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243. ランチはヤキソバ、そして半日の休日

 講義を終えて、みんなで正座して(出来ない人は立て膝で)マイカル様のお社に礼。


「うむ、ご苦労であるっ! みなの武道への真剣な祈りが伝わって来て、このマイカル、大感激であるぞっ!!」


 いやまあ、武道自体に礼をしたので、マイカル様宛の祈りじゃあ無いのだが、まあいいか。

 社が出来て、礼をすると引き締まるしね。


「昼からは、このマイカル直々に、拳闘レスリングの指導をしてやろう。我こそはと思う者は来ると良いぞっ!」

「神さま直々かあ」

「メイリンに武道ブームが起きそうだね」

「わたしなんかは貧民なのですが、参加してもよろしいですか?」

「うむ、かまわぬ、老いも若きも、金持ちも貧乏人も、ただ武道を成したいという気持ちがあれば、それで、我が門人であるっ!! 指導料も取らぬっ! 無料大奉仕セールじゃっ!!」


 おお、と冒険者のみんなから歓声が上がる。

 普通、武道を習おうとすると有料だからね。

 たいへんお得であるよ。


「それでは、お昼からマイカルさま、宜しくおねがいします。では、柔道講座は解散です。みなさんまた明日」

「「「ありがとうございました」」」


「にゃー、正座も覚えたいにゃ、でも足が痛いにゃ」

「いてえよねー。あんちゃん、なんかコツ無いの?」

「慣れるしかないなあ」

「あし、足がしびれてっ」


 セストルさんが無理をして正座をしていたので、痺れて立てないようだ。

 ニーナさんが笑いながら、足をつついている。

 やめてさしあげて。


 お昼はどうするかなあ。

 とりあえず、馬車に行って、あやめちゃんとオッドちゃんと相談しようか。

 午後は、ちょっとお休みをして、街をぶらぶらして、買い物をしたいな。

 カスピル商会の支店も見つけないと、ソースが切れてしまうし。

 マヨネーズも厳しいかな。

 お醤油とかお米とか、欲しい物はあるけど、聖堂都市まで行くのは大変だし、商会で手配できたらいいなあ。

 パットと一緒に馬車に戻る間に、僕はそんな事を考えていた。


 馬車に入ると、オッドちゃんとあやめちゃんがいて、お茶を飲んでいた。


「あ、げんきくん、中華麺買って来たよ」

「おお、切れてたからね。さっそく焼きそばにしようか」

「そう思って、お肉と、お野菜も買ってきたんだよ」

「あやめちゃん、優秀!」

「ヤキソバですか、良いですね」

「ソースで味をつけるの?」

「そうだね、ソース焼きそばにしよう」


 パットとオッドちゃんがニンマリ笑った。

 君たち、ソース味、好きだなあ。


 エルザさんとリターナーさんも、もどって来たので、馬車のミニキッチンでは量を作れないな。

 ギルドの厨房で作るかな。


「今日のお昼は、ギルド食堂で焼きそばを作ります」

「お、いいね、オコノミヤキな味な奴だな」

「美味しそうでやすね。ゲンキ殿は料理が上手いから」


 みんなでぞろぞろと、ギルドの食堂に行くと、結構混んでいる。

 これは作るだけ作って、中庭で食べるかなあ、と、思っていたら、ギルマスが冒険者を詰めさせて、僕らが座る所を作ってくれた。


「ありがとうございます、ギルマス」

「問題無いざます。お礼は、私とマイカルさまにお昼をごちそうで構わないざましてよ」


 それが狙いかー。

 良いけどね、中華麺はあやめちゃんが沢山買ってきたし。


「ほほう、勇者ゲンキは料理もこなすのであるかっ、天晴れであるっ!」


 マイカルさまは、昼間からビールのジョッキを持ってガブガブ呑んでいる。

 ほんとうに、おっさん神だなあ。


「クルツたちも食べるかい?」

「あ、ごめーん、あんちゃん、もうランチ喰ってる」

「あー、しまったなあっ」

「ちょっとぐらいだったら食べられるだろう。後で取りにきなよ」

「味だけみるよー」

「僕らも良いんですか」

「いいよー」


 テーブルの端の方で、ニーナさんが立ち上がって手を振った。


「あたしもあたしもにゃーっ」

「はいはい、セストルさんたちも良かったら味見てくださいよ」

「わあ、ありがとう、うれしいよ」


 よしよし、沢山作って、希望者には食べてもらおうか。

 厨房に入ると、あやめちゃんが、マイ料理ナイフで、野菜を切っておられた。

 すばやい。

 僕も肉の塊から、薄い切片を沢山切りはじめる。


「あ、あっしがやりやしょう」


 リターナーさんが包丁を取って、切片を切る。

 おお、素早い。


 僕は中華鍋っぽい、深いフライパンに油を引いて、温める。

 魔導コンロは、意外に火力が高くて、地球の業務用ガス並に温度があがるんだ。

 あやめちゃんは、中華麺をゆで始めている。

 三分ぐらいでゆであがるから、野菜をそろそろ炒めよう。

 キャベツっぽい野菜を入れ、タマネギっぽいもの、ピーマンっぽいものを入れて高温で炒める。

 ジャージャー。

 リターナーさんが切った、薄切りのお肉を入れて、さらに炒める。


「ほいほいっ」


 あやめちゃんが中華麺をザルに入れて水を切り、フライパンに投入。


 ジャジャジャーッ!


 そこへ、秘伝の帝国ソースを回しかける。


 ジャアアアアアアッ!!


 黒いソースが、フライパンに当たって蒸発して、湯気と共に、ソースの香ばしい匂いがあたりに広がる。


「おお、なにこの匂い」

「すっげえ、腹が減る匂いだ」

「勇者さんの料理だなあ、いいなあっ」


 ふふうん、ソースの香りは異世界人にも効く!

 僕は、お皿に焼きそばを盛りながら、そんな事を考えていた。


 とりあえず、マダームと、マイカルさまと、オッドちゃんと、パットと、エルザさんに焼きそばを出す。

 みんな、注目しておる。


「うん、美味しいですね、私は、ヤキソバ大好きですよ、我が君」

「美味しいわね、ソースは素敵ね」

「ああもー、ビールが進むんじまうぜっ」

「おお、これは美味であるなっ、うむ、でかした!!」

「おいしいざますね。後で、レシピをコックに教えてあげて欲しいざますよ」

「良いですよ」


 まあ、教えるまでもなく、さっきからコックさんはメモ帳片手にこちらの手順を凝視しておられますがな。


 僕らの分も、ジャッジャと作る。

 さらに、余分を作って、黒い幽霊ブラックゴースト団と白翼遊撃団の分をよそって、持って行く。


「おおお、あのフライに掛けていたのと同じ匂いにゃっ!! おおおおっ! 同じ味にゃ、おいしいおいしいにゃっ!!」

「ああ、これは美味しいね、ありがとう勇者ゲンキ」


「うおお、美味いっ!! ソース味は別腹だっ!!」

「なんだこれ、初めて食べた味だよ、へええっ、おいしいなあっ」

「あんたたち、ゆっくり食べなさいよっ! 美味しいです、勇者さまっ」


 いつの間にか、カタリナちゃんもいて、クルツたちと一緒に焼きそばを頬張っていた。

 好評でなによりだね。


 あやめちゃんが中華麺の残りをコックさんに渡していた。


「焼きそばの材料をコックさんに渡したから、食べたい人は注文するんだよ」


 あやめちゃんが、そうアナウンスすると、ガタタタタタと、冒険者が席を立って、注文カウンターに殺到した。


「あの麺はどこで売ってるんざます?」

「連合口主道アベニューの上廻りの交差点あたりにある食料品屋さんで売ってたんだよ」

「ゴランツ食料品店ざますね。獣人連合国の麺ざましたか」

「そうみたい、異世界にある麺とそっくりなんだよ」


 僕ら、料理組の分の焼きそばを持って席に着く。

 もぎゅもぎゅ。

 うん、良い感じ。

 ソース焼きそばは正義だ。

 というか、コックさんに渡したので、ソースの在庫が無くなってしまった。


「ああ、ソース味のヤキソバも良い物でやすね」

「カスピル商会の支店をさがさねば、ソースが無くなってしまった」

「ザマスは知らないかしら?」

「共和国の商会ざますか? 共和国口ざましょうね」

「やっぱりそうですよね。午後からあっちを探してみようかな」

「あれ、神さんの講座は受けないんでやすか?」

「うん、ちょっと、ここの所忙しかったから、午後はお休みで、のんびり街を歩こうかなって」

「ご一緒するんだよ」

「そうでやしたか」

「ああ、お前は頑張ったから、たまには良いよな、あと、ソースは沢山買ってこい」

「はいはい」

「わ、我が君、私もご一緒させてよろしいですか」


 あやめちゃんと、デートかな、とか思ってたけど、まあ、良いかな。


「うん、良いよ、一緒に散歩しよう。オッドちゃんも来る?」

「めんどうくさいわ。馬車で本でも読んでいるわね」


 君は、なんというインドア派なのだ。


「あたいと、リターナーは、神さんの武道講座だな」

「神さまに教えて貰えるなんざ、一生に一度あるかないかでやすからね」

「昨日、ちょっと教わったけど、ずいぶん実戦っぽい武道みたいだよ」


 コマンドサンボだからねえ。


「左様である! 武道は実戦! 徒手空拳で戦場にて、甲冑騎士を打倒するのが、我がマイカル流、拳闘レスリングの醍醐味であるっ!!」

「柔よく剛を制するジュードーと、実戦派で、豪快に押していく拳闘レスリング。二つの理念が違う武道を覚えると、大陸に敵は無くなるざますわ」

「武器が無くなる時もあるしなあ、徒手武道は覚えておいて損はねえよ」

「エルザさんは、武道の方は?」

「この稼業に入った時に、先輩からハーフリング打撃術を教わったぐらいかな」


 それだけの実績で、あの体術なのか、才能がチートだなあ。


「あっしも、キルーク拳闘を、ちょっとかじったぐらいでやすね」

「リターナーさんは大剣だものね」

「この機会に、本格的な武道をみっちりやっておきたいでやすね」

「わたしも、剣をちゃんと覚えたいんだよ」

「剣とか魔法の発動に問題無いの?」

「別に無いわよ、アヤメは剣の才能もあるから、誰かに教えてもらいなさいよ」

「あっしは、大剣でやんすから、片手剣と盾は教えられやせんね」

「私もそうなんだよな。片手剣の上手い人はいないか?」


 気がつくとセストルさんが、手を上げていた。


「よかったら、僕が教えましょうか?」

「良いんですか? セストルさん」

「ええ、大陸を救ってくれた勇者さんに、何かを教えられるのは光栄ですし」

「団長が女勇者を狙ってるにゃ、ミランダ副団長が激怒するにゃ」

「そ、そんなんじゃないよ。告げ口をしたら、只ではおかないからね、ニーナ」

「どうしようかな、にゃはははっ」


 ああ、でも、セストルさんが教えてくれるなら、良い先生になってくれそうだな。


「アヤメさんは、将来、魔法戦士の方向を目指してるのかな?」

「ううん、そうではないんだよ。げんきくんに変わってキルコゲールを運転するときがあるから、その時の為なんだよ」

「ああ、新聞で、ミルコゲールと斬り合ったって書いてあったね。僕らがダンジョンに行く間の短い間だけど、それで良かったら」

「よろしくお願いします。セストル師匠」

「し、師匠はやめてね」


 夜の道場であやめちゃんはセストルさんに片手剣を教えてもらう事となった。

 まあ、あやめちゃんの運動チートならば、川島君の剣の腕を追い抜くのも、すぐでしょう。


【次回予告】

急務は、カスピル商会メイリン支店を探し、中濃ソースを注文することだ!

げんきたちは一路、共和口主道アベニューを下りていく。

果たして、支店は見つかるのだろうかっ!!


なろう連載:オッドちゃん(略

次回 第244話

カスピル商会、メイリン支店

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