第18話 エルシィ王女、詠唱短縮
「フィアス……」
「大丈夫です。無理に話す必要はありません。けど……」
そう言いエルシィの隣に座る。
そして俺を見る。その様子はどこか元の世界にいる俺にとって一番大切な誰かに似ていた。
「……私も家庭の事情で辛くなったことがたくさんあります。でも、その時は爺に泣きついて色々吐き出しました。そしたら不思議と気持ちがすっと楽になるんです。誰かが自分の話を聞いてくれる。それだけで不思議なことに人はすぐには立ち直れずとも、これから頑張れたりしちゃうんです。だから和樹さん」
「っ……?」
「辛くなった時は我慢しないで下さい。誰かに吐き出して下さい。その誰かがいないなら私やエルシィを頼って下さい。エルシィも和樹さんを元気にしたかったんだよね?」
「えぇ、そうよ」
「だ、そうですよ和樹さん。今は話したくなければ無理して話さなくていいです。話せることだけ話して下さい。……と言っても全部話したくないことだったらどうしようもないんですけどね」
そう言い苦笑するフィアス。
……まだ気持ち的に落ち着かないがこのままずっと落ち込んでいる訳にはいかないよな。
2人は俺を心配してるから今この状況になっている。このまま男である俺がいつまでもうじうじしてる訳にはいかない。情けないしな。なら……
「……分かった。でも今は何も話せない。けど、いつか話せる時がきたら聞いてくれるか?」
すると2人は驚いたのか目をパチクリとさせ、互いの顔を見た。やがてクスッと笑い、
「はい」
「えぇ、もちろんよ」
その後、俺が落ち着いてきたのを見計らってエルシィが口を開いた。
「そういえばまだあなたに聞きたいことが残っていたの」
「そうなの?」
フィアスが俺の方を向く。
「いや、俺もまだ聞いてない。聞きたいことってなんですか?」
するとエルシィ王女は途端目を光らせた。うっ、なんか怖えぇ……
「エルシィから聞いたの。召喚術が使えるのよね? それが見たいの!」
興奮しているのか鼻息を荒くさせる彼女。こんなだらしない顔ナルタス王子とかがみたらどう思うんだろな……
「すみません。エルシィがどうしても見たいそうで……」
「いやいいよ。見せたくないとかそう言うのは特にないし」
俺はポケットの中からカードを取り出す。
その時ーー、
『主様』
「っ!?」
「どうしたんですか?」
「い、いや、なんでもない。ちょっと待ってくれ」
首をかしげる2人にそう言い、俺はゆっくりと声の主に問いかける。
『え、と……その声は、あ、アーリーでいいんだよな……?』
『おぉっ、主様うまい具合に念話が出来てますね。私も安心です』
『お、おう……』
まだたどたどしいが自分でもアーリーと念話が出来ていることにびっくりしている。
『今回は確認も込めて念話を行いましたが無事成功して良かったです。あとはランチェルとも念話が出来るように練習していきましょう』
ん? ランチェル?
『ランチェルって誰だ?』
『主様が私の次に召喚した魔物です。覚えていらっしゃらないのですか?』
……はい?
『いやいやいや! あれに名前があったのか?』
俺が反論しているとーー、
『主様〜あれとかひどいです〜』
『あ、この子です主様。私の他に聞こえるその声がランチェルです』
確かに緑色の魔物と戦った際に召喚したあのランプ姿の魔物の声に似ている。というか一緒だ。
『お前がランチェル……ていうのか?』
『そうです〜』
『理由は分かりませんがどうやら私のように元から名前がない者がいたり、ランチェルのように元から名前があったりする者がいるようです』
「和樹さん……?」
「まだ召喚出来ないの?」
「っ!? もう少し待って!」
『アーリー! フィアス達がそろそろ不審がってる。召喚していいか?』
『あ、大丈夫です主様。いつでもお呼び下さいませ』
『ランチェルもお願い〜』
おいおい、2体も同時に召喚したら絶対俺がまた気絶するじゃねぇか……
『あ、それなら大丈夫です。主様の最大魔力が前回使い切ったからか、倍以上に膨れ上がっています。今なら最大で3体まで召喚出来るかと』
『まじか!?』
『はい。もちろん、召喚対象によって召喚できる数は変化しますが』
それは初めて聞いた。未だに属性魔法が微妙だからか、あまり希望を持っていなかったけど。これってようは筋肉痛のようなものか?
『んじゃ召喚するぞ』
『はい』
『いつでも〜』
「よし、召喚するぞ」
「「っ!」」
エルシィだけでなくフィアスも興味深そうに見てくる。そういえばあんまり見せていなかったな。
2枚のカードを右手に持ち、
「アーリーとランチェルを召喚!」
途端、2つの魔法陣が地面に現れ、それぞれ黒い煙と黄色い煙が溢れ出した。
そしてその煙の中からぞれぞれ1つずつ姿を現わす。
黒い煙の中からはアーリー。
黄色い煙の中からはランチェル。
「……すごい」
「しかも地面に魔法陣を描かずにあの紙の中から2体同時召喚なんて初めて見たわ……」
二人共俺の召喚魔術にとても驚いていた。
「えっと、こっちがアーリーでこのランプ姿をしているのがランチェルっていうんだ」
「初めまして、アーリーと申します」
「チェルチェル〜ランチェルだよ〜」
……って、
「え? 今しゃべ……」
「お前ら喋れるのか!?」
「もちろんです主様」
「ですです〜」
あれ、じゃあ念話なんていらなかったんじゃ……
『いいえ、重要機密なことを話し合うときにはこれが必須です主様』
『確かにそれもそうだな。でも、それならそうと言って欲しかったんだが……』
『それは主様を驚かせたかったからです!』
『チェル〜』
『酷くね!?』
そんなこんなで俺達は今日も夜遅くまで起きているのであった。あと、このことは内密にするようフィアスとエルシィに言った。バレると色々と面倒くさそうだし。




