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238. 夜の酒場で大騒ぎ

 噂に聞く日本のサルーンのような、ふっかりしたソファーに座ってくつろぐ。

 静かなピアノ曲が流れていた。

 というか、ピアノあるのね、この世界。


「メイリンダンジョンはどうでしたか、リターナーさん」

「上の方が博物館になっていて面食らいやしたが、良い試みでやすね。五階からダンジョンでやしたけど、キルークとは魔物の層が違う感じで面白そうでやす」

「キルークは虫と植物魔物が多いからなあ」

「冒険者が絡んできやしたけど、まあ、ああいうのはダンジョンに付きものでやすね」

「え、どうしたの」

「穏便にぶっ飛ばしたぜ。けけけ」


 ダヤン達かな、まったく相手見て絡めよなあ。


「そりゃいいや、あいつら屑冒険者だから、いい気味だな」


 クルツがお茶を飲みながら、笑って言った。


「キルークにも居やしたね、迷宮内は無法地帯でやすからね」


 ウエイトレスさんが、大皿に入った料理を持って来てくれた。

 おおお、良い匂い。

 三種類ほどのクワンドルと、魚介類のフライだ。

 さっそく、みんなでぱくつく。


「おおお、美味しいなあ。これが塔路の酒場の味かあ」

「クルツも大きくなったら、こういう所で飲めるぐらい稼ぎなさいよ」

「おおよ、絶対稼ぐぜ」


 軟体な、イカのようなタコのようなフライを、柑橘系の果汁を掛けて食べる。

 うまいっ!!

 あ、そうだっ。

 僕は、魔法袋から、帝国ソースを出した。

 取り皿に取った、フライの上に掛ける。


「あ、わたしにも掛けてほしいんだよ」

「はいはい」

「え? お前、それ、美味いの?」

「元々、異世界ではフライ類に掛けるのがメインの使い方なんだ」

「へえ、ちょっと、掛けてみな」


 エルザさんが、自分の皿のフライを出したので、掛けてあげる。

 ぱくりと一口。


「あ、これはうめえなっ! ちえ、ソースは酒が進んじまうからよくねえんだ」

「あっしにも、一つ」


 みんながお皿を出してくるので、それぞれに掛けてあげる。


「ああ、美味しいわね!」

「ヤキソバ味ですねっ、我が君! うん、サクサクのフライに良く合う!」

「俺にも俺にも」

「あー、これ美味しいですねっ」

「不思議な味です、スパイスと、果汁と、あと何かしら。甘辛くて美味しいですね」

「いいでやすね。美味しいです」


 みんなが掛けたがるので、ソースを一瓶、テーブルに出した。

 なんだか、ウエイトレスさんが、それなに? という目で見ていたので、フライに掛けて食べさせてあげた。

 目を丸くしたウエイトレスさんが、厨房に引っ込んで、コックさんとおぼしき人を引っ張ってきた。


「なんか、不思議な食べ方をしてらっしゃると、お聞きしまして、味見しても良いですか?」

「良いですよ、帝国の方で売られている、ソースです」


 貝のフライに、ソースを掛けてコックさんに食べさせてあげる。


「! こ、こいつはっ、これはどこで手に入りますか?」

「キルークで手に入れましたけど、メイリンにはあるかなあ?」

「ないぜ、初めてこんなの見た」

「無いと思います」

「キルークですか、遠いなあ」

「あ、キルークの商会の支店があると聞きましたので、そこなら手配してくれるかも」

「おお、どこの商会ですか?」

「カスピル商会です、場所はどこか解らないですが」

「明日探してみますよ。こいつは良い。酒場の売りになりそうです」

「流行る味だよな、これは」


 帝国ソースが、なんだか大陸を席巻せっけんする勢いだね。

 コックさんが、ぺこりと一礼して、厨房に戻った。

 ウエイトレスさんが、お騒がせしたお詫びと、お肉のスライスの一皿を持って来てくれた。

 おお、熱々の豚肉、美味しそう。


 三皿のクワンドルが、もう無くなったので、別の味の物をまた頼む。

 魚介類のフライ、大皿も、三皿追加である。

 みんな、ソースをだぶだぶ掛けて食べている。


 ご飯をパクパク食べているうちに、だんだんと酒場は混んできた。


「おおおっ、オッド師にゃっ!」


 入り口から飛び込んできた勢いのニーナさんが僕らを見つけた。

 相変わらず元気な猫耳斥候スカウトだな。


「あ、ニーナさん、あ、セストルさん、みなさん」


 ニーナさんの後から、ぞろぞろと白翼遊撃団の人たちが酒場に入ってきた。


「あ、勇者くん、オッド師、お久しぶりですっ」

「ほんとうに久しぶりね、こっちで一緒に飲まない?」

「よろしいのですか?」

「いいのよ、あんたと私の仲じゃない、さ、ニーナこっちに来なさい」

「は、はいにゃー」


 ニーナさんが、しぶしぶ、オッドちゃんとあやめちゃんの間にちんまり座った。


「白翼遊撃団のセストルさんでやすか、お噂はかねがね聞いておりやす」

「む、あなたは……。なかなか凄い冒険者さんですね。勇者さんたちは世界樹の街から、キルーク経由で戦線に向かったと聞きますから、もしや、キルークランキング一位のリターナーさんですか?」

「へい、勇者さんの魔王討伐隊にごやっかいになってやす、しばらくメイリンにお邪魔いたしやす」

「これは素晴らしい、是非お話しを聞かせてください」

「いえ、こちらこそ、メイリン迷宮の事を教えてくださいやし」


 メイリンとキルークの一流冒険者が、親睦を深めておる。


「あ、勇者ちゃん、こんばんわー、共和国で大活躍だってねー、お姉さん新聞で読んでワクワクしちゃったわよ。あ、クルツも居る」

「こんばんわ、シルビアさん」


 あいかわらず、お色気盗賊シーフのシルビアさんは、真っ赤な唇で、扇情的な格好をなさっておる。

 平気な顔をして、シルビアさんは、僕とクルツの間に座ってきた。


「今日は楽しいお酒になりそうね。お土産話を聞かせてよ」

「は、はい」


 わりかし肉食系女子なんで、シルビアさんは苦手だな。

 クルツが僕の顔をみて、けけけと笑っておる。

 パットが僕をまたぎ越して、シルビアさんの間に座った。


「なによう、あんたと話す事なんかないわよ」

「我が君を、貴様のような奴の隣に座らせるわけにはいかぬ」


 い、いや、別に、シルビアさんの隣とかでも良いんだけどなあ。


「まあ、飲むのだ」

「あら、諸王国のワインね、懐かしいわ。しばらくあっちに居たからねえ」

「うむ、偶然だが、タリス公国産らしい」

「良く飲んだわ」


「あれ、黒い幽霊ブラックゴーストの魔法使いの子もいるわね」

「ここここ、こんばんわ、ミランダ様、わ、わたしはカタリナですっ」

「そう、硬くならなくて良いわよ。ああ、なつかしいわね、私にも、カタリナちゃんみたいな頃があったのよ」

「そ、そうなんですか、信じられません」

「誰でも駆け出しの頃はあるわよ。タリス首都の近くの森で、必死になって修業したものよ」

「森でですか、大変じゃないですか?」

「迷宮都市の子は恵まれているのよ、他の土地の魔法使いの子は、なかなか実戦の修行はむずかしくてね、森で出る魔物ってそんなに多くないから」

「そうなんですか、たいへんですねっ」

「いま、黒い幽霊ブラックゴーストは、何階ぐらいに行ってるの?」

「こ、この前は二十五階に行きましたけど、普段は十九階ぐらいまでですっ」

「少年隊にしては、結構潜ってるのね。すごいわ」

「い、いえ、僧侶プーリストが居ないので、いっぱいいっぱいで」

「プーリストが居ないと厳しいわね。今の編成はどうなの」

「ええとですね……」


 うんうん、ミランダさんも、良い感じでカタリナちゃんのお話しを聞いているね。

 本当の一流冒険者の人は、穏やかで威張ったりしないんだね。


「あの、昔、私のお店に毒薬を買いにいらしましたよね」

「ん、ああ、挨拶がまだだったな、共和国のエルザってもんだ。よろしくなジーナ」

「あ、そういえば、勇者さんと決闘もしてましたね」

「おめえのせいで負けてしまったがな」

「あ、ごめんなさい」

「あやまんなって、まあ飲め。薬師ってなあ、毒飼いの強敵だって忘れてたこっちも悪いし」

「ジーナさんが、解毒薬を揃えてくれたから、なんとか勝てたんですよね」

「そ、そんな事ないですよ、勇者さんが頑張ったからです」

「ゲンキには、変なツキみてえなもんがあるよな、ちょうど良い所になんか起こるみたいな」

「たしかに、ありますね、幸運度が高いのかな」

「まったく、真面目に戦うと損な奴だぜ」


 そういって、エルザさんは、クワンドルの残りをゾバゾバ食べた。


 ニーナさんは、スピリッツをカプカプ飲むオッドちゃんを泣きそうな顔でよいしょしまくっていた。

 あやめちゃんが、満足そうにニーナさんの尻尾をもふもふしておられた。


「あと、ジーナさんと、リターナーさんは初顔あわせですね」

「よろしくおねがいしやす、薬師さん」


 リターナーさんは、漢臭い笑顔をジーナさんに向けた。


「よ、よろしくおねがいします」


 ジーナさんが、ぽっと頬を赤らめた。


 クルツとパットが、シルビアさんに三十階からの迷宮の情報を聞いている。

 ガイドブック情報とかは古くなるので、最新の情報を行った人から聞くのは大事らしい。


「四十五階から、ちょっと道が変化したみたいね、見た事がない場所に通じていたわ。四十八階で元の道に入れるけど、気を付けた方が良いわね」


 クルツが懐から地図を出して、書き付けていた。


「あと、五十階あたりに、レアが居るって噂があるわね」

「レア魔物かあ、十階分ぐらい強いんだっけ?」

「色々よね、下手すれば、もっと強いわよ、色が変な奴を見かけたら逃げるのね」

「種類は?」

「さあ? 居るって噂だけよ、種類まではわからないわ。まあ、魔王討伐隊はオッド師がいるから、最悪ぶっ飛ばしてもらうのね」


 魚介類のフライが来たので、ソースを掛けて食べる。

 白翼の人達も、興味津々で、一口食べて、大絶賛であったよ。

 ソースが一瓶、空になってしまったので、新しいソースを魔法袋から出した。

 うむむ、僕らの分も、カスピル商会の支店にたのまねば。

 明日、探してみるかな。


【次回予告】

ダンジョンでのレア種の噂を聞いたげんき。

彼はダンジョンでの激闘を思い描き、武者震いをするのであった。

そして、酒場の夜は更けていく。


なろう連載:オッドちゃん(略

次回 第239話

酒場の夜は更けていく

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