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アース  作者: 音竹咲夜花
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永遠の花畑

結の泉があった場所に戻るとカナメとミオ、あきとがもう揃っていた。


「あ!陽杜くん!もう来てたんだ」


「よお、早いな」


「…おはよう」


みんな挨拶してくれる。俺も少し頭を下げて挨拶を返した。


「じゃあ早速行くか。アルスも来るか?」


「ああ。私も行く」


アルスが答えるとミオが聞いた。


「ええっと、その狼は?」


「ルーナの幼馴染みだってさ。一緒にここに住んでいるらしい」


「そうなんだー。よろしくね!」


「ああ。よろしく」


なんか俺の時より優しくないか?と思っているとルーナがアルスにまたがった。


「私はアルスと先に出る。お前たちは昨日の所から外に出てくれ」


「わかった」


アルスはゆっくり毛づくろいをすると、大きく飛び上がり、ルーナを乗せてトンネルの上を走っていった。俺たちはトンネルの中を滑っていく。








外に出るとルーナたちが待っていた。


「今日行く場所はわりかしここから近い所にある。私に走ってついてこい」


「ええー!?」


「マジかよ」


「冗談だ」


真顔で冗談を言うな。というかこいつ冗談なんか言うのか。


「あ、ちょうどよかった。リリー」


ルーナが空中を飛んでいる手の平サイズの妖精に話しかけた。白いゆりのようなスカートをはいている。


「あら、ルーナ。どうしたの?」


「スワーリンを四羽、呼んでくれないか」


「いいけど…。ああ、昨日アーテン様が言っていた子たちを案内しているのね」


「そうだ」


「アーテン様が言ってた?」


「昨日、お前たちが帰ってからアーテン様が人間の格好をしてるものは敵じゃないから攻撃するなというおふれをだしたんだ」


ルーナが説明する。

マジか。ありがとうアーテン様。


「それでスワーリンを四羽呼べばいいのね」

リリーは任せて、と言うとくるくるっと舞って手笛を吹いた。するとどこからか白鳥のような鳥たちが飛んできた。頭や羽が色とりどりの花で飾られている。華麗に着陸すると長い首をもたげて言った。


「あらま、うわさのこたちじゃない」


「ほんとにいたのね」


「あなたがハルトちゃんかしら?」


「かわいいわね」


口々に喋りながら俺たちのまわりをくるくる回っている。随分個性的な鳥だな。


「花畑まで連れていってくれないか?私はアルスと先に行っている」


「いいわよ、わたしたちもちょうどむかうところだったし」


「私も行くところだったの。デイジー、一緒に乗っていっていいかしら?」


「もちろんよ、リリー。のりなさい」


「ありがとう」


リリーがデイジーという名前のスワーリンの頭にちょこんと座った。そしてそのままデイジーは俺にお尻をつきだす。


「さ、のって。カナメちゃん」


「いや、俺陽杜です」


「あらあなたがハルトちゃん?」


「うん。よろしくお願いします。」


「よろしくね。くびにしっかりつかまって」


いや、これほんとに乗れんのか。昨日のグリフィンは大きいからまだ安定感があったけどスワーリンは普通の白鳥より少し大きいくらいだ。

おそるおそる体にまたがって首の部分を掴む。


「だ、大丈夫ですか?俺重いですよね?」


「これくらいぜんぜんへいきよ。いつもたくさんのいきものをのせているんだもの。あなたはまだかるいほうよ。そうそう。そこにつかまっててね。はなしちゃだめよ」


デイジーは高い声で一度鳴くと宙にふわりと浮いた。デイジーの声にあわせて他の三人を乗せたスワーリンも浮く。六メートルほど上までくるとそのまま進み始めた。

 気分は…なんというか、メリーゴーランドで飛んでいる感じだ。めちゃくちゃ体が安定していてお腹の辺りがふわふわするような不思議な高揚感がある。

ひそかに感動しているとデイジーの頭に座っているリリーが頬杖をついて話しかけてきた。


「えーっと、ハルトくん?だよね」


「うん」


「初めまして。私はユリの花の妖精リリー」


リリーはにっこり笑った。控えめにいってもとても可愛らしい。親指姫みたいだ。


「これから行くところには花の妖精たちが集まって暮らしているのよ」


「そーなんだ」


「とても綺麗なのよ。人間界で住んでいるあなたが見たら驚くでしょうね」


「もうすぐ、つくわよ」


デイジーが言う。

奥に何かカラフルなものが見えた。なんだ?

そう思っていると下で走るアルスに乗ったルーナの声が聞こえた。


「ついたぞ」


「じゃあハルトくん。楽しんでね。デイジー、ありがとう」


「はーい」


リリーは片目をつぶると向こうに飛んでいった。トンボのような細長くて透明な羽が、太陽に反射してきらりと光った。




「これ…花だ」


 カラフルな何かは全て花だった。見渡す限りの綺麗な花畑が地平線の彼方まで続いている。

しかも咲く時期が異なるはずの花が一緒に咲いているのだ。知っている花も多いが、人間界では存在しないような特殊な造形の花もまた多い。その上をリリーのようなサイズの数々の花の妖精たちが楽しそうに飛び交っている。


「きれいでしょう?」


デイジーの誇らしげな声がした。こくこくとうなずく。あんまりにも綺麗で声がでなかった。

デイジーは少し舞い下がると花畑の間を泳ぐように飛んだ。視界がピンクや青や紫やオレンジでいっぱいになる。そこからまた高く飛び、今度は空中で一回転した。

俺はあやうく落ちそうになり、慌ててデイジーの胴体にしがみ付いた。


「うわわわわ!?」


「あっはっは!へいき?ハルキちゃん」


「あはは…俺、陽杜…」


「あらごめんなさい。なまえおぼえるのはにがてなのよ。いつもまちがえちゃうのよね」


デイジーは降下を始め、アルスとルーナのそばにゆっくりと着地した。俺はデイジーの翼を踏まないように気を付けて降りながら言った。


「どうもありがとう、デイジー」


「いいのよ。またなにかあったらよんでね」


デイジーと他の三羽はまた空へと飛び立っていった。その後ろ姿に向けて振っていた手を下ろすと、ミオが興奮したように口を開いた。


「ルーナちゃん、ここは?すごいね。」


「ここは永遠の花畑。この世の全ての花が咲いている場所だ。花の妖精の住処と妖精たちの長の宮殿がある。他にもスワーリンや花を好む生き物が住んでいるんだ」


なるほど、花や太いつるに覆われた桃色の宮殿がここから見えた。上には遠くからでもよく見えるショッキングピンク色の大きな大きなバラが咲いている。


「あそこには誰がいるんだ?」


「花の妖精の長、フローラ様だ」


「ん?アーテン様はアースの長だろ?アーテン様は何の妖精なんだ?」


「アーテン様は太陽の妖精だ。アースの長は代々太陽の妖精から選ばれるんだ。アース内では多くの種族の妖精がいるが、花、風、雪、月、火、水、金、土、太陽の妖精には長がいるんだ」


「そうなのか」


永遠の花畑には花の妖精の他にも、たくさんの他の種族らしき妖精や生き物がいた。ルーナが言った通り、みんなここが好きなんだろう。よくわかる。花の甘い香りとこの明るくて穏やかな雰囲気。立っているだけで幸せになれるような場所だ。


「せっかくだからフローラ様に挨拶をしにいこう」


「じゃあ、あそこまで歩くのか?」


カナメが聞くと、ルーナはこくりと頷いた。


「ああ、白い道を通っていこうと思う。白い道に着くまで足元に気をつけろ。お前たちは宙に浮けないから花や妖精を踏まないようにな」


 気を付けながらルーナの後を着いていくとすぐに白い道が見えた。そこには白くて丸い石が敷き詰められていて花は咲いておらず、花の宮殿まで一本道となっている。俺たちの他にも歩いている生き物がいて、よくちらちらと珍しいものを見るような目でこちらを見てきた。でも昨日と違ってあやしまれてはいないようだ。挨拶してくれた小人や水の妖精らしき生き物もいた。

 周りの花景色を楽しみながら歩いていると、気づいたら宮殿の前まで来ていた。

花の宮殿も門が開いている。中に入ってすぐ、ルーナが柱のそばに立っている緑色の服と三角帽子をかぶった少年に声をかけた。


「ジャック。フローラ様のところまで連れて行ってくれ」


 少年が顔を上げた。そばかすにレモン色の目が印象的な顔つきだ。ひょっこりと片眉をあげる。


「よう、ルーナじゃねえか。それと…?ああ、おふれのやつらか」


「そうだ。今アースの中を案内しているところなんだ」


「そうか!ルーナはアースについて詳しいもんな!よう、おいらはジャック。フローラ様にお仕えしている(つる)の妖精だ」


「よろしく」


「よろしくお願いします」


みなが挨拶を終えた後にやんちゃな笑顔を浮かべたジャックが手をパン!と合わせた。すると地面から突然、にょっきりと太いつるが生えてきた。つるはそのまま大蛇のようにうねうねと蠢いている。呆気にとられているとジャックが言った。


「そうか。見るの初めてだもんな。見てろよーおいらの妖力はすごいんだからなー」


ジャックが指を回す動作をするとつるの先端がくるくると丸まっていく。うずまき型の大きい平面が出来た。ジャックはそこに座り、他にもそれを五つ易々と作り上げると、こっちにこいと手招きをした。


「ほらほら、ここに座れよ。」


言われるがままに一番近くにあったつるの平面の上に座った。五人座り終えるとその平面の外側が盛り上がって俺の頭の上ほどの位置になる。つるに体が包まれて、上の部分がぽっかり空いているというかんじだ。まるで上がないカプセル状のつるの中にいるようだ。

俺は膝立ちになってそこから頭をだした。他のみんなもわくわくした顔でそうしている。なぜかルーナだけが頭をひっこめていて姿が見えなかった。


「じゃあいくぞー」


俺の前方にいるジャックの声が聞こえた。


 耳元で風がひゅうっと鳴った。突然、目の前の景色がぐらりと歪んだ。

そこからとんでもないスピードで俺たちを乗せたつるのカプセルが動き出した。


「きゃあああああ!なにこれ!」


すぐ近くでミオの絶叫が聞こえてくる。

カプセル状のつるは壁や柱をすいすい器用によけて上へ上へと登っていく。しかし今にもぶつかりそうでとても怖い上に、ジェットコースターの五倍くらい速いんじゃないかという速度。空気が痛いくらいに顔を叩いて息が出来ないほどだ。

あれ、絶叫系めちゃくちゃ得意な俺もやばいぞこれは。頭ひっこめておこう。













ジャックがつるから出してくれた時は俺はすっかり、ぐったりしていたのであった……。


 


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