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アース  作者: 音竹咲夜花
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ルーナの家

「それで陽杜。今日は一体どうするの?お母さん、ちょっとおばあちゃんを連れて病院に行こうと思っているんだけど。あんたも行く?」


「俺いいや。遊びに行きたいところあるんだ。」


「そう、お昼ご飯はどうする?おにぎり作っとこうか?」


「ううん、大丈夫。」


昨日の世にも不思議な出来事があった次の日。目が覚めた俺はやっぱり夢だったんじゃないかと朝起きてからすぐ、胸元を確かめた。石と……白い玉がちゃんとある。

ほんとに夢じゃないんだ。思わず笑いが込み上げてきた。これから一か月、退屈しないですむ。


朝ご飯をしっかり食べて準備を始める。昨日持っていかなかったスマホをいれようかと思ったけど、アースに電子機器を持っていくのはあまりよくない風に感じた。服は仕方ないとはいえ手ぶらが一番いい気がする。

じゃあ手ぶらで行くか。虫除けスプレーもアースの虫に嫌がられるかもしれないからしない方がいいかも。さっそく運動靴を履いて出掛けようとした。その時。


「陽ちゃん、どこに行くんだい?」


縁側に座っていたおばあちゃんに聞かれた。ギクリとする。


「いや、ちょっと…。山で遊んでくる。」


おばあちゃんは少し間をおいてから微笑んだ。


「そうかい。気をつけて行ってくるんだよ。」


「うん…ありがとう。」


俺は少し首をかしげなら走った。


「あー!あの子、山行くのに半袖で虫除けスプレーしてない!」


「大丈夫よ優子。陽ちゃん、ちゃんとスプレーしてたわ。」


「あら、ほんと?お母さん。よかった、マダニは怖いんだから。」



その一時間後、俺は昨日の場所に来ていた。

滝が流れ落ちているところとは少し離れているところ。比較的穏やかな水の流れをしている。

俺は胸元のペンダントから白い玉の方を取ると水にぽちゃりとつけた。

すると水に一瞬、太陽のような波紋が出来た、と思ったらあっという間に白銀色に変わった。

白い玉を水の中から取り出そうとすると逆に水に吸い込まれてしまう。


「そーいえば昨日帰るときもこんな感じだったな。」


そんなことを考える間もなく、俺は結の泉の中に引き込まれていった。




目を開けると俺はまた昨日と同じような結の泉の空間にいた。けれども昨日とはどこかが違う気がする。何が違うんだろう。ま、いいや。

下にはやはり光る水面がある。今日は声も何も聞こえない。手で握っていた玉をペンダントに戻すと俺はまたそこに向かって泳ぎだした。



ドッスン!!!!


「いててて……。これどうにかなんないのか。」


そしてやはり地面に叩きつけられた。あたりにブワッと土埃が舞う。それで咳き込んだ。


「来たか。お前が一番最初だ」


ルーナが奥からやってきた。


「先に私の家で他の三人が来るのを待っているか。ハルト、着いてこい」


うおお、ルーナに初めて名前を呼ばれた気がする。ルーナは昨日とは反対の方向に歩いて行った。

光るコケと石を抜けた先にハンモックのようなものが吊るされている。そのハンモックは銀色に光っていた。


「これは?」


「それは月の糸でできたハンモックだ。月光は治癒能力があるから、そのハンモックで寝ると傷もたちどころに消える。」


すげー。ヒーリングってやつだ。柔らかそうだし後でちょっと寝てみたい。

そういえばルーナは月の妖精なんだよな。ここらへんも月の光のようなキノコや花で覆われているし。


「月の妖精は昼間は何をやっているんだ?月はでないだろ?」


「月はでてるぞ。」


「え?」


「アースは人間界と時間の流れは同じだが、太陽も月も同時に昇っている。春も夏も秋も冬も同時に存在する。それぞれの場所でそれぞれの生き物が自由に暮らしているんだ。」


なんでもありだな。生物と化学の先生が聞いたら卒倒しそうだ。

でもアースでなら納得できる。お伽話みたいな世界だからな。


「だから、月の妖精が集まって住んでいるところは常に月が昇っているんだ。私はそこに住んでいないがな。ここだ」


葉っぱが青と銀に輝いている木の幹の部分に白いドアがあった。


「本物の妖精の家だ…」


ルーナがその白いドアを開けると銀色のベルが鳴った。


「お、お邪魔します」


「どうぞ」


中は薄暗くてよく見えなかったが、ルーナが指を鳴らしてランプを付けるとその場が明るくなった。


「ルーナも魔法が使えるのか?」


「魔法、というか妖力だ。私は少しだが使える」


家の中にも月の糸のハンモックがかかっていた。そして同じ繊維でできているであろう敷物の上には古ぼけた本が置いてある。上には薬草のようなものが敷き詰められ、そこに通じる銀色の梯子(はしご)がかけられていて、そばの棚には紫色の液体が入った瓶や水晶が置かれていた。


「ルーナはここで一人で暮らしているのか?」


「そうだ。ここの地下にも部屋があるし、月の妖精たちが住むところに通じている通路もある」


「そうなんだ」


そのとき、ドアから何かが入ってきた。驚いて振り返ると銀色の毛並みに、額に三日月のマークがある狼が入ってきていた。


「え!?狼!?」


「アルス、そいつは人間じゃない。食っちゃダメだ」


ルーナが言う。あ、そうか。俺一応完全な人間じゃないんだ、と思っているとそのアルスという狼は甘えるようにルーナに飛びついた。


「えーと、その狼は?」


「アルスだ。私と小さい頃から一緒で今も私とここで暮らしている」


「ルーナ、こいつは?」


狼が喋った!と驚きそうになったがそうだ、アース内ではみんな喋るんだったと思い返す。


「名前はハルト。半分人間で半分妖精らしい?私もよくわからないが悪い奴ではない」


「半分人間?」


アルスはこっちをじいっと見てくる。あわあわしているとフンっと鼻を鳴らした。


「まあ、いいだろう。ルーナを悲しませたら許さないからな」


「は、はい!」


メス狼なのに言い方がルーナと似ているなあ・・・。


「あ、ルーナ!このハンモック、寝てみてもいいか?」


「え?ああ、いいぞ。」


俺はわくわくしながらハンモックに寝転ぶ。ふわふわで気持ちい~。

ハンモックの横には小さい本棚があった。ルーナは本が好きなのかもしれない。さっきも置いてあったし。分厚い本、薄い本、そして。


「絵本?」


それは一番手前においてあるものだった。表紙に七体の妖精の絵が描かれている。


ドクン。

耳の中で。心臓の音が大きく鳴る。

なんだ?これ。なんでだ?俺、この絵本知っている気が……。



「ハルト?ハルト!」


ルーナの声ではっと我にかえった。


「な、なに?」


「他の三人が来た。行くぞ」


「ああ、うん。わかった」


俺はいそいそハンモックから降りる。


「今日はどこに行くの?」


ルーナが振り向いて少し笑った。


「ついてからのお楽しみだ」











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