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C/W(ツーシーター)  作者: 道具屋
流霊奮闘編
36/44

㊱ 石化…!!?/『雷撃』ふたたび…!?



「有栖乃助さんが味方に憑いてくれるなら、なんかいけそうな気がする!!」


「“さん”は要らない──。これから僕と君は対等な立場だ。これこそが美しい関係性を保てると思っている…どうかな?」


「あ〜…了解了解!! なら…───有栖乃助…!!よろしく頼むよ!!」


「君が、ヤツらに狙われる程の実力。どれ程のものか、この縦須賀(たてすか)有栖乃助(ありすのすけ)───拝ませてもらおうっっ!!」


 それはこっちの台詞でもある。

 前髪の貴公子、縦須賀(たてすか) 有栖乃助(ありすのすけ)

 あの信徒(シント)たちに、この余裕ぶり。相当な手練れ…であってほしい!!



「保安官…? 厄介な組み合わせだな。俺たちはその、子どもさえ渡してもらえれば退却するのだが」


「ハァー!?カズータス!! ン…なわけないでしょ!! ウチはあのふたりをゲットするまでは帰らないよ!!?」


 すぐにロトロトが噛み付いている。厄介な組み合わせとはそっちのことでは…?

 それはそうと、おれはカズータスという男に気になっていることを聞いてみた。


「おれに用があるって言ってるけどさ。おれは流霊───しかもあと、約3日分くらいの命しかないんだけど…そんなおれに価値はあるのかな? 純粋な疑問なんだけど」


「ある」


「えっ、そんなキッパリと…!?」


 カズータスの答えは、重く、短かった。

 おれを捕らえに来たはずの敵の瞳には憐れみも侮りもない。ただ、目の前の存在に対する敬意のようなものが宿っていた。


「君は必ず、3日後も生きているだろう。根拠は無いが、自信はある。その存在感…こんな処で(くたば)る器ではない」


 思わずおれは、まだ少し痛む右手を握りしめた。自分でも信じきれない「生」への執着を、あろうことかおれをさらおうとしてる刺客に肯定されるなんて。皮肉を通り越して、なんだか腹の底から妙な熱が湧き上がってきた。


「ふむ……流霊、しかも猶予は3日だったのか。しかし敵ながら、テイスチングのセンスは悪くないねカズータス。 君の言う通りだ、この少年がたかだかそのような制約で消えるはずがない」


「有栖乃助まで、そんなコト言ってくれるんだ…。なんで、そう思うの…?」


「君は今のこの状況…自分よりも、あの巫女方を心配している。 視線運びや、仕草で判る。 自分はもう少しで消滅するかもしれないのに───だ」


 …びっくりした。まるで心を覗かれたようで。

 でも、全っ然不快感はない。

 この人が『保安長』という肩書を持っている理由が今、なんとなく理解できた気がする。



「少し言葉を訂正しようか茅蒔。 『消えるはずがない』ではなく『消えていいはずがない』──だ。 君たち信徒に、この少年の未来を譲るつもりはない。 茅蒔が二人を守ろうとするのなら、僕はその茅蒔を守る盾になろう」


 有栖乃助はおれに視線を移しそう言った。さっきまでのナルシストぶりは消え去り、保安長としての佇まいがそこにはあった。


「保安官の鑑だな縦須賀よ。 …それも、アンタの『美学』や『正義』というやつかい?」



「違うね。 ───『常識』だ」



 有栖乃助のその言葉はキラキラした演出も、気取ったポーズも一切ない。 無機質で、それでいて絶対的な響きを持っていた。

 おれは、隣に立つ彼の横顔を…初めて見たような気がした。


「…『常識』ときたか。この世界で一番美しくない言葉を選んだな。自己犠牲の精神……そういうやつらから真っ先に消えていくのが、この世界の『常識』だと思っていたんだがな」


 カズータスが初めて不快そうに目を細めた。

 有栖乃助も応えるようにニヒルに笑う。


「縦須賀…“暫定機動保安長”と言ったな? 噂通りの男なら…これはどう出る…!!」


 カズータスが初めて動いた。

 幽気が指先に収束する…───!!

 この動き…なんか、見たことある…!?

 まさか……!!?



「その自慢の(ツラ)ごと、吹き飛べ!!!───『雷撃(ギラ)』!!!」




 おれはこの雷を知っている…

 カズータスの指先から放たれたのはコレールが使っていた、あの『雷撃』だ!!!

 てことは…コイツも、バズーカの信徒…!?

 だけどこの雷…幽気量も威力も、あの時よりも数倍強い…!!!やばい…!!!速度も段違いだ!!!



「む…、晴天の下で見る雷…趣深いな」


「ばかっ!!有栖乃助!!!避けろーーーッッッ!!!!」




 一瞬の閃光。周囲が白色になる。

 途端、耳が千切れそうなほどの雷鳴が鳴り響く。

 予告通り、カズータスの『雷撃(ギラ)』は有栖乃助の顔面を捉えていた………命中したんだ。

 まばゆい光が視界を潰す。


 ───しかし、

 爆煙の中、優雅に立つシルエットがひとつ。




「なんだ…その姿は…!?」


「残念だけど…、───今日は前髪が絶好調でね」



 爆煙が晴れた先、そこには煤ひとつ付いていない有栖乃助が、誇張抜きで光り輝き堂々と立っていた。

 



「えっ…ええええええーーーーええ!?!?いっ…生きてる…!!?」


「フッ…茅蒔、余所見は禁物だよ? いくら僕が美しくてもね」



 おれは思わず声を上げた。

 有栖乃助が…なんだこれ!?石…!? みたいに…なってる…としか言いようがない…。

 半透明の身体… 石の身体…

 光沢があって太陽の光を反射してキラキラしている…まるで鉱石のようだ…。

 


「電撃の類は効かない。 石英(クォーツ)に変質したこの幽体は優れた絶縁体だからね。 …しかし、電気ショックは美顔効果があるやも…うーむ…困ったな。 少し電気耐性を落とすか…?」


 有栖乃助は、『雷撃(ギラ)』の熱を帯びた空気を優雅に手で払いながら、本気で悩むように顎に手を添えた。

 彼の透き通った、くぉーつ…?の前髪がパチパチと火花を散らしている…。

 




「…………は、はいーー??!」


 おれの口から出たのは、そんな情けない声だった。

 死ぬかもしれないと思って全力で叫んだのに…

 頼れるんだか、ちょっとウルサイのやら…。黙ってれば、ちゃんとカッコいいのに…。


「…自らの幽体を石化させているな…? 奇怪な男よ…」


 おれもだけど、カズータスも困惑してる。

 彼の目にも、有栖乃助がもはや血の通った肉体じゃなくて硬質で冷徹なカラダへと作り替えられているのが見えているんだろう。

 …これもステレオ能力なのか……!? 幽気の使い方次第じゃこんなことも出来るのか…。

 おれは石像のように堂々と佇む有栖乃助の腕や顔に見とれていた。


「その通り、僕の立体化する概念は『石化』 ───僕の石学の範疇であれば、どんな鉱石にも石化できるのだよ」


「せ、『石化』…すげーっっ!! …でも、フツーそういう力って相手に使うもんと思ってた…!」


()()()()()()、茅蒔」



「あ…アンタに言われたくねーーっっ!!!」




 おれの渾身の叫びツッコミを優雅に受け流す有栖乃助。

 やっぱ…なんかちょっと鼻につくな…。でも、強いから何も言えないや…。


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