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この世界は好きですか?  作者: ふう♪
第7章アストレイン家の異変
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第55話 守護神、真実



「爺……」


 心配するフィアスの肩に手を置くリシェット姉さん。


「フィアス、大丈夫です。あなたが生まれる前からあの方を見ていますがあの人はとても強い方です。あなたの前では優しくなってしまうからそうは見えないかもしれないけどね」


「リシェット姉様……」


 なんかいいな。内容は違うけど俺も元の世界であったなこういうの……


 その時、アーリーから念話がくる。


『主、気をつけて下さい。前方の廊下に何かいます!』

「っ! 2人とも気をつけろ! 前方の廊下から敵がくる!」


「「っ!」」


 その方向を見ると、宙に浮いたモンスターが3体。見た感じシャンデリアが魔物化した感じか。


「あ、宙に浮いてる敵は任せて」


 リシェット姉さんが口を挟む。すると、彼女は頭につけていた髪飾りを外す。ポニーテールだった髪が下に垂れ、ロングになる。


「何をするんですか?」


「まぁ見てて。ほいっと!」


 リシェット姉さんは髪留めについているスイッチのような窪みをカチッと押した。途端、髪飾りだった物は形を変化させ、弓のような物へと変化させた。


「弾は……これでいっか。飴弾キャンディーショット


 リシェット姉さんはポケットから飴をいくつか取り出し、シャンデリアの魔物へと放った。


「っ!? ギャアアァっ!」


 リシェット姉さんが放った飴はシャンデリア達の目に命中し、地面をのたうつ。


「これでよし」


「すげぇ……」

「リシェット姉さんは弓の扱いが上手いですからね」


 いや、扱いもそうだけど飴で敵を倒す所がすげぇよ。


 そう言おうとすると、曲がり角から人影が見えた。


「あれ? リシェットにフィアスじゃない」


「っ! シェルカ姉さん……? どうしてここに?」


「んー、どうしてって私もよく分からないのよね。気づいたら屋敷内の人達とか魔物が追っかけてくるしお姉ちゃんもう走り疲れた」


 えへへと笑う彼女。どこか怪しい。


 その時ーー、

『その人は偽物……つけて……』


 フィアスでもリシェット姉さんでもない女性の声が再び脳内に響く。


 近づけば近づくほどその声は大きくなっている気がする。


『主、気をつけて下さい。その者から精気が感じられません』


 俺に語りかける女性だけでなく、アーリーも似たような意見を出す。


「フィアス! リシェットさん! その人は偽物の可能性が高いから気をつけた方がいい!」


「っ!」

「そっか、本物はさっき会った姉さん……うぅ、でも目の前にいるのも姉さん……」


 駄目だ、フィアスはすぐに理解してくれたけどリシェット姉さんは混乱してる!


「リシェット〜私は本物だよ〜? 信じてくれるよね〜?」


 そう言いシェルカ姉さんらしき人物はリシェット姉さんへと近づく。

 くそっ、どうすれば……2人がいる前で流石に下手に攻撃はしたくない。偽物の可能性が高いだけで本物じゃないとは限らない、


 そうこうしているうちに彼女はリシェット姉さんへと手を伸ばす。

がーー、


「ウィンドブロウ!」


「っ! きゃあっ!」


 フィアスがシェルカ姉さんへと風を放った。


 風をまともに受けたシェルカ姉さんは後ろへと吹っ飛ばされ、石像へと打ち付けられた。


 そして化けの皮が剥がれる。打ち付けられた途端、シェルカ姉さんの身体が溶けだし、液体となって地面に落ちた。やはり偽物だった。


 次の瞬間、シェルカ姉さんが身体を打ちつけたその石像は光を放った。


「え、何っ!?」


「なんだあれ……」


 呆気にとられる中、石像の中から光の玉が飛び出した。

 光の玉は女性の形へと変化し、やがて姿を現した。


「……ふぅ。ようやく解放された」


 年齢は20代前半辺りだろうか。ふわふわの銀髪に水色のドレスを身に纏って、宙を漂いながらこっちへやってきた。背中には何やら物騒な2つの黄色い拳銃を背負っている。


「あ、あなたはいったい……」


 リシェット姉さんが震えながら声を漏らす。


「そういえば実際に会うのは初めてでしたね。私の名はアストレイン。この屋敷の守り神といったところですかね」


「「「守り神!?」」」


 銀髪の女性、アストレインの告白に3人とも驚く。


「確かにうちは代々守り神様を慕い、お祈りしていましたがまさか本当にいたなんて……」


「そう思うのも無理はありません。私は本来影からあなた達を見守るのが役目でしたから。人前に出たのも数える程です。しかし、今回起きた非常事態は深刻なもので、私自身も敵の魔法によってあの石象に閉じ込められ、これまで動きを制限されていました」


「今、私達の家は……お父様やお母様はどうなっているのですか?」


 アストレインにそう聞くフィアス。するとアストレインはそんな彼女を悲しそうな表情で見つめた。


「っ……やはりあなたはあの時から少し変わってしまったのにもかかわらず優しいですね。今、この屋敷で起きていることとあなた達のご両親のことをこれからお話致しましょう」


「まず、端的に申し上げますと、この屋敷は現在リッチ……正確にはリバースリッチと闇の王の配下によってほとんど支配されています」


「「っ!」」

「闇の王の配下……」


「そのうちの1人、リッチですが、実は以前からこの屋敷内に潜んでいました」


「「えっ!?」」


「正確に言いますと、今のリバースリッチではなく、まだそこまで力を得てないリッチの頃です。時で言うとちょうどフィアスさんが産まれた時です」

「っ! けどリッチって……」


「はい。そもそもリッチというのは強力な者が死後にアンデッドと化した存在です。リシェットさん、この屋敷内で亡くなった方を覚えていませんか?」


「亡くなった方……まさか、お祖母様?」


「そうです。そのお祖母様は亡くなった後、リッチとして復活したのです。理由は嫉妬。対象はあなた達の母親、ルティア・アストレインです」


「えっ!?」

「どういうことですか……?」


「私が見ていた限り、あなた達のお祖母様、ペルティエ・アストレインはあなた達の父親に対して恋愛感情のようなものを抱いていました。それをあなた達の母親であるルティアが愛する息子を奪った。それが彼女の嫉妬の始まりだと思われます。死ぬ間際まで我慢していたようですが、死後、彼女は自身がリッチとして蘇ったことを知り、復讐を決意したのです。その内容はとても酷いものでした」


「まさかそれって……」


 フィアスが震える声で聞く。


「あなたも疑問に思ったはずです。小さい頃は自分の姉達と変わらず接してくれた両親が7歳を超えた後、急に両親があなただけに対する態度が変わったことを。彼女の復讐の内容は次に産まれてくる子供を母親であるルティアが愛せなくなる呪いをかけることです。また、自身の愛情を裏切った父親もまた、その対象になり、呪いをかけられてしまいました。彼女は死後も屋敷内に溜まる魔力を少しずつ吸い取り、力を手に入れていたのです。その後のことはあなた達が見た通りです」


「そんな……」


 ショックを受け、膝をつくフィアス。


 それを見たリシェット姉さんは怒った様子でアストレインに言った。


「どうして見ていたにもかかわらず妹を助けてくれなかったんですか? この屋敷内の守り神だったのならそれが出来たはずです。フィアスがこれまで苦しむことはなかったはずです!」


「お姉様……」


 するとアストレインは申し訳なさそうな表情をした。


「……確かに私は守り神です。しかし、私には天界にいる上級神と違い、守護神としてこの屋敷が危機に陥らない限り動いてはいけない決まりがありました。更に、あなた達のお祖母様はとても執念深く、彼女は常に細心の注意を払っていたため、全く隙がありませんでした。もし下手に私が出て彼女をとり逃してしまえばもはや倒すことは不可能です。悪く言えば私は彼女が大きく動くこの時を待っていました。……ですが、その代わりあなたの人生を狂わせてしまいました。申し訳ありません」


「っ……! アストレイン様……」


 アストレインはそう言いフィアスに土下座していた。守り神である彼女が。


 しばらくの間沈黙が続く。


 だが、その沈黙は長くは続かなかった。


「顔を上げてくださいアストレイン様。確かに私はこれまで辛い思いをしてきました。正直許せません。ですが……あなたの理由も分かります。ならせめて、今、この屋敷を……お父様とお母様を救うために力を貸してください」


「フィアス……やはりあなたは優しいですね。もちろんです、今回はこの屋敷の非常事態です。私はあなた達に全面的に強力しましょう。そして……」


 アストレインはフィアスの頭にそっと手を置く。


「これが終わったら私の力であなたを以前のあなたに戻してあげます……こうしてしまったのは私の責任でもありますから」


「そんなことが出来るのですか……? でも……」


 フィアスはそう言い、何故か俺の方を見る。なぜか少し恥ずかしそうに。

 それを聞いて察したアストレインは優しく微笑んだ。


「それにつきましては心配ありません。これまであなたが無意識に押さえ込んでしまった自分の性格やあなたらしい部分を引き出すだけなので根本的な部分は変わりません。ですからあなたが今持つ大切な感情もきちんと残りますよ」


 アストレインの言葉にフィアスは表情を明るくし、嬉しそうにしていた。

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