㊳ ヒュークの加勢!/形勢逆転……?
「いい啖呵だ。だが、お気付きか…緑髪よ」
「……? ハッ…!!まさか……!!!」
嫌な感は当たった。おれが視線を移した先……風月の身に異変が起きていた。
「か…かはっ……!!!ぐぅ…なっ…これは……あの男の…!!」
「風月!!!もしかして心臓が…!!!!」
風月が『心臓破り』を食らっている…!? まずい!!!はやく『懈』で鼓動をサボらせなきゃ!!!間に合えッ!!!
「そうはいかないよぉ? おチビさん! きゃはは!!!」
ロトロトがおれの目の前に一瞬にして現れた。すかさず遠慮のない凄まじいローキックを繰り出してくる!!
だけど、おれの反射神経を凌駕して『我が身可愛さ』がソレに対応する。
「ぉ…!? 今の防げるんだ!!?ちょっとビックリ?」
「くそっ…どいてよ!!! このままじゃ風月が…!!」
「だあいじょうぶ! 冷たくて動かなくなったカラダも…ウチの好みだから…♡」
「この……どけっ!バカッッッ! どけったら!!!くそっ…!!くそ!!!」
ロトロトはまるで、子どもの遊びに付き合ってあげているかのような余裕ぶりでおれの行く手を妨害する…!!
くそッ…今は防御しかまともな動きが出来ない……!!!
このままじゃ…風月の心臓が壊される…!!!
風月の息遣いが段々荒くなってきている…。
「はぁーーー……くっ…『鉄風』も…出せない……幽気が…練れない……。はぁっ…はっ…」
「お…お姉ちゃん…!!! ぐっ!?…わたしも…これが…能力…!?」
「デカい方の巫女ちゃんにも、やっと効いてきたみたいだねえ! カズータスの呪いが…♡」
「さて、どうする?緑髪。守るべきものが増えてしまったぞ?」
……ぜったいに…
ぜったいに…許さない……
「ヒューク!!!!! この女を吹っ飛ばせっ!!!」
「任された────!!!」
「はっ!? …なんでテメエが…ここに…!?」
「消えろ─── 『業翼』!!!!」
ヒュークの突風がロトロトを廃墟の向こうへ吹っ飛ばした。スッキリしたぞ…ヒューク!!
「ヒューク…貴様…。離反したのは本当の様だな」
「チマキ殿───!!乗れッ!!急げッッッ!!!」
「ありがとう!!!ヒューク!!!」
元の姿に一瞬にして戻ったヒュークにおれは飛び乗った。まるでジェット機の様な凄まじいスピードだ。あっという間にふたりのもとにたどり着いた!
「大丈夫!?ふたりとも…!!」
「はぁ…はぁ…ち、茅蒔…?」
「茅蒔くん…はは…また助けられちゃったね…」
おれは寄り添っていたふたりの背中に手をかざす。
解放した『懈』が、殺人的な加速度の鼓動をサボらせ、ゆっくりと元のリズムへとリラックスさせる。
「おまえ…なんか見違えたな…茅蒔…」
「へへへ…文字通り飛んできた!!」
「茅蒔くん…何度も…すごいね、本当に…!」
良かった…間に合ったようだ!でもまだカズータスの“呪い”は解けていないかもしれない…!このままふたりに触れておいたほうが無難かも…?
そう思っていた矢先───
「このクソガキがッッッ…!!!」
「危ないッ!!茅蒔くん!!!」
おれたちの頭上から、さっきふっ飛ばしたであろうロトロトが降ってきた…!!
でも水月ねーちゃんが咄嗟に、あの…『両手に両手剣』で空中からの襲撃を防いだ…!!
「ぐぅっ!?な、なんだぁ!?どっからそんなバカデカい剣を出しやがった…!?ステレオ能力か!?」
「あなた達は許さない…!!お姉ちゃんや茅蒔くんたちを…苦しめて…!!!」
「なんてパワーだ…クソ脳筋が…!! 押し負ける…!」
ロトロトの幽気を纏った殺人級な蹴りと、水月ねーちゃんの剣の鍔迫り合い…
パワーは水月ねーちゃんが勝っていた!!
たまらずロトロトのカラダを吹っ飛ばしたっ!!!
「はぁあああああああああ!!!!!!!」
「クソがぁッッ!!!痛ッッ…クソ…クソッッ!!!」
また彼方へ斬り飛ばされるロトロト。
水月ねーちゃん…やっぱ凄い…凄いぞ!!
ロトロトは数十メートルも飛び、やっと安全な距離を保てたぞ…。
「あ〜…もうキレたぞ…キレたぞ…キレたキレたキレたキレた…!!!!あああああああ!!!!!クソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソ……!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
瓦礫から這い出て来たロトロトが物凄い怒号を散らす…。もう冷静さは一切無い。ケダモノの様な咆哮だ。
「弾けろ!!!!『雷撃』ッッッッ…!!!」
天からゴロゴロと、轟音が鳴る。
あの雷がくる────!!!
「ヒューク!!ふたりを乗せて後ろに飛んで!!!」
「───!!了解した!!」
雷はおれたちを引き裂くように、一直線に落ちてきた。ヒュークはふたりを一瞬で拾い、見事に回避した。
「大丈夫…!?三人とも!!!」
「し…死ぬかと思った…」
「あの雷があいつらの標準装備か…マジで厄介だな…」
流石ヒューク、判断力も速度もハンパないや。君が仲間で良かったよ…!頼もしいったらありゃしないや!
「よう…また会ったね?緑髪ちゃん…♡」
「ぐぎ…か…がはっ…」
耳元で囁かれた、背筋が凍るような甘い声。
いつの間に――!? 一瞬にして視界が反転した。おれの右足をロトロトの冷たい手が、万力のような力で掴んでいる。
はやく───『懈』を…発動させなきゃ…!!!
「それは…フンッッ…ソレは…使わせないよぉ?きゃははは!!」
「うぶっ…!!!おぇえええ…」
容赦のないキックがおれのみぞおちを抉る。
胃の内容物と一緒に、わずかに残っていた幽気が口から飛び散る。
その瞬間、おれは戦慄した。
『我が身可愛さ』が……発動しない……
理解した。
これまでの戦闘で、おれの幽気はとっくに底を突いていたんだ…。
「ふぅ~…スッキリした。でもまだまだ…君はこの特等席からちゃあんと見ておかないとね?♡もっとスッキリするから…♡」
「はぁ…はぁ…なに…?席……?また…雷か…!?」
「チマキ殿───!! 今行くぞ!!!」
「あーあー…キミがコッチに来るんだぁ…バカだなぁ…キミは今じゃないのっ!」
ヒュークが単身でおれの元に飛んでもどってくる。それを見てこの女はニタニタしながら微笑んでいる。バカはお前だ…ヒュークなら、お前なんて一発で…
「───『小規模な太陽』」
「───ッ!?」
閃光 ───遅れて、
大地が割れるほどの…、この閑散とした址塔街に凄まじい爆裂音が鳴り響いた。
「風月殿… 水月殿…!!!!」
「う……うそだ………」
ふたりが居た場所…
爆心地は、そこだったんだ。




