は「報告」。
嫌な予感がしつつ、聞いたら、第二王女の護衛騎士として、騎士団入団が決まったとのこと。
「………………断固抗議します。」
卒業後の進路については学生の自主性に任せるとして、まだ学生の内に引き抜くなんて、ルール違反にも程があります。
シャルル君が王族から請われて断れるはずもありません。
シャルル君は騎士団入団さえも迷っている様子だったのに、今回の話は間違いなく王権発動案件ですよね?
私、というか、王宮魔術師団がシャルル君に目を付けていることを察知されていたからこその引き抜きと考えるべきです。
いいでしょう、これは私への宣戦布告と受け取るべきでしょう。
どんどん心が黒く染まっていき、体から黒く染まった魔力が溢れ出てきます。
「私は納得していますので、王族の方への抗議はご遠慮いただけますか?」
私の心を読んだかのように、焦ったシャルル君に言われて私は黒い魔力を引っ込めました。
すっかり怯えさせてしまいました。
シャルル君を怯えさすつもりはなかったのですが、まだまだ私も自制心が足りませんね。
抗議はしない、と安心させるためにシャルル君には言いましたが、王族には絶対に抗議しようと心の中で決めていました。
テール視点
「初めまして、テールと申します。」
「護衛騎士のシャルルと申します。」
なるほど、事前に聞いていたとおり、先日のご令嬢は男装して王女の護衛に就いているらしい。
ドレスではなく、鎧を身につけて佇む姿は線の細い護衛騎士、と言った感じだ。
令嬢姿を見たことのある自分としては、滑稽にすら思えるが、ずっと男性として過ごしていたのであれば、周りにも男性としてみられてもおかしくないように振る舞えているようにも見える。
この国の風習で、嫡男にしか相続権がなく、女性を男子として育てることがある、と聞いたときには馬鹿らしいと思ったものだが、彼女の立場ではそれに抗うことは出来ないのだろう。
男子として育てられた令嬢。
なんと痛々しいことか。
一応、この場はこの国の王女と私の会談の場としてセッティングしたのだが、王女にも私がシャルルに興味があってこの場を設けたと伝わっているため、どんどん王女の顔色が悪くなり、口数が減っていく。
申し訳ないが、自分が添え物だと自覚しているのだろう。
シャルルは事情を何も聞いていないようだ。
王女の様子に顔色をコロコロ変えながら、場を持たそうと頑張っている。
王女とシャルル、2人の様子が大変に面白く、楽しい時間を過ごさせてもらった。




