第28話 食べ歩き
「そういえばここに来たのはいいけど何するんでしたっけ?」
俺がそう言うとみんな一斉にずこー! という風な状態になった。しかも護衛の人まで。
「はぁ……まさか何も知らないの?」
呆れた表情をするエルシィ王女。
「と、言われましても収穫祭に来たの初めてですし……」
知らなくて当然だと思うんだが……
「そういえばそうだったわね……まぁいいわ。ついて来て。フィアスも兄様もそれでいい?」
「いいよ、それで」
「僕もそれでいいかな」
意見が一致し、俺達はエルシィ王女に着いて行くことになった。
しばらく歩くと、くねくねと奥まで続く一本道が見えてきた。その両サイドには挟み込むようにして様々な屋台が並んでおり、挟まれた真ん中の道を人々が行き交う。
おっ、何やら美味そうな匂いが……
おっといけない、よだれが垂れるところだった。
その時、前にいたエルシィ王女が俺達の方を振り返った。
「今年も賑わってるね……んじゃ早速行きましょう。……ん、」
すると、エルシィ王女は何故か俺に手を差し出してきた。その顔は少し赤い。ん? どゆこと?
「っ……?」
「もう、ほら。今、人が混んでるでしょ? だからはぐれないように手を繋ぐのよ」
「あぁ! なるほど!」
って、俺は小さい子供か!?
断るのもなんか気がひけるので従うことにした。
手を繋ぐとエルシィ王女の温かい手が俺の手に伝わる。なんか恥ずかしいなこれ……これじゃまるで恋人じゃねぇか……
「むぅ……」
フィアスの方を見るとなにやらむくれた顔をしていた。
「あはは、和樹はこれから先大変そうだね」
笑ってないで助けてくれよ……
その後、俺達は色々な屋台を巡った。お好み焼きにフランクフルト、フライドポテトや焼きそばやりんご飴など、俺の世界にあった食べ物がたくさん売られている。ほんと、この世界の食べ物って俺の世界と同じだよな。
他にも、ミニゲームではくじ引きや射的、中にはチュロリア輪投げや爆裂!スライムクラッシュ! といった見たことないのもあった。ところで爆裂スライムクラッシュって何!? 名前からしてなんか怖そうなんだが……
色んな食べ物を食べ、色んなミニゲームに挑戦していく。
お金については俺が払おうとしたらエルシィ王女とナルタス王子に今日は自分達がおごるから気にしないでくれと止められた。
なんか申し訳ない気持ちでいっぱいになりそうだがここは2人に甘えておこう。
「和樹、これ食べてみない?」
そう言い、俺に細長くて黄色い食べ物を差し出してくる。おっ、これはもしかしてチョコバナナかな?
「いいですよ」
エルシィ王女から食べ物を刺した棒を受け取ろうとする。が、なぜかひょいと避けられた。
「あーん……」
何やらエルシィ王女が目で何かを訴えてくる。これって、もしかしてあれか? まさかな……
そう思いつつもとりあえず口を開けた。
「あーん……むぐっ!?」
まさかの恋人同士が良くやるあのあーんだった。
「エルシィ!」
次の瞬間、その光景を見たフィアスがものすごい勢いでエルシィ王女に詰め寄った。
もぐもぐ……って、これ、チョコバナナじゃない!? なんだこの肉のような食感は!?
「ふふっ、そんなにやりたいんだったらフィアスもやればいいんじゃない? あっ、ちなみに今、私が食べさせたのはチュロリアの尻尾焼きよ。それも先端をチョコレートでコーティングしたこの祭り限定の食べ物ね」
「っ!?」
「んむぅ(まじかよ!?)!?」
うっ……そう思うと吐き気が……これはバナナチョコレートだ。これはバナナチョコレートだ……あっ結構上手い。
妹とその友人2人の様子を見ていたナルタスは思わず苦笑する。
「うわぁ……大変そうだな……」
すまない、和樹。そしてありがとう。今年は君がいてくれたおかげで変なもの食べさせられなくて助かった!
いやぁ毎年フィアスちゃんと妹の3人で一緒に行ってるけどその度にエルシィから変なもの食べさせられてたんだよなぁ……って、こんなこと言ったら屋台の人に失礼か。それにしても今年は変な物が多いなぁ……よし、僕はこのまま遠くから君達の後をついていくとしよう。
「はぁ……まさかあんなのがあったとは……」
あの後、急いでお茶を買い、お口をリフレッシュした。
ここの屋台どうなってんだ……変なものって言っちゃ悪いが流石にチュロリア焼いてそこにチョコレートコーディングするとか考えた奴の脳みそ知りたいわ。
「あの、和樹さん……」
振り向くとフィアスだった。その手にはりんご飴が握られている。
「食べさせてくれるのか?」
「はい。口を開けてもらえますか?」
「いいよ、あーん」
ふっ。どうだこの俺の今のリア充さは!
羨むがいい! とか威張ってみる。
ん? このりんご飴、やけにふにゃふにゃなような……
「あっ! すみません……これ、りんご飴じゃなくてレッドスライムの飴でした……」
「もごぉ(なんだとぉ!?)!?」
ほんっとろくな食べ物がねぇな!?
あ、いや、ここは個性的な食べ物とでも言うべきか……
ていうかレッドスライムの飴ってなんだ!? 大丈夫なのかこれ!
あ、意外と美味い。ほんのりと甘いイチゴミルク味だ……
「う、美味いなこれ……」
レッドスライム飴って知らなかったらもっと良かったんだが……
「そうですか、それなら良かったですっ」
ニコリと笑顔を見せるフィアス。可愛いなおい。嫁にしたいくらいだ。
……う、でももし仮にそうなったら俺はこの世界で暮らすことになるのか……?
朝、目を覚ましたらすでに起きていたフィアスがいておはようのキスをしてくれる。
そしてリビングに行くとフィアスの手料理がたくさん並んでいる。
ご飯に味噌汁、ポテトサラダに鮭の塩漬け。とても健康的で美味そうだ。
そして朝食後、俺は仕事に行くべく、玄関へと向かう。すると後ろからフィアスがついてきて行ってらっしゃいのキスをして見送ってくれる。
……悪くないな。
ん? 待て待て待て!
俺は元の世界に帰らなきゃならない。ならそんなこと考えてる場合じゃないだろ!
「どうかしましたか?」
「うおっ!?」
いつのまにか目の前にフィアスがいて、俺は驚きのあまり素っ頓狂な声を上げてしまった。
「あっ、すみません。驚かすつもりはなかったんですけど……」
「いや、フィアスは気にしなくていい。これは……」
「フィアスー! 和樹! 早く来ないと置いて行くわよ!」
エルシィ王女の声に振り向くと、いつのまにか彼女は俺達から結構離れたところにいた。ナルタス王子や護衛も一緒だ。
つい考え込んでしまったな。
今は祭りに来てるんだから楽しまないとな。ん?
もしかしてエルシィ王女が俺を誘ったのってまさか……
俺の気を紛らわすためか……?




