表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
242/750

234. エリーちゃんのお墓参り

 ご飯を食べ終わったので、ギルドを出て、クルツの案内でお墓に行く。

 塔路を歩いていく。

 ここを歩くのも久しぶりだなあ。


 クルツは、連合口主道アベニューを降りて、市立図書館のあるあたりで、北の階段を降りていく。

 というか、墓地はどこにあるのかな。

 メイリンは結構、ぐるぐる回ったけど、墓地らしき物は見た覚えが無い。

 クルツはどんどん階段を降りていく。


「孤児院の近くにあるのかい?」

「外」

「え?」

「墓地は街の外にあるに決まってんじゃんよ。壁の中の土地たけーのに」

「あ、そりゃあまあ、そうか」

「ん? でも、北には門が無いんだよ?」

「不浄外門があるんだ、小さいのが。死者とか疫病人は、そこから出されるんだよ」


 へえ、それは、面白いなあ。

 パンゲリアの街の北は、結構不浄で不人気地帯らしい。

 家賃も安いわけだね。


 孤児院が近いなら、帰りに寄ろうかな。

 その後、坂を上がって、ケストナ治療院に行けば良いし。


 パン屋さんの近くの上廻り横路ストリートに出て、共和国主道アベニューに乗り換え、少し下りる。

 しばらくして、また階段に乗り換えると、下周り横路ストリートに突き当たる。

 街の真北の壁に、小さく鉄扉があった。

 番人の人がいて、クルツが声をかけると、開けてくれた。

 鉄扉の奥は、暗い通路になっていた。

 シンと静まりかえった暗い通路を歩くと、突き当たりは、また鉄の扉になっていて、クルツがノックすると、開いた。


 ドアの向こうは、メイリンの外で、もう墓地だった。

 沢山の墓標が並んで居る。


 ああ、なんか静かな所だなあ。

 カーンカーンと、密やかな鐘の音が響く。


 お参りをしている人も何人かいる。

 家族が死んじゃった人かな。

 親子づれだ。


 広い墓地の、隅の方に、小さなエリーちゃんのお墓はあった。


「ほんとうはさ、孤児なんか、共同墓地に放り込まれて終わりなんだけどさ、なんか、嫌でさ、議員のダイアナさんに、なんとかならないかって聞いてみたんだ」

「ダイアナさんが」

「ああ、そうねって言って、お墓代だしてくれたよ。小さい墓なのに結構するのな」


 そうか、ダイアナさんが。

 思惑はどうあれ、ありがたいな。


 あやめちゃんが墓標に寄って、表面を撫でていた。


「ごめんねえ、おねえちゃん、帰ってこれなくて、本当にごめんね。これ、お土産だよ。キルークで買って来たヌイグルミ。手渡し、したかった、けど……。ごめんね」


 あやめちゃんは、お墓にハーフリングのヌイグルミを供えて、合掌した。

 僕も合掌する。

 パットは目を伏せ、手を握り合わせた。

 クルツも、手を握り合わせる。

 静かで、透明な感じの時間が通りすぎる。


 人が死んじゃうのは辛いね。

 ふう。


 お線香とか、読経とか、異世界だから無いけど、お墓の感じは、日本とよく似ているね。

 どこの世界でも、死んだ人をいたむ事は一緒なんだね。


「さあ、いこう、アヤメ」

「うん」


 パットがあやめちゃんを、うながして立つのを手伝った。


「あ、姉ちゃん、これ」


 クルツが、あやめちゃんがそなえたヌイグルミを持って、差し出した。


「お供えだよ?」

「置いといても、雨に濡れるしさ、孤児院の誰かにやんなよ」

「……そうかもしれないね」

「死んだ奴は遊べないからさ」


 クルツはそう言って、ニッと笑った。

 こういう割り切りも、そういう世界なんだなと、思うね。

 僕らは、お墓に供えた物は、死者の物だから、手をつけたりしないけど、パンゲリアでは違うのだろう。

 うん。

 生きてる子が使って、遊んだ方が、エリーちゃんも喜ぶかもしれないね。

 あやめちゃんは、ヌイグルミを抱きかかえて歩きはじめた。


 また、隧道みたいな通路を通って、メイリン市内に入る。

 なんか、異空間みたいな不思議な雰囲気の場所だなあ。


 そのまま、下周り横路ストリートを歩いて、孤児院に向かう。

 ここら辺は、葬儀屋さんとかが多いね。

 墓地が近いからなんだろうなあ。


 ひさしぶりに見た孤児院は……。

 すごい、立派な建物になっていた。


 屋根の上で、ドワーフのオッペンさんが、なんかしている。

 トランクさんが下で指示をしているようだ。


 トランクさんが僕らに気がついて、走ってきた。


「これは、勇者さんっ! お帰りなさい」

「ただいまです、トランクさん、すごい立派な建物になりましたね」

「はい、市民から寄付が集まって、資材も提供してもらって、こんなになりましたよ」


 屋根の上から、オッペンさんが、おーと言いながら手を振ってきた。

 と、孤児院のドアが開いて、中から孤児達が、どわーっと突進してきた。


「勇者さんだっ!!」

「お帰りなさいっ!!」

「勇者さんっ! 勇者のおねえちゃんっ!!」

「お、パトリシアのお姉ちゃんと、クルツ兄ちゃんもいるっ!!」


 僕らは一瞬で、孤児達に囲まれてしまった。

 結構みんな太ったなあ。

 髪も綺麗に切ってあるし、小綺麗な感じになって、年相応なかわいさになっていた。


「あら、お帰り、勇者。共和国で大活躍だったみたいね」

「おお、ませ子も元気だったかい?」

「ませ子じゃないわよっ! ナンナよっ!!」


 あはは、ませ子は、あいかわらずだなあ。


「勇者さん、中、中見て、すごいよ」

「トランクさんと、オッペンさんが、がんばったんだよ」

「はいはい、見よう見よう」


 沢山の孤児たちに引っ張られるように、僕らは孤児院の中に入った。


 ほわあ、見違えたなあ。

 古い灰色な木で出来ていた、つぎはぎだらけの廊下が、匂い立つような新しいピカピカの木でできた廊下に。

 雨漏りがしていた天井は、張り替えられて、煤一つついていません。

 まるで、別の世界の建物のよう。


「みんなで掃除してるの、大事にするの」

「それは偉いんだよ」


 女の子部屋、男の子部屋、どちらも立派な二段ベットが列び、とても暖かそう。

 換気の悪かった窓は、取り替えられて、綺麗なガラスが入った窓になっています。


「窓は、特別な水晶ガラスで、保護の魔法が掛かっていて、割れにくくなってます。これにより採光が六十%もアップしました。冬は暖かく、夏は窓を開けて室温を下げる事が可能ですよ」

「高かったでしょうに」

「資材は、提供してもらいましたよ」


 廊下の奥には、大きいオトイレがあった。

 子どもが多いから、オトイレが沢山あるのは良いね。


「朝のオトイレ争奪戦が少なくなったのよ。お漏らしも減ったわね」


 ませ子が、謎のドヤ顔をして自慢した。


「これは凄く環境が良くなりましたね」

「そうだね、パット」


 トイレの向こうの扉は、行水棟に繋がる渡り廊下で、突然の雨にも大丈夫なよう、屋根がついています。


「堅牢でコストの安い、耐水木で行水場は組んでみました。男児五基、女児五基で、一度に十人が行水可能です」

「毎日、暖かいお湯で行水出来るのよ。みんな臭くなくなったわ」


 立派だなあ。

 うんうん。


 廊下を戻って、食堂に入った。


「あら、あんたたち、お帰りなさい」


 ペトラさんが、厨房から手を拭きながら出て来た。

 食堂も、綺麗なテーブルが並び、けっして華美ではありませんが、シンプルで使いやすそうです。


 ちなみに、ペトラさんを見て気がついたが、キルークのカーダインドレスショップのペトラさんと同名ですな。

 あっちは、巨乳ドワーフさんでしたが。


「厨房も使いやすくしてもらって、本当にありがとうよ。街のみんなもね、知らなかったって、お金を寄付してくれてるんだ」

「そうですか、なによりです」


 孤児に支えられて、院長のシスターアンジェラがやってきた。


「これは勇者さん、お帰りなさい」

「孤児院が見違えましたね」

「はい、みんな喜んでおります。本当にありがとうございます」

「寄付の方も増えたとか」

「はい、街のみなが寄付していただいて、運営が楽になりましよ。ペトラも常勤で雇えるようになりまして」

「あたしだけじゃないさ、孤児院上がりの奴らがみんな時々手伝ってくれるんだよ。ダイアナまでね」

「ダイアナさんもですか」

「議員になってから、お高くとまっちまって、ずっと来て無かったんだけど、勇者が孤児院を立て直したって聞いて、気が変わったんだろうね、時々やってきて、手伝ってくれているよ」

「そうですか」


 ダイアナさんも考える所があったのかな。

 それは何よりかもしれないね。


【次回予告】

ケストナ治療院へいった、げんきたちは、すっかりげんきになったトマスと再会する。

そして、げんきたちは、村喰いの被害者、セシリアの具合を院長に尋ねるのだった。


なろう連載:オッドちゃん(略

次回 第235話

トマスの所にお見舞いにいく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ