第80話 聖なる光
光の玉は8枚の翼を纏い、空を漂う。朽ちていく闇の王を見下ろしながら。
その時、空間に別の光が射した。
「和樹!」
光が射したのは和樹が入ってきた扉からだった。そこには四人の人影がある。
ルミ、ルーシャ、ツィー、エニッタ、クルガリアの五人だ。何故エニッタとクルガリアがここに? と、和樹は首を傾げる。
「デムルゥーグ様!」
闇の王に駆け寄るリブル。続いてエニッタともう一人の女性も駆け寄る。
闇の王の身体のほとんどが焼き尽くされ、もはや腕と目玉の一部しか残っていなかった。
闇の王は残った一部の目をリブル達の方へ向けた。
【……逃げ、ろ……】
闇の王はそれ以上何も言わなかった。いや、言えなかった。何故なら闇の王の残った目玉の一部を光の線が貫いたから。
「え……?」
リブルは呆気に取られる。彼の目の前に闇の王の身体は欠片すらなく、灰だけがそこにあった。
「デムルゥーグ様ああぁぁ!」
エニッタが絶叫する。
だが、ただ一人、何も反応しない者がいた。強く握り締めるその拳はプルプルと震えていた。
「……貴様か、貴様がやったのかあああぁ!?」
まだ傷が癒えていないにも関わらずエニッタはその場で翼を広げ、光の玉の元へ飛ぶ。
「うらああぁ!」
「よせ! エニッタ!」
リブルの静止はもはや彼女に届かない。
光の玉に向かって拳を振るうクルガリア。しかしその直前に光り輝く丸い円の魔法陣が光の玉の目の前に現れる。
直後、鈍い音と共にクルガリアの拳が弾かれ、光の玉が放つ衝撃波によって吹っ飛ばされる。
「ぐあっ……!?」
「クルガリア!」
エニッタが吹っ飛ばされたクルガリアを抱きとめる。
「何かくる!」
ルミが宙にいる光の玉を指さす。光の玉は周囲の光を集め、溜め込み、どんどん膨張していた。
何かくる。この場にいた光の玉以外の全員が直感で感じた。
「逃げましょう !入口は私が開けます!」
クルガリアを背負い、叫ぶエニッタ。
「エニッタ、いけるか?」
「私は大丈夫です。リブル、援護お願いします」
「分かった」
「私達も行きましょう!」
ルーシャの言葉に走り出すツィーとルミ。
和樹も走り出そうとするが、足がもつれ、地面に倒れる。
「和樹!?」
ルミは後ろを振り返り、立ち止まる和樹を見つけ、叫ぶ。
そうこうしているうちに光の玉はサッカーボールほどの球体から五倍以上に膨れ上がっていた。
和樹が再び走り出した直後。
光の玉から四方八方へと一気に光線が放たれた。
こんな時になんで転ぶ……!
「っ!?」
俺は一瞬、時が止まったような感覚を感じた。死ぬのか? 俺……
そう思った直後、フワッと香水のような匂いを感じた。
「え……?」
気がつくと俺はルミ姉に背中から抱えられていた。
そして宙を浮き、リブル達の元へ一気に飛んで行く。
「魔天使エニッタが命じます。天空に自在する黒の間よ、我が命に応えよ!」
エニッタの呪文に入口だった扉が開く。
エニッタ、クルガリア、ルーシャ、ツィーの四人が扉の外へと飛び出る。
遅れてリブルが。
「「っ!?」」
扉まであと四十メートル。その時、光線が視界の端を通り過ぎる。追いつかれた。けどルミはそれを必死に交わしていく。
「早く! 後ろから火球が!」
リブルの言葉に後ろを振り向く和樹。
光の光線に混じって巨大な炎の玉がルミが飛ぶスピードよりも早く迫る。
「っ!」
背後から感じる熱気にルミも気づく。
「口を閉じて!」
「っ!」
ルミの飛ぶスピードが更に上がる。あと十五メートル。
十メートル。強烈な熱気二人を襲う。
五メートル。光の光線がどんどん視界の端を駆け抜けていく。
そして扉を超えるーー、
その直後、辺りがカッと光り、大爆発を起こした。エニッタの呪文により閉じようとした扉が爆風により吹き飛ばされた。
その爆風の影響はルミと和樹にも。
「ルミ! 和樹!」
ルーシャの声が聞こえるが、二人は運悪く足場に着地出来ず、下へと落下していく。
「ルミ姉!」
和樹が見上げ、彼女の名を叫ぶがーー、
「っ……」
ルミは気を失っていた。
空を抜け、どんどん下へと落下していく。このままだと二人共地面と衝突してしまう。
その時ーー、
「主! 聞こえますか!?」
「その声はアーリーか!?」
「はい! 今から言うことを落ち着いて聞いてすぐに実行して下さい! 呪文詠唱で土壁と唱えて下さい! よろしいですか?」
「分かった! ……土壁」
そう唱えた次の瞬間、落下する二人の下に、丸い魔法陣が現れ、その中から正方形の茶色い壁が出現する。
ドン! バフッ!
茶色い壁が地面に落ち、その上から降ってきた和樹とルミをクッションのように受け止めた。
その直後ーー、
視界が真っ白になる。
この時、白い光はアルヘイム大陸全域を包んでいた。
他の大陸にいる者達はその異変に気づく。
「む? なんだあれは……」
険しい山脈の麓。立ち止まり、空を見上げる岩龍。その目は険しく、思考を巡らしている。
場所は変わり、王国から少し離れた草原。
そこには白い鎧に身を包み、白銀の剣を持った少女が空を見上げていた。
「……白い空」
「どうされました?」
「ううん、なんでもない。引き続き例の件をお願い」
「はっ承知しました」
更に場所は変わり、何も無い平地。そこには1つの墓がある。いくつもの鎖、御札、魔方陣によって封印された墓が。
光の玉は、しばらくして白い光を静めた。
そして、目を開く。
『……これより世界を、調律、する……』
八枚の翼を広げ、自身を中心に円のように配置する。
そして、光の玉はまばゆい光を放つ。
白く塗り変わる空間。建物。そして閉じ込められていた男達と二人の女性が
姿を現す。みな、意識を失っている。
光の玉は彼らに向かって再び呪文を唱える。次の瞬間、彼らは姿を消した。
そして、あるべき所へ帰る。




