244. カスピル商会、メイリン支店
ギルマスとマイカルさまに挨拶をして食堂を出る。
僕が午後、受講しないと知ったマイカルさまがしょんぼりしてしまったが、まあ、明日は参加しますよ。
さてさて、久々のオフな感じだ。
ギルドの外に出ると、空は真っ青に晴れていて、良い天気だ。
塔路を北方向に歩いて、共和国口主道を目指す。
連合口主道から下りても良いんだけど、カスピル商会の支店は、上の方にあるかもしれないしね。
でも、たぶん、共和国門の近くにあると予想するけどね。
カスピル商会の物流だと、共和国から流れてくる物を押さえないといけないし、他の国からの品を出すにも、門の近くが合理的だろう。
「ひさびさの三人なんだよ」
「そうだね、戦線ではあまり会えなかったし」
「あれはさびしかったです。たまに会えても、私と同じ顔の娘衆がよりあつまってまして」
「戦線では、あまりパットちゃんとしゃべれなかったのに、離れていた気がしないのは、セレナさんとか、そっくりの人としゃべっていたからなんだよ」
「任務とはいえ、パットにはきつかったね、ごめんね」
「い、いえいえ、そんな、我が君に謝ってもらうと、なんだか困ります。私も銀翼の娘たちを見て、妹が沢山できた感じで、少し嬉しかったですし」
パットはそう言うと、ニッコリと笑った。
やっぱ、パットはサッパリしていて良いね。
塔路をぐるっと回って、ホテルカルビンの横から共和国口主道に入る。
わりとこの道は孤児院に行く時に使うね。
北の方に行くには、共和国口主道を行き、途中で階段でショートカットするのが最短なんだよね。
共和国口主道の上の方は、宝石店とか、高い武具のお店とか、ドレスショップとかが並んでいる。
メイリンのドレスショップの水準はどうなのかなあ。
店の前に飾ってある、ドレスはとても綺麗だけど。
うわ、もの凄い値段。
まあ、カーダインの礼服があるから、よそ行きは、もう良いよね。
「あやめちゃん、新しい礼服欲しい?」
「うーん、赤いのがあるし、カーダインのだったら欲しいけどなあ」
「もう式典とかは無さそうだし、必要無いのではないか?」
「もう、パットちゃんは銀の格好いいの持ってるくせにっ」
「アラクネドレスは綺麗だったのに勿体ないね。防御力高そうだったのに」
「もう、あったとしても、アラクネドレスは着ないんだよ、蜘蛛さんにバラバラにされてしまうし」
「赤いのも綺麗だったから、いいよね」
「ダンジョンで儲けて、自腹で買うんだよ。うん」
「レア種を倒して、儲けようよ」
「うん、そうだね、げんきくん」
「良いですね」
ぽくぽくと坂を下りていく。
良い風が吹いて、ちょっと暑い日差しを和らげてくれる。
遠くにカイルベル山塊が見える。
日中だから、すこしもやって霞んでいるね。
なにか、小さく、鳥のような物が飛んでる、大きいから、ワイバーンかもね。
上廻り横路の交差点を直進する。
うーん、商会の事務所っぽい所は無いなあ。
やっぱり門の前かな。
八百屋さんで、エルフのお姉さんと挨拶をして、坂を下りていく。
だんだんと、街がごみごみして、庶民的になっていくね。
エルフさんの雑貨店、ドワーフの鍛冶屋さん、ハーフリングさんの小間物屋さん。
いろいろと店先を冷やかしていくと、面白い。
共和国口が近づいてくると、エルフ料理店が増えるね。
菜っ葉料理は勘弁なので、もう行かないけど。
ドワーフ料理とか、ハーフリング料理の美味しい所はないのかなあ。
屋台で菜っ葉料理を売ってるのですが、まあ、ノウサンキューでございますな。
さて、門の近くまで来たけど、商会っぽい所はどこだろう。
「商会はここら辺にありそうなんだけど、みあたらないんだよ」
「誰かに聞いてみようか」
ドワーフのおじさんがやっている煙草屋さんがあったので、声をかけてみた。
「すいませーん」
「いらっしゃい、パイプかね、紙巻きかね」
「いえ、煙草は吸わないので、ちょっとお聞きしたいことが」
「なんだい?」
「共和国系の商会は、どこにあるか解りますか?」
「うーん、煙草を仕入れてる商会は、一筋奥に入った所にあるけどよ。探してるのは、なんて商会だい?」
「カスピル商会なんですが」
「ああ、そこの奥を曲がってすぐにあるぜ」
「ありがとうございます」
「あんた、勇者だね、大陸を救ってくれたお礼に煙草、いらねえか?」
「い、いえ、みんな吸わないので」
「そうかいそうかい、煙草が欲しかったら来なよ、いくらでも分けてやっからさ」
ドワーフのおじさんは、そう言うと、ぶわりと煙を吹き出して、どわはははと笑った。
ドワーフさんは豪快だなあ。
門の前の商店街は、小売店ばかりで、商会とか問屋系の事務所は、ちょっと奥の筋にあるらしい。
教えられた通りに、歩いて行くと、小さな二階建ての建物の前に、カスピル商会メイリン支店と看板があった。
「こんにちわー」
僕がノックをすると、ドアが開いて、ドワーフの若い娘が顔を出した。
「どちらさん?」
「オッド師の召還勇者で、飛高げんきと申します。キルークでカスピルさんにお世話になって」
「あらあら、これはこれは、ええ、ええ、商会長からお話しは聞いてますよ、どうぞどうぞ」
そういって、ドワーフの娘は、僕らを招き入れた。
「支店長! 勇者さんたちが来ましたよ」
「え、なんだって」
奥から、メガネのおっとりとした感じの人族のおじさんが、慌てた感じでやってきた。
「やあ、これはこれは、キルークでは弟がお世話になりまして。私が、メイリン支店の支店長、ケスナル・トトロッテンです」
「飛高げんきです、よろしくお願いします」
「カスピルさんのお兄さんなんですか?」
「そうですよ、恥ずかしながら弟の方が商才がありましてね、私は支店長です」
たしかに、カスピルさんをマイルドにした感じで、よく似ている。
「あ、そういえば、弟から、勇者さんたちに、荷物が届いていましたよ」
「あれ、なんでしょうか、何も頼んで無いのですが」
「ベロニカ、倉庫から出してきて」
「わかりました、支店長」
ドワーフ娘さんは、ベロニカさんって言うのか。
そして、奥から持って来てくれた物は、木箱いっぱいの帝国ソースとマヨネーズだった。
「そろそろ切れるころじゃないかな、と、手紙に書いてありましたよ」
「うわあ、ちょうど頼みに来た所なんですよっ、カスピルさん、さすがだなあ」
「それは良かった」
「お幾らになりますか?」
「無料で渡すようにと書いてありましたね。基金用の宝物の販売益のオマケだそうですよ」
「いや、それは悪いですよ」
「いえいえ、これをきっかけに、支店の方もご贔屓におねがいいたします」
「わあ、ありがとうです。今、帝国ソースが、メイリンで流行りそうなんだよ、冒険者ギルドの食堂と、トロワの車輪亭のコックさんが買ってくれると思うんだよ」
「キルーク市では、すでに流行始めたようです、我が支店でも、仕入れを増やそうと発注中ですよ」
「それは助かりますね。あと醤油と味噌、お米なんかも頼めますか?」
「お米は、短米種ですね、ショーユとミソは、聖堂都市経由で動いてますよ。お米は少しまってください、次の船便で着く予定です」
うわあ、助かるなあ。
お言葉に甘えて、色々発注してしまった。
やあ、調味料の入手手段が増えると正直助かる。
聖堂都市まで行くのは、結構大変だしね。
「これからも、カスピル商会を宜しくおねがいしますね」
「こちらこそ、よろしくおねがいします。本当にたすかります」
ドアがノックされて、ベロニカさんが出て行くと、若いお兄さんが入り口にいた。
「ええと、ここで帝国ソースを売ってくれるって聞いたんだけど、あ、勇者さん」
「ああ、噂をすれば、トロワの車輪亭のコックさん」
「さっそく買いに来てしまいましたよ」
「在庫があまりないのですが、いかほどご入り用ですか?」
「とりあえず、五本欲しい、で、このソースを使った料理は人気が出ると思うんだ、定期的に必要になると思うから、取り寄せて欲しい」
「わかりました、まいどありがとうございます」
ベロニカさんが、紙の袋に帝国ソースの瓶を五本いれて、コックさんに渡した。
コックさんはお金を払って、一礼して出て行った。
結構高い値段だったけど、他に変えようがない物だからねえ。
「帝国ソースが動きそうですね」
「美味しい物は、すぐ動くんだよ」
「ありがたい事です。また何かありましたら、なんでもお言いつけください。カスピル商会は、勇者ゲンキをバックアップする事に決めておりますから」
「ありがとうございます、心強いですよ」
僕は、ソースとマヨネーズの入った木箱を魔法袋に押し込んだ。
これだけあれば、しばらく持つだろう。
ケスナルさんと、ベロニカさんに、お辞儀をして、僕らはカスピル商会メイリン支店を後にした。
やあ、カスピルさんは、気が利くなあ。
さて、懸念のソース不足は解消されたね。
どこに行こうかな。
【次回予告】
ソース不足は解消された。
げんきたちは、馬に乗って、一路ケストナ治療院へ
トマスとセシリアのお見舞いに向かうのであった。
なろう連載:オッドちゃん(略
次回 第245話
トマスとセシリアちゃんの所へ再訪問




