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この世界は好きですか?  作者: ふう♪
第7章アストレイン家の異変
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第57話 別れ、本当の彼女

すみません。第56〜58の中に出てくるギロですが、正しくはアーリーです。内容がごちゃまぜになってました。


 トカゲの魔物は高らかに言う。


「我の名はレチルロエル! あらゆる属性を使いこなす魔術獣チル!」


「……魔術獣、あなたは闇の王の配下ですか?」


 アストレインが尋ねる。


「どうチルかね〜、どちらにしても我は教えないチル! このまま帰るのもなんだしちょっくらお前達と遊んでやるチル!」


 そう言うとレチルロエルは後ろへ大きく飛び、玉座の上に乗った。

 そして背中から万年筆のようなものを手に取る。

 俺達に向けて赤い円を描く。


「炎よ……! 焼き尽くせチル!」


「っ! 皆さん端に逃げて下さい!」


 アストレインが叫んだ直後、


火炎放射ファイヤー!」


 ゴオオオオオ! と燃え盛る灼熱の炎が一直線に放たれる。


 先程まで絨毯だった場所は炎が通り、黒焦げと化していた。


「なんだあの火力は……」

「チルチル!」


 レチルロエルは次の瞬間、大きくジャンプし、フィアスの前に立つ。


「っ!?」


「これでも喰らえチル!」


 レチルロエルは白い円を絵描き、その円をフィアスに放つ。衝撃波か!


「フィアス!?」


 リシェット姉さんが叫ぶ。


 途端、ズシャアという音が鳴り響く。


「くっ……!」


 フィアスが白い円によって後ろへ吹き飛ばされる。だが、青い双剣で前にクロスしていたお陰で衝撃は軽減されている。


「次はお前チル!」


 そう言い、万年筆のようなペン先を下に向けて俺に振り下ろしてくる。


「っ!」


 俺は後ろに下がり、難なく避ける。

 だが、なぜかレチルロエルは笑みを浮かべる。


「チルチル! 引っかかったチル! 暗闇ダークミネスト!」


 レチルロエルが言った直後、俺と奴の周囲に黒い円が浮き出てくる。しまった! 

 最初から地面で発動させるつもりだったのか!


 それに気づいた時には辺りが真っ暗になっていた。


『主、気をつけてください!暗闇状態をかけられています!』

「えっ? 周囲が暗いだけじゃないの、がっ……」


 次の瞬間、後頭部に鈍い衝撃を受ける。そのまま俺は意識が朦朧になり、その場に倒れた。

 アーリーが必死に俺を呼ぶ声が最後に聞こえた。



「チル! まずは一人目!」


 レチルロエルが暗闇の円から飛び出す。

「ガトリング・クロー!」


 それを待ち構えていたかのようにアストレインが2丁の銃から弾を放つ。


 レチルロエルは空中で身体を捻らせ、いとも容易く交わしていく。


弾矢ピットアロー


 更にその隙をついてリシェットが弾を(アストレインが持つ銃の弾)武器とし、レチルロエル

放つ。


「ぐおっ!?」

「やった!」


 レチルロエルの左肩に弾が命中する。肩から血を流し、左腕がだらんと垂れ下がる。

 途端、レチルロエルの緑眼が輝きを放つ。


「調子に乗るなチル……毒撃破ポイズンスラッシュ


 レチルロエルは紫色の円を描く。途端、中から紫色のペイントに描かれたバツ印が円から放たれ、交わすまもなくリシェットの身体に命中する。


「ぐああっ……!」


「リシェット姉様!」


 フィアスがリシェットの元へ駆けつけようとするがレチルロエルに阻まれる。


「これで2人目チル……水よ……風よ……来たれ。水蒸気爆発スプラッシュボンバー!」


 レチルロエルはフィアスとアストレインに向けて大魔法を放つ。

 突如、白い煙と衝撃波の2つが同時に2人に襲いかかる。


「フィアス、私の後ろに隠れて!」

「っ! は、はい!」


「アストレインの盾!」


 次の瞬間、巨大で黄色な四角形がアストレインの前に展開される。


 ドギュオオオオオオン!


 耳をつんざくような爆撃音が辺りに鳴り響いた。




 白い煙が晴れ、フィアスが辺りを見渡すとアストレインが地面に膝をついていた。


「っ! アストレイン様!」


 見ると彼女の足が青色に光っている。


「くっ……どうやらあの大魔法の後にスタン攻撃を私に放ったようです。……あなただけでも逃げて下さい。あとは私がなんとか……」

「そんなことできません!」


「フィアス……」


 レチルロエルが2人の前に姿を現す。フィアスとアストレインは考えるまもなく次の攻撃に警戒する。だが、彼が魔法を使用することはなかった。


「チルチル、今のお前達は我には勝てないチル。だが、そこに倒れている女の攻撃はなかなかだったチル。それに免じて我はここで退散しよう」


 そう言い、自身の周りに白い円を描く。


「待ちなさい!」

「さらばチル! 次会うときは本気でやるチルから覚悟するがいい!」


 次の瞬間、レチルロエルのが描いた白い円の魔法が起動し、彼は跡形もなく姿を消した。


 先程まで騒がしかった広間が一気に静かになる。


「っ……逃げられましたか」

「和樹さん! リシェット姉様!」


 フィアスは倒れている2人の元へ駆けつけた。対してアストレインは奥に倒れている4人の元へと向かう。


 アストレインは駆けつけると順番に彼らの首に手を当て、脈を計った。4人とも気を失っているが脈は正常だ。


「みんな大丈夫そうね」


 そう言うと彼女はフィアスの元へ向かう。


「そっちはどう?」


「2人とも大丈夫です」


「そう、ひとまず安心ね」


 とはいえ、アストレイン達がいる空間はレチルロエルが放った属性魔法によって所々ヒビが入ったり焼け焦げた跡があり、修復が必要だ。


「……フィアス」

「っ?」


 アストレインはフィアスに言う。


「お別れの時が来たわ」

「っ!? そんな……」


「ペルティエ・アストレインとレチルロエルがいなくなったことで操られていた方々も解放され、この屋敷の脅威は去りました。もはや私がこの場に存在する理由はありません。そのため、あなたとこの姿で会える時間も残り僅かしかありません。ですからその前に……」


 アストレインはフィアスの頭にポンと手をのせる。


「あなたを……明るく前向きだった以前のあなたに戻します」


「っ……!」


 フィアスは大きく目をつぶる。そんな彼女を察したのか、アストレインは呟く。


「大丈夫です。怖がらないでください。あなたを否定する者はもうこの屋敷にいません。少し変わったあなたを見て驚くかもしれませんがきっと大丈夫です。皆、受け入れてくれるはずです。これまでこの屋敷とあなたを見守ってきた私は信じています。だから信じて下さい。この私、アストレインを……」


 次の瞬間、周囲が光に包まれた。




 "だから信じて下さい。この私、アストレインを……"


「っ……これは……?」


 私はアストレイン様からこの言葉を聞いた瞬間、辺りが真っ白になった。


 しばらくして目を開けると、そこは不思議な空間だった。


 多分私は夢を見ていた。


 なぜ分かるのか。それは、私の目の前に小さい頃の私の映像が映っていたからだ。


 まだ純粋でどんな時でも明るく、前向きだった私。




☆☆☆


「フィアス、まずいよもうこんな時間。お母様に叱られちゃう……」


 そう不安気に言うエルシィ。


「え!? もうこんな時間!? ……まぁいっか! 今日は楽しかったし!」


「そんなこと言ってる場合じゃないよフィアス! 早く帰らないと!」


「大丈夫大丈夫! なんならこっそり帰ってちゃんと門限までに帰ってたことにすればいいよ!」




☆☆☆


「シェルカお姉ちゃん! リシェットお姉ちゃん! 今日はどこに行くの? 私も行きたい!」


☆☆☆


「お父さん! 私、あのお洋服欲しい!」


「おいおい、またかフィアス。仕方ないなぁいてっ! なんだよルティア」


「あなた、フィアスに甘過ぎです。もうっ」


 頬を膨らませるルティア。少し嫉妬しているようにも見える。


「ははっ、すまんすまん。フィアスが可愛すぎてつい」


「むぅ、なら私のお洋服も買ってもらいます。フィアス、どのお洋服がいい? お母さんも一緒に探すよー」


☆☆☆


 いくつかの映像を見た私は自然と涙が溢れた。あの頃は楽しかった。でも……ある日を境に……


☆☆☆


 7歳を超える少し前から違和感は少しずつ感じていた。


 それが7歳になってあらわになった。


 勉強、運動、容姿全てにおいて上の姉たちと比べられ、叱られ、時には暴力を振るわれる。


「きゃっ!」


「フィアス! 何度言ったら分かるんだ! なぜシェルカやリシェットのように出来ない!」


「どうしてフィアスはこんなにも普通なのかしらね。あの二人はとても優秀なのに」


「この出来損ないめ。誰が普通にやれと言った! この駄目娘!」


「うちの一番下の娘は上のお姉ちゃん2人と違って全然可愛くないのよねぇ。なんだか子供みたいな顔してるわ」


☆☆☆


「っ……」


 私は思わず身体を抱き抱える。怖くて身体が震えていたのだ。


 急に認めてくれず、愛をくれなくなった両親。それどころか私を否定し、暴力を振るうようになった2人。


 そんな生活を9年も過ごしてきて私はいつしか、本当に信頼出来る人以外の人には距離を置いたり、遠慮して行動・物事を言うようになっていた。


 その方が私への罵倒や暴力が減ると分かったからだ。自分の身を守ることが出来る。


 それはもはや無意識のうちにそうするようになっていたかもしれない。


 けどある日、ちょっと気になる人ができた。


 その人と出会ったのは特別……という訳でもないいたって普通の平野。


 彼は見たこともない服装だった。


 それからよく分からない行動をしてて少し変な人だと思った。


 私はそんな彼に少し興味を持ち、離れてみていると彼はチュロリアに体当たりされ、気を失った。


 私は慌てて彼の元へ駆けつける。


 どうしようか考えているうちにいつの間にか私は彼の頭を私の膝の上にのせていた。


 どうしてか分からない。ただ、こう思った。この人ちょっと可愛い。何か手伝ってあげたいな。


 彼の名前は和樹だった。


 私は和樹さんと呼ぶことにした。


 本当は和樹って呼びたかった。けど、いきなり馴れ馴れしく呼んだらどう思うだろうか。変な人とか思われないだろうか。そんな不安が押し寄せたからだ。


 彼は話せば話すほど優しくて困った時助けてくれる人で、でもどこか寂しそうな人だった。まるでここが自分の居場所ではないかのように。


 爺のことで私が旅に出る時、彼は私に着いてきてくれた。


 ゴーレムが暴走した時、彼は怖いはず。なのに逃げずに立ち向かった。


 彼と出かけた時、とても楽しかった。


 私の格好を褒めてくれて嬉しかった。


 プレゼントをくれて胸が少しキュンってした。


 彼が傷ついた知らせを聞いた時、彼を助けたいと思った。誰よりも近く彼のそばに居たい、助けたい、力になりたいと思った。


 私、フィアス・アストレインはーー、


 心の中で私はいつしか彼に本当の私を見せたい。友人として、偽りの私ではなく本当の私を。そう思うようになっていた。


☆☆☆


「っ!?」


「気がつきましたか」


 いつ間にか幼い頃からこれまでの私の映像が消え、目の前には私の頭に手をのせたままのアストレイン様がいた。


「……これで私の役目は終わりです」


 名残惜しそうに呟き、私の頭から手を離す。


「……ありがとうアストレイン様。もう私は大丈夫」


 すると、アストレイン様は驚いた表情をする。どうしたんだろう?


「……まさかもう本来のあなたを見れるとは思っても見ませんでした。以前あなたにあった遠慮がちな言葉や相手を伺うような行動。時と場合にも寄りますがこれからは必要以上になさらないように。こちらこそありがとうフィアス」


 そう言い、アストレイン様は私に手を差し伸べる。私も手を差し出し、握手する。


「この屋敷が危機に陥らない限りあなたと会うことは二度とないでしょう。悲しいですが、私はそれを願っています。フィアス、これからはあなたらしい生き方をして下さい。余程のことが無い限り会うことはできませんが、私はあなたが幸せになれるまでずっと側で見守っています」


 アストレイン様の言葉に私は笑顔で答えた。


「……はい!」


 するとアストレイン様は満足気な表情を浮かべる。


「では……さようなら」


 途端、彼女の身体が光に包まれ、空中に浮き上がると、シュパン! と光の粒子が辺りに弾け飛び、どこかへと消えてしまった。


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