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251. 僕はまた蜘蛛の夢を見る

 ギルド前で、夜行で世界樹の街に戻るというジガさんを見送って、僕らは馬車溜まりへ入る。


「マイカルさまは、なぜ柔道場で寝てるんですか?」

「宿舎に部屋を貰ったのだが、やはり道場が良い、風は通るし、畳は寝心地がよいわっ」

「せめて布団を」

「いらぬっ! そのような軟弱な事でどうするっ!」


 まあ、神さまのやることだから、放っておくべきか。

 マイカルさまは途中で買った酒瓶を持って、中庭へ向かった。

 豪傑だなあ。


 はあ、美味しい物を沢山たべると幸せな感じになってしまうね。

 幸せ幸せと心の中で唱えながら、僕らはキャンピング馬車に乗り込んだ。

 よっこいせとソファーに座ると、あやめちゃんがミニキッチンのコンロに薬缶をかけた。

 あ、ロビーに行って、今日の連邦日報を持ってくれば良かった。

 失敗失敗。

 なんか、お腹がいっぱいで歩きたくないざます。


 みんな、目がとろんとして、満腹幸せモードっぽい。


「ああ、旨かったなあ」

「また行きましょう、我が君」

「そのうちね」


 さすがに、メガトン・ミート連チャンはきつい。

 体型が常連さんたちみたいになってしまいそうだ。

 だいたい月一ぐらいが適正間隔かなあ。


 コポコポと音を立てて、あやめちゃんが香り茶を入れて、みんなにくばった。


「ありがとう」

「いいえ」


 さあ、行水してから、新聞を取りにいくかな。

 よっこいせと立ち上がり、僕は馬車から出た。


「ゲンキ、行水?」

「うん」

「いってらっしゃい」


 ギルドの廊下に入って、行水場へいく。

 中に入って、しっかりと施錠する。

 ざばざばと温水を浴びる。

 ふう、さっぱりするね。

 全身を泡の出にくい、パンゲリア石鹸で洗う。

 ふう。


 脱衣所で、魔法袋からバスタオルを出して身体をふく。

 下着とパジャマも出して、着替える。

 古い服を洗い物袋に入れて、魔法袋にもどす。

 あとで、洗濯しないとね。

 共和国ではホテル住まいだったので、洗濯もホテルにお願いしてたけど、キャンピング馬車だと、自分でしないといけないのが、ちょっと面倒くさいね。


 行水場を出て、ロビーで、連邦日報を探す。

 あれ、どこだろう。

 あ、あった。


 新聞を持って、ぶらぶらと馬車に戻る。


 中に入ると、オッドちゃんとパットとあやめちゃんが居なかった。

 行水かな。


「エルザさんは行水しないの?」

「あたいは二日に一回ぐらいだな、あんまり行水する民族じゃねえんだよ」


 まあ、毎日お風呂に入るのは日本人ぐらいらしいしね。

 リターナーさんも、うなずいているので、この人も同じぐらいの間隔での行水っぽい。


「ダンジョンじゃあ、一週間行水しないときもありやすね」

「そりゃ臭そうだな」

「ええ、もうそりゃあ」


 まあ、キャンピング馬車なら、行水場はあるので、一応毎日水浴びはできそうだ。


 さてさて、新聞を開いて、シーナさんの記事を読むか。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『新しい宿舎、そしてその改造』


 中央要塞で、我々、銀翼動甲冑騎士団に割り当てられた宿舎は、酷い物だった。

 魔族の使い方が悪かったのか、元からなのか、要塞内にある、家畜小屋と言われても納得してしまいそうな、そんな古びて汚れた小屋だった。


「これは……、何かの嫌がらせなんでしょうか……」

「そうねえ。これは酷い所ね」

「まあ、軍隊の宿舎なんて、こんな物じゃないですかっ」


 歩兵上がりのアリア少尉は、あまり気にならないようだ。

 リリアン少尉も、別に平気な感じで、宿舎を平静な目で見ていた。


「こんなところ~いやです~。おばけがでそうです~」

「まずは掃除ね、あと、修理したり、足りない備品を洗い出したりしましょう」

「はっ! セレナ隊長!」


 号令一発、我ら銀翼動甲冑騎士団は、清掃に取りかかった。

 幸い我々には魔導機があるので、建物の外側の高い部分にも手が届く。

 ケーミン機が術機なので、水流の魔法で水をかけ、元エルザ機であった軽装機で屋根に登り、モップを掛けると、半日ぐらいで、外側は見違えるように綺麗になった。


 問題は中であった。

 中も酷い有様で、家具は壊され、何か得体のしれない汚物が部屋中にぶちまけられていた。

 そんな中でも、アリア少尉や、リリアン少尉は、良くある事だ、とでも言うように淡々とがらくたを外に出し、モップで清掃していく。

 汚物が貯まっている部分は、ケーミン中尉が冷凍魔法で凍らせ、リリアン少尉が砕き、アリア少尉が外に出した。

 さらに半日で、中も、まあ、我慢をすれば居れるぐらいの状態になった。

 だが、さすがに厨房を綺麗にすることもできず、今夜の夕食が危機的状態になったのである。


「中央の士官食堂に行きましょう」

「大丈夫なんですかっ?」

「大丈夫、士官以下の人は、銀翼動甲冑騎士団には居ないし」

「そりゃまあ、そうですね」


 我々六人は、堂々と士官食堂に行き、食事を要求した。

 主計科の少尉が、前例がとか、ここは共和国の士官食堂でとか、何か言っていたが、お腹が空いた我々の迫力に、次第に小声になり、食事を出してくれた。


 晩ご飯を食べ終わったら、急いで、寝室を寝れる状態にしなければならない。

 毛布と、マットレスと、枕を人数分、調達をして、その夜、遅くまでかかって、何とか全員の寝床を作った。

 やれやれ、明日も宿舎の整備で一日終わりそうだ。

 早く、訓練をしたいのに、と、セレナ隊長は嘆きながらベットに入った。


 次回は、中央要塞での訓練の開始と、魔導機の整備の話をしよう。


(連載記事:戦場からの手紙 第9回 シーナ・カミストル)



 うーむ、苦労してるなあ。

 酷い宿舎は、マクガイヤ少将の嫌がらせかな。

 人手を貸してもらうわけにはいかなかったのかな。

 まあ、他の所も中央要塞に移転したばっかりで空いてなかったのかもしれないね。


「シーナの記事か?」

「ええ、結構大変そうで」


 僕はエルザさんに新聞を渡した。

 彼女は食い入るように読み始めた。


 僕は、ソファーをガッコンと変形させてベットに変えた。

 リターナーさんも、まねをして、ソファーを変形させる。

 新聞を読んでいるエルザさんが、ベットのわきに腰を掛けている格好となった。


 オッドちゃんと、パットと、あやめちゃんが行水場から帰って来た。


「あら、またシーナの記事?」

「おう、読み終わったぜ」


 オッドちゃんが僕のベットの端にちょこんと乗って、新聞を読み始める。

 じゃまなんですが。

 あやめちゃんと、パットも横から新聞をのぞきこんだ。


「こういう悪さをするのは、マクガイヤのバカね」

「まあ、そうだろうな」

「家畜小屋だったのか?」

「交渉で追い出されたんだ、腹いせに魔族が汚していったんだろうぜ」

「そこに居たら、マクガイヤにねじ込んで、宿舎を変更させてあげたのにっ」

「まあ、オッドはそういう奴だよな」

「総司令官に睨まれてるのは、やっぱり困りやすね」

「まあ、セレナは利口だし、それよりもシーナが居て、大衆にいやがらせが筒抜けだからな、派手な事はできねえだろうよ」

「シーナさんには、そういう効能もあるんだね」


 エルザさんはあくびをして、下のベットの方へ歩き出した。


「じゃ、おやすみな」

「おやすみなさい」


「私もねようっと、おやすみ」

「おやすみなんだよ」

「おやすみなさい、我が君」

「おやすみー」

「おやすみなさいやし」


 さて、寝よう寝よう。


 僕はベットに上がって、毛布の中で丸くなった。

 ふう、今日はわりとのんびりできたな。

 なにより。


 ……。

 …………。


 僕は、また、蜘蛛の夢を見ている。

 一日経って、無くなった片手のバランスも調整できてきたみたいで、糸が狙った所を外さないようになってきた。

 猪をばらばらに切り刻んで、ベルナデットはニンマリと笑い。これを食べる。

 遠く、逃げて行った勇者を思うように、メイリンの方角の空を見上げる。


 食事が終わると、ベルナデットは森の中を飛ぶ。

 糸を繰り出し、それを伝い、跳び上がり、糸を飛ばして木々の間を飛び抜けていく。


 巨人を倒すアニメの動きのような、アメコミの蜘蛛ヒーローの動きのような。

 木々の間をぬって、中空を糸を頼りに飛び抜けていく。

 枝に乗り、反動を付けて中空へ飛ぶ、糸を支点に振り子のように勢いを付けて飛ぶ。

 ザザザと葉鳴りをさせて、鳥を脅かし、走る。


 どこまで木々の間を飛んで森を抜ける。

 草原に着地して、街道の先を見る。

 遙か遠くにメイリンの街が霞んで見える。


 ベルナデットは、草原を走り始める。


 …………。


 これが今日の昼の記憶なら、明日ぐらいには、メイリンに着くな。


(今は、蜘蛛さん、草原で寝ています)


 あ、やっぱりキルコさんが見せている夢なのか。


(はい、でもゲンキさんは蜘蛛さんの夢を思い出しても、思い出して欲しい魔導王の夢は思い出してくれません)


 なんだか、夢の層が違う感じだね。

 魔導王の夢の方が、重いので思い出し難いのかもね。


(蜘蛛さんの夢に引きずられて、思い出してくれれば、と思ったんですが)


 普通に、あやめちゃんに語ればいいんじゃないのかな?


(そういうの恥ずかしいですし)


 どこまでシャイなのか、君は。

 まあ、効果があるかどうか解らないけど、続けてください。


(わかりました)

 


【次回予告】

朝、げんきは恒例のランニングで汗を流す!

そろそろダンジョンアタックの計画を組まねばなるまい!

朝ご飯の席で、げんきとオッドの熱い討論が始まる。


なろう連載:オッドちゃん(略

次回 第252話

ダンジョンアタックの計画を始める

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