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攻略対象者なのに悪役令嬢を溺愛中  作者: のあ
第二章 学園編
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98学園祭当日6演劇男装騎士は月夜に夢を見る4

98学園祭当日6演劇男装騎士は月夜に夢を見る4

私、シャルルは自室のバルコニーで月を見ながらため息をついた。


騎士学校に入り剣の腕は上がった。


同期のフエゴのお陰だ。私1人ではこの高みに到達できないまでのレベルに達したと自負している。


既に学内には彼と私について来れるものはいない。

このままいくと、私とフエゴは確実に王国騎士団に入団できるだろう。


だが、私に迷いが出てきている。


このまま王国騎士団に本当に入団してしまって良いのだろうか?


お父様は私にそれを求めている。


しかし、騎士団に入ればわたしが女だということがバレるリスクは跳ね上がる。

騎士団に入れば寮での生活だけでなく、野営もあり、今のように1人で生活できる訳ではない。


寮での生活もテントでも1人になれることは少なくなる。


ずっと気を配り続けなければいけない。


今後男女の体格差も顕著になっていくだろう。


今は学生の身で、大きな差は出ていない。

今はまだ私よりも体格が劣っている学生も多い。だが、あと数年も経てば身長だけでなく筋肉量で不自然だと感じる者も増えていくだろう。


女だとバレればどうなる?


ヴォルスナー家の取り潰しだけならまだマシだ。


王国騎士団は王国を守る盾。


謀ったとなれば、一族郎党絞首刑となってもおかしくない。


お父様はなんと大きな罪を犯しているのか。


私も同罪だ。


幼少の頃はわからずに言われるがまま、男として生きてきた。

だが、今となってはこの身がどれほどの罪を犯しているのか理解をしている。

この罪を暴くのは早いほど良いとは思うのだがその勇気が出ない。






「何してんだ?」





「お前が何してんだ?」



私はさぞ間抜けな顔をしていただろう。


バルコニーに立ち思い悩んでいたら、フエゴが近くの木にぶら下がっていたのだから。


「月が綺麗だったから近くで見ようと思って木に登っていたんだよ。」


「いや、馬鹿か?」

そう突っ込んでしまったのも仕方ないだろう。

木に登るという行動も馬鹿らしいが、木登り中とは思えない体勢だ。フエゴは私のいるバルコニーより少し高めの枝に足を掛けて逆さ吊りにぶら下がっているのだから。

お前は蝙蝠かと突っ込んでやりたい。


「木に登ってたらシャルルが見えて声をかけようと思ったら、お前が思い詰めていたような顔して、なんか考え込んでいたから声をかけようか迷っていた。」

そういいながら器用に私のいるバルコニーに飛び移っていた。

お前は猿か?


「はぁ…………。フエゴは悩みがなさそうでいいな。」


あまりにも馬鹿らしいフエゴの挙動に笑いが込み上げてきた。

真剣に悩んでいたはずなのに、私の友人は訳がわからない理由でここにいる。なんだかこの一連の流れがおかしくなってきた。


「何笑ってんだよ?」


そう言いながらムッとしたフエゴを見て、いや、これは笑うだろうと思えばより可笑しくなってしまい、私の笑いは止められなかった。









「ラファル先生、私って騎士以外になれますかね?」


引き続き思い悩んでいた私は仲の良いラファル先生に進路相談をしていた。

王国騎士団学校を卒業すれば、大半の生徒は王国騎士団に入団できる。


言い換えれば一部の生徒は入団出来ない。


入団出来なかった学生は違う就職先を探すしか無いのだ。


先生ならそういった就職先の伝手があるだろう、と思って相談してみたのだ。


「シャルル君なら〜王国騎士団には入れないってことはまずないと思うけど〜?」


まあ、剣術だけでなく他の授業でもトップクラスの私はこのまま順当に行けば王国騎士団への入団は決まったようなものだ。この質問自体、おかしく感じられるだろう。


「いえ、ここだけの話、王国騎士団に入っていいものか迷っておりまして。」


だから、入れなかったら、という不安の話ではなく私自身の意思だと訂正しておく。

これで私の進路相談にも乗ってもらえるだろう。


「魔術師団!魔術師団においでよ、シャルル!僕も団長だから口きいてあげれるから!前から騎士団に入るのは勿体無いと思っていたんだ!!」



すごく食い気味に勧められた。


ラファル先生は魔術師団長だから、当然と言えば当然か。

自分の所属先へのスカウトをこんなに熱を込めてするっていうことは魔術師団って人気ないのかな?

手を握り締められて結構痛いんですが、振り払っていいんですかね?


その後暫くラファル先生の勧誘は続いた。


魔術師団も寮生だから、私の就職先としては無しの方向なんですが、それは言い出せなかった。













「ご無沙汰しております。王女様におかれましてはご機嫌麗しく……」

「畏まらなくて良いのよ、シャルル。呼び出してしまって申し訳なかったわね。」


以前パーティーで警備の任を賜った我が国の第二王女様から突然の呼び出しを受け、何かあったのかと急ぎ駆けつけた。

王女様の私室に招き入れられ、他に護衛や侍女もいる中、膝まづいて挨拶をしたのが今の状況だ。

何か問題が起きたのだろうか?


「シャルルに内密の話があります。お前達は下がりなさい。」


そう言って、護衛や侍女を下がらせようとする王女殿下に護衛が食い下がる。

「ヴォルスナー家のご嫡男で身元はしっかりしているといえど、王女様と2人きりにすることはできません!」

当たり前の主張だ。年頃の男女を部屋で2人きりにする護衛がどこにいるのか。


はあ、とため息を吐きつつ王女殿下は護衛を1人残すことにされた。私としても王女殿下と2人きりにされるのは居心地が悪いので有難い。


「貴方はこれから話すことは全て忘れなさい。もしこの話が漏れたらわかっているわね。」

と護衛にむかって念押しされた。

この後の話が漏れたらこの護衛はどうなるんだろう。

よくわからないが恐ろしいことになるのだろうか。

なんて呑気に考えていたが、この後の王女殿下の一言で護衛の心配なんかしている余裕が無くなる。






「シャルル、貴方は本当は女性なのでしょう?」






………………………………!

バレた。





どうしよう?どうしたらいい?

何と答えればいいのだ?




「シャルル、私は糾弾するためにここに貴女を呼んだわけではないの。前回のパーティーの際に私の侍女が貴女の支度を手伝ったでしょう?貴女は極力バレないよう途中まではヴォルスナー家の侍女に身支度を任せていたのだろうけど、私の侍女の目は節穴じゃなくてよ。」




ああ、その時にはもうバレていたのか。

パーティーからだいぶ時間が経った。

その間に証拠固めをして、いよいよ断罪と至ったのか。



「…………王女殿下。誠に申し訳ございません。どうか私の首だけで………………」

見苦しいが、平服し、何とか私だけの罪にしてもらえないかとこい願う。


「や、やめなさい!罪を糾弾するつもりは無いと言ったでしょう?頭をあげなさい!」

なぜか焦ったような声をあげられる王女殿下の前で私はひたすらに震えていた。


王族を、国を謀った罪。

これほどの大罪をどうやって贖えば良いのか。

私だけで済む問題とは思えない。一族郎党に及ぶ大罪にどう累が及ぶのか。


「シャルル!頭をあげなさいと言っているのです!」



王女殿下を見上げると、困ったような顔をされていた。

私の方は酷い顔をしていただろう。

いったい、どういう罪と罰を言い渡されるのか、恐れ震えていた。



「貴女は、王国騎士団学校の退学を命じます。」


当たり前だ。女の身で王国騎士団学校に通うなど、あり得ないことだ。



「そして、私の護衛になることを命じます。」


……………… え?


「こちらは少し訳ありなんですが、その理由は話しません。ヴォルスナー家当主には話を通しておきます。」


「お待ちください!我が罪、我がヴォルスナー家の罪についての罰は……!?」

王国を謀ったのだ、さぞかし重い罪に問われるとばかり思っていた。




「?……………………シャルル、ご存知ないようね。嫡男が生まれず、女児を嫡男として申告することは我が国ではよくあることなんですのよ。」


「………………………………よくある?」


「ええ。ただ、大半はその後男児が産まれて、長男、実際は長女ですが、は死亡扱いになる、という事案が我が国では横行しておりますの。王家ではいちいち取り締まっておけないため、目溢ししておりますのよ。」




よくあること。

王女殿下から説明されても、理解が追いつかない。

私みたいに男児として育てられた者は少なくない、ということだろうか?





「パーティーの際に貴女が女性だとわかりましたが、ヴォルスナー家には他に子がいないため、本来ならこのまま男子として扱おう、ということになっていたのですが、こちらの事情が変わりまして。貴女には申し訳ないのですが、学校を退学して私の護衛についていただけないでしょうか?」



……………………王女殿下の事情はわからないが、罪に問われることはないようだ。

「勿論でございます。我が剣は王女殿下のために。」


そうして私は王女の護衛に加わることになった。

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