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REALIZE2  作者: しんた☆
13/23

第4章 2 豪雨再来

アクシデント発生です!



あ、お話の中ですが。。。

 森の奥からザクザクと草を踏みしめる音が聞こえてくる。ヒカルが目を凝らすと、果物を抱えたハワードが戻ってくるところだった。


「ヒカル、おはようございます」

「ハワードさん、おはよう。その実はなに?」

「これは、アケビという果物です。確か私たちのいた世界にもありましたよ。収穫時期は違うようですが」


 差し出されたアケビはほのかに甘い香りがしている。テントまで持ち帰ってくると、ベスが木の枝を集めてかまどを作っていた。ハワードは持ち帰ったアケビを木箱に乗せると、上着のポケットから種類の違う果実を取り出した。


「こんなのもありました。これは、たぶんザクロでしょう」


 そう言って外皮を割ると、中から宝石のような小さな真っ赤な粒があふれ出た。


「わぁ、きれい!」


 ヒカルとベスは顔を見合わせて喜んだ。一粒口に入れて、ひゃぁ、すっぱい!とはしゃぐ。3人の笑い声でリッキーも起き出した。4人で山の果実を満喫して朝食を終えた。


「今日は、谷間の様子をみてみようかと思います。安全が確認できるまで、ヒカルとベスはこの辺りで散策を、念のため、リッキーも彼女たちの護衛をお願いします」


 そういうと、ハワードは元王国の庶民が暮らしていた谷間に向かって下っていった。リッキーは朝食のアケビが大層気に入り、もう一度森に行こうと二人を誘った。

 人の手が入っていない森は果物も取り放題だ。たっぷりのアケビを収穫してテントに戻ってくると、そろそろ昼食のしたくに取り掛かる。ヒカルも枯れ枝や枯葉を集めて協力していたが、ふいに周りが暗くなって空を見上げた。


「あれ?なんだか空模様が怪しいなぁ」


 ヒカルの言葉にリッキーも空を見上げる。さきほどまでの澄み切った青空はすっかり雨雲に閉ざされ、続いて嫌な風が吹いて辺りは一気に暗くなり大粒の雨が降り出した。


「ハワードさん、大丈夫かしら…」



 テントの中で外の様子をうかがっていたヒカルだったが、いつまでも降りやまない雨にとうとう耐えられなくなって、丘のふちまで様子を見に行った。テントの中でもうるさく感じていた雨音は、傘を差して外に出てきてもとどまることなく続いている。ぬかるんだ丘は一足踏み出すごとに、草の中からじわっと雨水があふれ出してくる。それさえも、気にならないほどの大雨だ。

昨日見下ろしていた丘のふちまで到着したが、ハワードが帰ってくる様子はない。何かあったのだろうか。胸の奥でずしっと嫌な重みを感じた。すると、ドドドっと今までとは比べ物にならない圧倒的な水音が始まった。


「これは!!」


昨日訪れた山の上の池の事が脳裏をかすめ、全身に鳥肌が立った。見る間に谷の上流から水煙が上がっている。途端に、過去の豪雨の喧騒が思い出された。


「ハワードさんが危ない!!」


 とっさに持っていた傘を振り払い、ヒカルは両手を組んで意識を集中し、風を起こす術を発動した。ここにある魔石はもしもの時に残しておきたい。ヒカルは自分の中にある魔力を出来るだけ引き出す様に意識した。


「シルベスタ先生に教えてもらった一点集中の技、ここで出せないでどうするのよ!」


 胃の奥がキューンと縮み上がるような恐怖と叩きつけるような大粒の雨で、怯みそうになる自分にけしかける。途端に突風が噴出し、雨雲がゆっくりと流れ始めた。

ヒカルの額には冷や汗が流れる。歯を食いしばっているが、雨雲は重く、なかなか途切れてくれない。手足が緊張でガタガタ震え出した。体の中の魔力がぐいぐい持っていかれて、意識が朦朧としてきた。


「まだよ。まだ終わってない。お願い、雨雲を吹き飛ばして!」


ありったけの力を込めて、魔力を放出した。



 その少し前、ハワードは谷間の村のあとに辿り着いていた。山の斜面には崩れかけた家がそのまま放置されているが、谷に降りてしまうと、そこに人々が暮らしていたのが信じられないほどに何もない状態だった。安全なようならヒカルを連れてこようと考えていたハワードだったが、どうやら雲行きは怪しい。踵を返したところで大粒の雨が降り出してしまった。


「まずいな」 


獣道を登っていると、斜面に半分埋もれた物を見つけた。


「これは…」


 ハワードはとっさにそれを持ち帰らなければと思い立った。近くにあった割れたレンガを使って掘り起こそうとするが、木の根が回っているのかなかなか掘り出せない。そうこうしているうちに川が突然増水して、ハワードの足元まで這い上がってきた。焦る気持ちを抑えて、懸命に周りの土砂を掻き出し、取り上げたところで水かさが一気に上がってきた。


「うわぁ!」


 恐ろしい勢いの流れに足を掬われ、とっさに近くの木の枝に手を伸ばす。近くに会ったはずの足場はあっという間に流され、あと一足踏みあがりたいところが踏ん張れない。その間にも、水かさがあがって、ともすれば体ごと持っていかれそうになってきた。

嫌だ、まだ死にたくない!ハワードは渾身の力を込めて腕の力だけで体を起こし、水の流れから難を逃れた。そのまま大きな木の枝を伝って、丘の縁まで辿り着くと、ほっとした途端、そこで意識を失ってしまった。



 さっきの豪雨が嘘のようにピタリとやんで、ベスとリッキーがそれぞれのテントから抜け出して様子を見に来た。空はぽっかりとサルビィの丘のあたりだけ、青空をのぞかせていた。


「ハワードさん、大丈夫だったかしら」

「うん、俺も気になってたんだ。ちょっと見てくるから、ヒカルの事、頼んだぞ」


 リッキーがぬかるんだ獣道を慎重に下っていく。その後ろ姿を不安げに見つめながらベスが声を掛ける。


「リッキーも気を付けてね!」


 リッキーが谷間を降りていくと、小川だったところは先ほどの雨で水かさが上がって、ドウドウと激しい流れになっていた。周りを見渡していると、大きな木の根元に人が倒れているのが見えた。


「ハワードさん? おい!大丈夫か?」


 リッキーの声に気が付いたハワードだったが、立ち上がろうとすると足に激痛が走った。


「すみません、足が…」


 リッキーがハワードの足に触れると「ううっ」とうめくような声が漏れる。


感想、誤字脱字報告などありましたら、お気軽にどうぞ。

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