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この世界は好きですか?  作者: ふう♪
第6章黒い敵、クインテット騎兵
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第47話 喋る人形



「地図の通りだとこの先にあるみたいよ」


「確か、ヒュペリオ村という名前だったよね」


 エルシィの言葉に同調するフィアス。


「2人とも知ってるのか?」


「といっても私は行ったことないわ。お母様から自身が昔冒険者だった時に行った話を聞いただけよ」


「私も行ったことはありませんが爺から聞いて知りました。ヒュペリオ村の特徴はシアの実が村を囲むようにして生えているらしいです。あっ! あれです!」


 フィアスか指差すその先にはまるでヤシの木のような木だった。けれどてっぺんにある葉の側に黄緑色の実はなく、丸くて赤い実が3つなっていた。どちらかというとリンゴに近い。


 ゴクリ。見ていると思わず喉がなった。さっき昼ご飯を食べたはずなんだけどな。


「和樹さん?」


「な、何?」


「シアの実はオレンジ色にならないと食べられませんよ?」


「え、まじで?」


「はい。成熟前なので、もし食べればお腹を壊します」


 やべえ。今普通に採って食べようと思ってた。今度から気をつけよ……


「着いたわよ2人とも」


 エルシィの声に顔を上げると目の前に錆びた入り口の壁があり、その奥に家などの建物が広がっていた。壁にはシミや汚れ、傷などががたくさんあり、活気あふれる街……とはとてもいいがたい街だった。


 正直全体的に薄暗い印象だ。


「……なんか変ね」

「……うん。なんか聞いてた話と違う」


 暗い雰囲気に耐えきれず俺は2人に問いかける。


「誰か知り合いとかはいるのか?」


「お母様の友人が確かいたはずよ。まずはその人に聞いて見ましょう」


 そして俺たちは村の中へと入った。


「なんだこの村……」


 静かな村……とは言い難く、むしろ寂しそうな村だった。

 村人こそいるものの、皆元気が無く、子供達が外を走り回る姿もない。それどころか家の中に引きこもっていて一歩も外に出ようとしない。


 大人も男の人は怪我をしている人や老人をを除いてほとんど見かけず、女の人ばかりだ。


「なんか変ですね……」


「早くお母様の友人の元へ向かいましょう」


 そう言い、エルシィが先を急ごうとしたその時、彼女の目の前を誰かが通った。


「きゃっ!」


 エルシィは目の前の者にぶつかり、尻餅をついた。


「大丈夫か?」

「大丈夫? エルシィ」

「えぇ……」

「なんだお前ぎゃ?」


「「「っ!?」」」


 俺たち3人は思わず息を飲んだ。それは目の前の人物が人ではなかったからだ。


 先程、俺達の目の前に現れ、槍騎士に倒された魔物に似ているどころかそっくりだった。人形っぽいところがまさにそうだ。


「……て人間か。俺っちにぶつかってくるなんていい度胸してるな。しかもねじ伏せたはずなのにまだ明るい顔する奴がいるとは。そんな奴には罰を与えるぎゃ」


 そういうと人形の魔物は背中から杖のようなものを取り出した。

 途端、先端の青い玉がバチバチッと光を放つ。

 だが、次の瞬間、スパッという音と共にその先端は切り飛ばされた。


「ぎゃ?」

「そんなことさせません」


 フィアスはそう言い、2つの刃を魔物に向ける。


 俺もアーリーのカードを取り出して手に持つ。


『アーリー、いけるか?』

『準備は整っております! いつでもどうぞ!』

「……トレース・オン!」


 即座に俺の姿は黒いコートを着たものになり、剣をかまえる。


「ぎ? お前らやる気か? 言っとくが俺っちは他の喋らない人形とは違うぞ?」


 喋る人形は懐から2つの短剣を取り出す。


「せっかくだから俺様の名前を教えてやるっぎゃ! 俺様の名前はギャラーチョ! ルビアナ様の1番のしもべぎゃ!」


 うわぁ……こいつ、すぐ死にそうな敵キャラの典型的なやつだ。


 そう思っていると、ギャラーチョは俺たちの視界からパッと消えた。思わず辺りを見渡すと、エルシィに近づき、短剣を振り上げようとしているところだった。


「まずは弱そうなお前からつぶしてやる……ぎゃ!?」


 短剣を振り上げるギャラーチョの右手に水弾が命中し、怯んだ。


 水弾が飛んできた方向を見るとそこには真剣な表情のフィアスがいた。両手には水属性の双剣がある。


「そんなことさせない! エルシィ、後ろに下がってて!」

「えぇ……」


 ランチをとった時に聞いたのだが、エルシィに剣は扱えず、魔法もプチヒールや生活に使えるような魔法程度。この場に及んで彼女には攻撃手段がない。


 いや、正確には一つある。

 魔物使い。彼女の母が冒険者の頃そうであり、彼女もまた、それを受け継いだらしい。といってもほとんど魔物を従えたことはないと言っていた。今回俺たちが銀色の竜に乗ってここまで来れたのは、彼女に魔物使いの能力があったからだ。今のパーディリオンの場合は主人である彼女の母から命を受け、なおかつ、その対象が魔物使いだからこそ出来たことだ。


 だが、その竜は現在池の近くで待機してるため(魔物使いは使役してる魔物が自分が従えた魔物出ない場合50m以上離れると新たな指示ができなくなるという特徴を持つ)距離が離れている彼女には戦闘や守れと命令することができない。


「ぎゃ……お前邪魔するなぎゃ!」


 ギャラーチョは対象を変え、フィアスに襲いかかる。


 ガキンッ! お互いが持つ武器がぶつかり合う金属音があたりに鳴り響く。


「っ!!」


 と、フィアスがその衝撃に耐えきれず、少し態勢を崩す。優位に立ったギャラーチョは笑い声を上げる。


 その隙を狙い……


「ぎゃぎゃぎゃ! もうおしまいか? 悲しいぎゃね〜それじゃあ、ぐふっ……」


 俺が夢中になってるギャラーチョの背後に周り、背中に剣を突き刺した。


「……ぎゃ?」


 ギャラーチョは自身の身体を見る。

 くたびれた服から黒い煙のようなものが溢れだしていた。そしてバタンと地面に膝をつく。


「ぎゃぎゃ!? お、お前! 後ろからひ、卑怯だぞ!?」


「いや、お前も充分卑怯だからな」


 1番弱そうなエルシィを狙ったし。てか、この魔物馬鹿だろ、3対1の状況なんだからそれくらい考えとけよ。


「話してもらいますよ。あなたがここで何をしようとしていたか」


 フィアスがそう言うとギャラーチョはニッと不気味な笑みを浮かべた。


「けけ、無理ぎょ……何故なら俺っち、もう死ぬぎゃ……そして、俺の死はルビアナ様の脳に直接伝わるようになっている。俺っちを倒したこと、後悔するがいいぎゃ……」


 そう言い残すと、ギャラーチョは目の光を失い、完全に地面に倒れ伏した。


 そして、黒い煙はみるみるうちに彼の身体から完全に抜け、布だけがこの場に残され、黒い煙はどこかに消え去っていった。


「……変な魔物だったな」


「最後に言っていたルビアナ様というのも気になりますね。エルシィ、大丈夫?」


「えぇ、2人ともありがとう。それにしても和樹、その姿は……?」


「あぁこれか。これは俺のカードの能力をトレースしたんだ」


「「トレース?」」


疑問の声の2人に俺は続けて言う。


「憑依って言うんかな? 例えばアーリーのが持つ能力を俺も使うことができる。しかもその能力はアーリーの上位互換になってこんな風に姿を変えることも出来るんだ」


「へぇ……」

「凄いわね……」


 まぁ、これはミラシィ様に教えてもらったことだけどな。


 俺の答えに感嘆の声をあげた後、エルシィは俺の方を向いた。


「……ごめんね和樹。足でまといみたいになっちゃって」


 あの時、ついて行く! と、言ってくれた時と違い、しおらしい。なんだからしくない。


「そんなことない。エルシィがいなかったらここまでこれなかったんだ。足でまといなんかじゃない」


 そう言うと、彼女はニコッと微笑みながら言う。


「ありがとう和樹」


 次の瞬間、エルシィの淡いブラウンの髪が風に吹かれ、彼女の赤く蒸気した頬がよく見えた。


「お、おう」


 それを見た俺はなんか恥ずかしくなり、曖昧に言う。

 すると、フィアスが間に割り込んできた。

「2人とも! 早く行くよ!」


 そう言い、先頭を歩くフィアスは少し拗ねているようにも見えた。

 女の子ってほんと難しいな。何考えてるか分かんねぇ……


 苦笑しつつ俺達は先を急いだ。


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