第48話 廃れた村の原因
しなしなになり、灰色に変色した木々。ボロボロになった木材の家や苔や蔓が巻きついたレンガの家。そして外の静けさ。
奥へ進めば進むほど、村の異様さが感じられる。
「本当にここは村なのか?」
「昔のことだけどお母様がここにいる友人と仲が良かったって言ってたからそのはずなんだけど……」
エルシィが答えるが歯切れ悪い。
「その友人の家はどこにあるの?」
「お母様の話によればこの辺のはずなんだけど……あれかしら?」
エルシィが指差すその先には薄くなって見えにくいが鍛冶屋と書かれた看板が付いている店があった。だが、壁はボロボロで色素も落ち、とても商売をしているとは思えない。
「お母様の友人は鍛冶屋をなさっていたから多分ここね」
「俺が中を見るから2人は離れていてくれ」
「待って、無闇に入るのは危険だと思います。ここは少し外で様子を見たほうが……」
フィアスの言うこともごもっともだがこのまま外で待っていても何も始まらない気がするんだよなぁ……
細心の注意を払い、恐る恐る中へと入る。
中は真っ暗であたりにクモの巣やホコリがたくさんあり、とても人が住んでいるとは思えない。
「お邪魔しまーす……」
「「お邪魔します……」」
そんな中、俺たちはゆっくりと玄関を上がり、障子の扉を見つけた。
「いくぞ……」
俺の言葉に2人共頷く。
ガララッ!
勢いよく開けたその先にはーー、
「……あら? あなた……エルネス……? ごほっ! いえ、違うわね……もしかして、エルネスの娘?」
力なく壁にもたれかかる茶髪の女性がいた。痩せこけた頰にくたびれた服やぼさぼさの髪を見るにお風呂や食事も満足に取れていないようだ。
「そうだけど……その声はもしかして、ペルシナさん……?」
「えぇ、そうよ……それよりもどうしてここに……ごほっごほっ!」
「大丈夫ですか!?」
エルシィが駆け寄り、フィアスが背中をさする。
「ごほっ……それよりも、娘と村長を……」
そう言い、ペルシナさんが指差す方を見る。そこには、中学生くらいの女の子と白髪を生やしたおじいさんが苦しそうに横たわっていた。
「大丈夫ですか?」
俺は2人に小さく声をかける。
すると、おじいさんがうっすらとまぶたを開ける。
「わしはまだ大丈夫じゃ……それよりもチィをみてやってくれ……」
「チィちゃん大丈夫?」
「……」
声をかけるが返事はない。おでこを触るとかなり熱い。
「これは……」
「ごほっ、チィは……病気に侵されて気を失っているんです……」
力なく答えるペルシナさん。
「何があったんですか?」
フィアスの言葉にペルシナさんはゆっくりと話し始めた。
「この状況になったのはごほっ、ほんの1ヶ月前のことでした……いつものように子供達は外で遊び、男の人は仕事に勤しみ、私達は家事をしていました。そんな時、突然男の人達がまるで何かに取り憑かれたかのようにどこかへと歩きだし、1人、また1人と姿を消し、最終的には怪我をしている男の人や老人、子供以外はみな、どこかへと消えてしまいました……ごほっごほっ!」
「無理なさらないでくださいね」
「ありがとう……そして不可解な出来事はこれだけでは終わりませんでした。男の人が消えた後、3日前あたりでしょうか……突然変な人形や魔物が山からたくさん降りてきて、村を荒らされました。ごほっ、幸い死者は出ませんでしたが、その際魔物が持ってきたと思われる病原菌に私達は感染し、それは瞬く間に広がりました。この病気は身体の力が徐々に弱まるみたいで今ではもう動ける人はほとんどいません。……あなた方が来る前に2人の冒険者が魔物を倒しに行ったのですがそれもどうなったか……」
「……和樹?」
ペルシナさんの話を聞いた俺はその場から立ち上がる。
「その山に行こう。その山にいる魔物を倒せば何とかなるかもしれない」
「私も行くよ!」
元気よく答えるフィアス。
「私は残るわ」
対してエルシィは静かにそう言った。
「ここにいる人達を誰が見るのよ? まさかこの人達を放って全員行くわけにもいかないでしょ? ならここは戦えない私が残るわ」
「……分かった! ここは任せたぞエルシィ!」
「エルシィ気をつけてね!」
「っ、そう言う2人こそ気をつけてね。任せたわよ!」
エルシィの言葉を背に俺とフィアスは鍛冶屋を出た。




