㉞ 戻った4人!/最高のご褒美…!?
ユーリとの戦闘、水月ねーちゃんの蘇生、そしておれの指のドタバタ手術…。
あの騒動の後、水月ねーちゃんの完全回復のために、しばらくこの街を拠点にしてました。
実に、9日ほど…!!!
つまりもう3日しかないの!!!ヤバいよね?…ヤバいなあ〜…
ちゃんとおれの『戸籍』のために必死で、“養子勧誘”してたんだけど…この街で悪い方に目立ち過ぎたみたいで…、しかも流霊だからか目も合わせてくれないの。ほんと、あの世にもこういうノリっていうか、イジメみたいなのは有るんだよね〜…。あーやだやだ。
んで、水月ねーちゃんはというと、体調も怪我も完治して元の生活に戻っていいみたい! いまから施設に迎えに行くところ!
風月が付き添いでいるらしいから、心配はないかな!
お…見えてきた見えてきた…!
「おーい!!風月〜!水月ねーちゃん〜!!こっちこっち~!!!」
思いっきり元気に手を振ってみせた!
少しでも元気分けれたらって思って!
「ふふふ…茅蒔くん、久しぶり…!!!」
施設の門の向こう側から、聞き覚えのある声が響いた。
おれが手を振ると、水月ねーちゃんは長身を弾ませて、おれに向かって駆け寄ってくる。
……ああ。よかった。本当に、生きてる……!
おれが必死に繋ぎ止めた、翡翠の幽気。
風月にボロボロに縫ってもらった、右手の指。
その全てが報われた瞬間だった。
────って…ええ!? 水月ねーちゃんは勢いよくおれを抱き上げた…。
その懐かしい高すぎる視線、おれはぎゅっと胸に閉じ込められた…。く、くるし……
「元気だった? ごめんね、茅蒔くん……。迷惑ばかりかけたね…痛い思いもしたね…。本当に…本当に…ごめんね…」
「ううん、全然大丈夫だよ!! おれ、ずっと水月ねーちゃんのこと待ってたから!!」
おれの頭を撫でる彼女の手は、温かくて、とても優しい。
でも、ふと視線を落とすと、水月ねーちゃんはおれの右手の手袋に気づいた。今まで着けてなんてなかった不自然なその手袋をじっと見つめている。
「ごめんね…ごめんね…ホントに…」
水月ねーちゃん、すんごい後ろめたそうにしてる…。まあ、無理もない…のかなぁ? …えーと、えーと…なんか話題話題…───あっ!!
おれは新しく手に入れた「自慢の装備」をこれ見よがしに指し示した。
「えっと…ほら!!手袋もだけどさ!! …じゃじゃ~ん!!この髪留めどう?これ…カポタストっていうんだ〜!! 今までの髪留めだと『我が身可愛さ』のスピードに付いてけなくてポロポロしてたんだけど、コレは合金でさ! めっちゃ耐久性UPしたんだ!!どう!?中古品だけど…!」
「あらあら…そんな髪飾りがあるんだね!カッコいいよ!茅蒔くん!似合ってるね!」
水月ねーちゃんが笑ってくれた。今はそれだけでいいや!イメチェン大成功かな…!?まあ…風月に借りたお金で買ったんだけどね。…ちなみにカポタストは買った中で一番高かった…。2個分だしね…。
「ンなわけねーだろ。それ、ギターに使う道具だろうが…ったく…変なもんに私の小遣い使いやがって…。んで、なんだその赤い割烹着は…今にも地面に着きそーじゃねえか」
「こ・れ・は…!!カッコいい巫女風装束だよ!? 割烹着って…エプロンじゃ……えっ、…これエプロンなの…?」
「今のお前、どっからどー見ても『給食当番』だぞ」
「とっても、『かわいいよ』! 茅蒔くん!」
「……ダブル・ガーーーーーン……」
きゅ…給食当番…!? …なんかそんなのあったなぁ…。でも多分、褒め言葉じゃないことは理解したぞ…。水月ねーちゃんにもイジられてないか…?く、くやしい〜…!!!こんなはずじゃ…
…よし!! ならこれはどうだ…!?
おれは、その赤い割烹着の中に隠していたモノを手に持って水月ねーちゃんに見せた。
「コレって…『霞草』の花冠…とってもきれい…。これ…茅蒔くんが作ってくれたの…?」
「うん…!似合うかな〜って思って!快気祝いだよ! 着けてあげる! 屈んで屈んで!!」
「ふふふ…はいはい!」
水月ねーちゃんは、俺の目線に屈んだ。
おれは、その霞草のリングを頭にそっと乗せた。
「ははは!似合ってるね!!
えと…どう?…こういうの好きだった?」
「ふふふ…。大好きだよ」
──────………!!!!
………………。
ほっぺたに…防御しきれない熱い衝撃が…走った…。
おれの顔は、きっと今、着ている割烹着よりも真っ赤になってる…そんな自信がある…。
「あっ!?…水月…ねーちゃ!!??…えと…えーと!! ぇっ…えーー…と…」
「ありがとね!…小さな戦士さん!」
ま、まずい……顔見れないよ…。ひきょうだよ…そんなの反応できない………。………。
「うぅ…チマキ殿…報われたな…うぅ…」
なぜか泣いているヒューク。いつの間に肩にいたんだ…?なんか割と恥ずかしいことを皆の前で堂々とやった気がする。まあ!いいよね!たまには!
んだけど…和んでいた空気に風月が現実を突きつけた。
「…熱くなってるトコ、悪いが…茅蒔…時間がもうないぞ」
「あっ…う、うん……!!」
…そうだ、おれにはもう命の時間がない。もう片手で数えられるレベルだ。もんのすんごく…嬉しい気持ちの底に、じっくりと確実に恐怖が近づいてくる…。正直、怖い…。この、3人と…もう…水月ねーちゃんとも…
そんなのは…イヤだ…!!!
何が何でも…生き残ってやる!!!
「未来を獲りに往くぞ!チマキ殿!!」
「…よしっ…!!なるべく、がんばりますか…っ!!!」
おれは伝説の占い師が居る次の町へ足を進めた。
最後の旅にならないことを祈ってる。




