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攻略対象者なのに悪役令嬢を溺愛中  作者: のあ
第二章 学園編
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97学園祭当日5 演劇男装騎士は月夜に夢を見る3

97学園祭当日5 演劇男装騎士は月夜に夢を見る3

「んあぁ!!」

シャルルの声と共に彼女の剣がフエゴの剣を弾き飛ばす。宙に舞った剣は2人の間合いから遠くに転がった。


筋力では勝るフエゴの剣を、あえて懐に飛び込むことにより持ち手の近くを狙い、捻り上げるような形で剣を叩きつけたからこそフエゴは剣を持っていられなくなった。明らかなシャルルの技量の勝ちだった。


「ぐふっ」

しかし、剣を手放したフエゴが取った手はシャルルの鳩尾への拳だった。

シャルルは相手に剣を落とさせれば終わりと思ったのか、驚くほど無防備でフエゴ自身も予想しないほど鳩尾への一撃は綺麗に決まり、シャルルは崩れ落ちた。


「…………すまんな。」


あくまでも学校内での戦闘訓練なので木剣でのやり取りで、殺意はなかった。

最近ではシャルルに押されることが多くなった焦りもあったのかもしれない。

学校内の稽古試合ではなく、本来の戦いなら剣だけでなく、ありとあらゆる事態を想定しなければならない。だから剣を手元から弾かれた後の自分の行いも間違いでは無い。

そんな自分自身への言い訳を考えていても痛みに悶えるシャルルへ謝りの言葉をかけた。


「…………ぶっ殺す。」


対して、未だ悶え苦しみ疼くまるシャルルからは怨念のこもった一言が聞こえた。


そんな憎まれ口を叩けるということは意識があるという証明だ。親友は大丈夫そうだとホッとする。

しばらくすれば痛みもひいて、引き続き稽古に戻れるだろう。

フエゴにとってはこの親友との稽古が何よりの楽しみなのだ。

お互いを高め合う関係。


既にフエゴとシャルルは他の生徒に比べて剣の高みに到達しており、教師でさえもその間に入れない域にまで達している。


俺とシャルルの間に入れるものはいない。その考えがフエゴを高揚させる。

それが、単なる「剣」の高みについてだと本人は思っていても、実際は「シャルルとフエゴの世界」についてのことだということに本人は気付いていない。







「あ、先生、こんにちは。良く会いますね。」

偶然廊下であったかのようなシャルルとラファル。

勿論偶然ではない。過去何回も偶然を装って会っているのだからそろそろ気付いても良さそうなものだが、シャルルは男(として育てられていた)だからか、自身へのラファルの執着に気付いていない。そのことにラファルは気付いていながら、むしろ好都合と絡め取ろうとするが、無自覚ながらうまく避けていくシャルルに苛立ちが募っている。

もしやこれはわざとやっているのでは?

と疑う程に、シャルルと深く関わろうとするほどにするりするりと逃げ出される。

でも、ラファルにとってはそれが面白い。

魔術にしか興味のなかった男が人間に興味を持っている。それは彼を知る者にとっては驚異的な出来事になるはずだった。残念ながら、その事実を知る者はいなかったのだが。

ラファルは何度も偶然を装いながらシャルルと接触し、仲を深めていた。

剣馬鹿と揶揄されるヴォルスナー家の者なのに、シャルルは魔術にも興味を示し、ラファルの手解きの元、魔術も習得していった。

あの手この手で自分を意識させようとするラファルだったが、彼女は純粋に魔術を習得しようとするばかりで、アプローチは全て不発に終わった。

やはり同性だということがネックになっているのか、とラファルは毎回歯噛みしていたが実は異性であることを彼は知らない。シャルルが単にラファルから受ける気持ちを察することができなかっただけなのだから。単に彼女が「剣バカ」なだけだったのだ。







「見つからないか……」

隣国の王子テールは自身の執務机で報告書を放り投げた。

あの時会った美女のことが頭から離れない。

色々と忙しい彼にとって、多数出席した中の1つの夜会。その中の一つの出会いでしかなかったはずだ。

それなのに本国に戻ってからも彼女のことを思い出してしまう。

これでは執務に害が出てしまう、と思い隣国に置いている諜報機関に遅ればせながら彼女のことを探らせた。

結果はまるで芳しくない。

あのパーティーに出席していた貴族達が彼女のことを知らないことは早々に知れた。

そのため、辺境地や平民にまで諜報の手を伸ばした。

その過程で他の貴族からの諜報にも多数かち合い、穏便にお互い情報交換をしたが、どこの機関も何も掴めなかったとの報告だった。

いまやあの国ではあの娘の情報を血眼になって探している。

王女との親密さ、という政治的な意味合いのものは少ないだろう。何しろどういう存在かわからないのだから。友人であれば意味はある。親しい友人なら尚更だ。ただ、あの場で王女と同席しただけなら、金と時間、自分の持ち駒を活用してまで探す必要はなくなる。そもそも、第二王女という、政治的に嫁ぐしか利用価値のない王女に夜会で一回だけ親しく接していた女性の情報など通常なら探させる必要はない。

探している貴族達の目的は婚姻か妾として。あれほどの美しい令嬢、一眼見れば誰でも欲しくなるのは想像に難くない。


もちろん、彼女の素性を知るためには王女への接触が1番容易い道だと誰もがわかっている。

あれほどあのパーティーで親密に接してみせたのだ。

王女なら彼女のことを知っているだろう。

しかし、王女は一才彼女の素性を語らなかった。

誰に対しても頑なに。彼女の話が出たら、

「私から彼女の素性は話すことはありません。この話はここでお終いです。」

と言われて仕舞えば王女相手にそれ以上追求出来る立場のものはいない。

あの国には。

そこまで考えて一息ため息を吐く。

俺の国の方が隣国より力があり、俺から直接聞けばかの王女は答えざるをえない。

だが、たかが1人の女性の素性を知るために、この忙しい身を隣国に向かわせるわけには行かない。当たり前のことだ。


「………………テール様、全く執務が進んでおりませんが。というか、隣国にいってからずっとです。いい加減にしてくれませんかね?」


容赦のない側近の言葉が飛んでくる。


「遅ればせながらの恋煩いとか勘弁してください。思春期が今頃来たか、と王様も王妃様も王太子様も温かく見守ってくださいましたが、こちらの側近サイドは限界です。執務が滞ってます。ふられるなりうまくいくなり、サッサと決着つけてください。皆様と調整させてもらって隣国に行く準備は既に整っております。」


……………………………………いや、待て。


「なんの話だ?」


「はいはい、そういうのいいです。ご自分で気付かないだろうから僕が申し上げます。テール様のここ最近の考え事は全てあの場の女性のことでしたよね。ご家族とのお食事の際にもしつこいくらいその話。1回目で皆様お気付きでしたのに、毎回その話。皆様の生暖かい目にも気付かれず。見ているこちらが恥ずかしいくらいでしたよ。今更誤魔化そうとしても完全に手遅れです。ご両親とお兄様にあんな暖かい目線で見られていながらご自身は気付いていないとか。私共もかつてないテール様を見ることができて最初は面白かったのですが限界です。」




その後テールはのたうちまわった。

100話!

応援いただいている皆様のおかげです。


記念にアナザーストーリーでもぶち込もうか迷いましたが本編継続でいつも通りにさせてもらいました。


いつもご愛読ありがとうございます。

超不定期で申し訳ありませんが、完結まで頑張ります。

完結までまだまだかかります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] フエゴくんだけ、演劇と関係なくシャルル様との世界に悦んでいるような気がして微笑ましく感じてしまいました。 演劇内でもシャルル様は鈍感さんで、ときどき現実のみんなとリンクしてるみたいで面白…
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