第79話 闇の空間
「っ……?」
目を覚ますと紫色に光るシャンデリアが視界に入った。
どこだここ。
「……」
身体を起こし、立ち上がる。
すると目の前に細長い廊下あるのが見てた。薄暗く、遠くまではっきりと見えていない。
ふと、後ろを振り向く。
「……一方通行か」
後ろには星の模様が描かれた壁があった。それのせいで前に進むしかない。
俺は前に歩き出す。ゆっくりと進み、見えない地面が少しずつあらわになるのを確認していく。罠が仕掛けられている可能性もあるからだ。
だが、そんな心配は杞憂に終わった。
道中何か罠があるというわけでもなく、魔物がいるわけでもなく、最上階と思われる扉の前へと辿り着いた。
「っ……」
俺はトレースしたアーリーの剣を握る。
剣を握る手は汗でびっしょりだった。しかも小刻みに震えている。
感じる。この扉の奥から滲み出る禍々しいオーラを。
とてつもなく大きく、底知れぬ恐怖を感じる。
「……」
辺りを見渡すがやはり誰もいない。いるのは俺一人だ。
戻る方法もない。
進むしかない。
「っ!」
俺は意を決して扉を開けて中へ入った。
扉の向こうは真っ暗で何も見えなかった。
だが、これだけは分かる。
ここに何かいるということは。
「よく来たね和樹」
「っ……」
青年の声と共にほんの少しだけ明かりが灯し、空間内が照らされる。
「っ……!?」
青年はリブルだった。声からしてそうだと思ったが。
その表情は笑みを浮かべておりどこか不気味だ。
それだけじゃない。俺が驚いた理由。それはあいつの後ろに潜む、紫色の怪物だった。
機械のようなものででできた無数の手に人間のあばら骨のような身体。
足はなく、中を浮いている。
そして身体の中央には俺を見つめる巨大な目。
まさかこいつが……
「君の思っている通りだ。僕の後ろにおられるのは僕らの主、闇の王デムルゥーグ様だ」
それはまさにラスボスといった様なものを感じさせる怪物だった。
まずい。逃げなければ。脳が全身に警鐘を鳴らす。
こいつと戦ってはいけない。
俺は来た道を引き返そうとした。
この世界にゲームみたいなセーブポイントやマ〇オRPGのようなリトライ機能はない。死んだら終わりだ。
嫌だ。死にたくない。
扉に触れるがーー、
「無駄だよ。その扉は外からしか開けられない」
「っ! くそっ!」
俺はカードを抜き、召喚する準備をする。
それを見たリブルがパチンと指を鳴らす。
「痛っ!?」
一瞬だが突如走った手首の激痛に思わずカードを落とす。
「そんなに恐れないでよ。デムルゥーグ様が君に興味があるから君をここに連れて来たのに」
「興味……?」
「紹介しよう。この御方は闇の王デムルゥーグ様だ」
するとリブルは横に移動し、後ろにいた怪物がこちらにくる。
距離がなくなるにつれ、威圧感、恐怖感などが増す。
俺のいる地面まで約三メートル。その距離まで来たところで怪物は立ち止まる。
思わず息を呑んでいると怪物は両手を広げた。
【ようこそ我が闇の世界へ】
その頃、未来神ルミとオルフェナ(ルーシャが憑依している)、ツィーの三人は連れていかれた和樹を追っていた。
そしてようやく最上階へと辿り着く。目の前の扉には星の模様が描かれた扉がある。
「恐らくこれね……」
「……」
「ルーシャ、大丈夫?」
ルミはあの時の当事者ではないもののある程度のことを知っている。
果たして本当に行かせていいのだろうか?
以前のように帰ってこないのではないか……そんな不安が頭をよぎる。
「……ルーシャ様無理しないで」
「大丈夫です」
二人の言葉に対してそう答え、扉に触れるルーシャ。
「……終わらせましょう。これ以上被害が大きくなる前に……」
そう言う彼女の表情は悲しそうだった。
ルーシャが扉を開けようとしたその時ーー、
「お待ち下さい」
「っ!?」
「あなた方は……」
三人が後ろを振り向くとそこにはエニッタと不貞腐れているクルガリアがいた。
「あぁ言っといて今更言うのもなんですけど私達も行きます。ほらっ、クルガリア。あなたからも言いなさい」
「ちっ……別にあんたらに手を貸す訳じゃねぇ。あの御方が心配だから行く。ただそれだけだ」
ぶっきらぼうに言うクルガリア。
それでもルミとルーシャにはなんとなく分かった。ツィーはどこか不満げながらもルーシャの方を見る。
「分かったわ。ルーシャ、ツィーそれでいい?」
「はい。では行きましょう」
「……分かった」
五人は扉を開けた。
☆☆☆
「なんだこれは……?」
兵士と冒険者が天使の間に辿り着くと、そこには誰もいなかった。
「誰かと誰かがここで戦った……?」
女性がそう口にする。不可解な点は他にもある。
この部屋までの間ほとんど魔物に出くわすことがなかった。となれば誰かがこの道を通り、魔物を倒したという事だ。
「この部屋はこれまで以上に広い。ということは恐らくそろそろ終盤だ。みんな、行くぞ!」
『 おー!』
「……フィアス」
「ん?」
冒険者達の中に紛れてエルシィがフィアスの袖を引っ張る。
「これ以上ついていったらもっと時間がかかるわ。幸いここからは広い。だから……乗るわよ?」
「え? 乗るって?」
「パーディリオン!」
「キュア!」
次の瞬間、パーディリオンが少し離れたところで巨大化した。パーディリオンは上手にエルシィとフィアスを咥え、自身の背中に乗せる。
「なんだあの竜!?」
「あれって確かエルネス様の……」
様々な言葉が飛び交う。
「行くわよフィアス! しっかりつかまりなさい!」
「つかまりなさい……って、えぇぇ!」
パーディリオンは物凄い速さで走り出し、空を飛んだ。
☆☆☆
【だが、招かれざる者がいるようだなぁ?】
闇の王が空を見上げる。
そこにはーー、無数の翼がこの空間の中へと入り込んでいた。数秒もしないうちにそれは完全に中へと入ってきた。
その翼はとても白く、神々しく輝いており、大きく羽ばたかせていた。まるで自身は偉大なる存在だとアピールするかのように。そんな翼に紛れ、丸い球体も遅れて空間の中へと共に入り込んでくる。その球体は黄金の色をしており、翼と同じように神々しく輝いていた。
丸い球体は自身を守るかのように翼を周りにまとわせる。
丸い球体を守るかのように球体の周りを囲う八つの白い翼。
誰もがこう思う。
なんだあれは……と。
だが、闇の王だけあれが何か分かっていた。
【何しに来た?偽りの光よ】
『……』
闇の王の問いに球体は答えない。
先に攻撃をしかけたのは謎の球体だった。だが、闇の王はそれを迎え撃つ。
何度も何度もぶつかり合う闇の王と謎の球体。
やがてどちらかに大きな隙が生まれた。
【なっ!?があぁぁぁぁっ!】
「デムルゥーグ様!?」
デムルゥーグの目が謎の球体の光線に貫かれた。それを皮切りに、次々と闇の王の身体は次々と放たれる球体の光線により、焼かれていった。
すみません。修正したら闇の王が出オチになりました。




