第15話 新たな神様
お待たせしました。久しぶりの更新です。今回は少し長めになっています。
「……っ……」
俺は呆然としていた。
今起きているこの状況を見て。
一度整理しよう。
俺、アーリーを召喚。
すると謎の声が俺の脳内に響き、その声に従うように2枚目のカードを召喚。
するとカードの中から出てきたのは可愛らしい声で鳴くランプ。
そのランプが魔物となったオーベル男爵らしき魔物を倒した。
なんだこれ。わけわかんねぇ……
そして当のランプはというと、倒れ伏した魔物の上でブランブランと揺れている。
『主様』
再び俺の脳内に誰かの声が届く。
「誰だ……?」
『主様、私ですアーリーです』
「えっ!?」
俺は思わずアーリーを見た。
そこには俺を見て手を振っているアーリーがいた。
さっきから俺の脳内に響いていた声の主はアーリーだった。
「お前……喋れるのか!?」
俺がそう言うと首を横に降るアーリー。代わりに再び俺の脳内に声が響く。
『いいえ主様。これは【念話】というもので私が主様の脳内に話しかけてます。ようやく繋がりました』
テレパシーか……なんかどこかの異世界ファンタジーでもそんなのあったような気が……
「それって俺も出来る?」
アーリーはコクリと頷く。
『はい、もちろんです。方法は簡単ですが……今の主様だとそれをするのは危険かと』
「そうなのか? うっ……」
突如俺は吐き気を催した。なんだこれ……それになんだか力が抜けていくし全身も怠くなってきたぞ……
慌てた様子でアーリーが俺に言う。
『主様! 早くリコールを!』
「っ……リコールって、なんだ……?」
『召喚の反対です! 私達をカードの中に戻してください! リコールと唱えれば戻るはずです!』
「り、リコール……」
するとアーリーの身体が光だし、光の玉となってカードの中へと戻っていく。それと同時にランプも光の玉となり、カードの中へと戻っていった。
途端、俺の身体から力が抜けていく感覚は消えた。
そして俺は意識を失った。
「っ……?」
和樹が意識を失った頃、フィアスは目を覚ました。
「確か、魔物に吹き飛ばされて……」
そう呟き、辺りを見回すが近くに魔物はいなかった。近くにいるのは壁にもたれかかって眠る和樹だけ。
……何が起きているの?
そう思い、なんとなく廊下の方を見るとーー、
「ヂヂッ……」
廊下の向こうには手のひらサイズにも満たない小さな魔物がゆっくりと足音を立てずに歩いていた。
その身体の色は緑色。
「っ!?」
何がどうなっているのかは分からないがあれは恐らく気絶させられる前まで戦っていた魔物だ。
ここで逃すわけにはいかない。
フィアスは武器を持ち、小さな魔物を追いかける。
「ヂヂッ!?」
と、フィアスの気配に気づいたのか、小さな魔物は声を上げ、カサカサカサと物凄い速さで逃げていく。
がーー、
「ふんっ!」
「ヂ!? ヂィーーーーー!」
突如物陰から人影が現れ、鋭い剣で魔物の身体を突いた。
魔物はもがくも、やがて力尽き、動かなくなった。
「ナルタス王子!?」
物陰から出てきたのはナルタスだった。
ナルタスはフィアスを見て手を挙げる。
「気がついたみたいだね。大丈夫かい?」
「あ、はい……それよりもそこに隠れていらしたんですね」
フィアスがそう言うとナルタスは苦笑した。
「君より先に目を覚ましたんだけどその時この魔物がこっそり逃げようとしててね。追いかけたら逃げられるだろうから先回りして隠れていたんだ。成功するか怪しかったけど君のお陰で成功した。ありがとう。といっても大部分は和樹だけどね。この魔物を弱体化させたのは彼だろうし」
「っ! 和樹さん!」
フィアスは急いで和樹の元に駆けつけた。
「大丈夫、かなり魔力を消費しちゃってるけどしばらくしたら目を覚ますよ。でも……」
そう言い、ナルタスは首を傾げる。
「どうやってあの魔物をあそこまで弱体化させたんだ?」
「それは私にも分からないです」
「まぁいい。和樹が目を覚ましたら聞いて見るか」
その時ーー、
「フィアス……? お兄様……?」
「「っ!?」」
予想外の声に驚き、声がした方を振り向く二人。
そこには少女がいた。
しかし、暗くてはっきりとは見えない。
だが、段々と窓から太陽の光が差し込み、真っ暗だった廊下を明るく照らす。
と、それと同時に少女の素顔が露わになる。
「え、エルシィ……?」
「エルシィ!」
驚きを露わにしたまま動かないナルタス。それに対しフィアスはエルシィの元へと向かっていった。
☆☆☆
「またか……」
これで何度目だとため息をつく。
俺はまたあの白い空間の中にいた。
まぁ、いやではないけどなんか落ち着かない。
そして(今回は少し離れた先に)また誰かいる。
だが、その女性は前回会った神様でなければ前々回に会った神様でもなかった。
俺より少し上くらいの歳だろうか。
ショートにした橙色の髪に同じく橙色の瞳。
フリルのついた白いドレスに頭には赤いカチューシャ。
「あら? 思っていたより早く来たのね。ちょっとこっちに来なさいな」
「え? あ、はい……」
この人、誰?
女性はそう言い、手招きしてくるが、ここは異世界だ。何が起きるか分からない。こんな初対面の人に易々と近づいていいのだろうか?
もしかしたら盗賊とかかもしれない。
油断は出来ない。
そう思っていると女性は微笑んだ。
「ふふっ……あなたならもうすでにここに何回か来ているから分かるだろうに。ここは神様がいる空間よ」
……だよな。こんな真っ白な空間に盗賊とかいたらびっくりするわ。
「さてと。何から説明しようかしらね」
女性は唇に人差し指を当て、考える。
「あの、俺って今なんでここにいるんですか?」
「それはもちろん私があなたを呼んだからよ。次に意識を失った時に私の元に来るようにしておいてたの」
なるほど。じゃあ前の2回も神様が俺を呼び出していたからここに来ていたのか。
「んじゃとりあえず自己紹介からしておこうかしら。私の名はルミ・アスピス。あなたは斉藤和樹、だったかしら?」
「あ、はいそうです。えと、ルミ・アスピス様」
「あ、いいのよそんなかしこまらなくても。気軽に呼びやすい名前で呼んでくれていいわ」
おぉう、この人結構フレンドリーな感じだな。中学時代にもこんな感じのやついたっけ。
「……じゃあ、ルミ姉、聞きたいことがあるんだけど……」
やべぇ。早速呼んだけどめっちゃ親しみが湧きそうな呼び名だわ、これ。
「いいわよ、そのためにここに呼んだんだから。魔物のことでも召喚のことでもなんでもいいわ」
俺が知りたい事お見通しだなこれ。てか一つすごい気になるのあったけどとりあえず後回しだ。
「俺って意識を失ってここに来たけど今回はなんで意識を失ったんだ?」
原因が全く分からないからちょっと怖かったんだよな……
「あぁ、それは単純にあなたの身体の中の魔力が枯渇したからよ」
「枯渇……?」
「そ、攻撃魔法や他の人の傷を癒す時に使う回復魔法は少なからずそれ相応の魔力を消費するの」
「え? でも俺は……」
魔法なんて使ったっけ?
そう思っているとルミ姉がため息をついた。
「あなた召喚したでしょそれの正式名称言ってみなさい」
「召喚魔術……あっ」
「そういうこと。あなたの場合カードの中からそこに描かれている者を召喚するところが特別で後は普通の召喚魔術と同じよ。当然魔力も消費するわ。後もう一つ、大事なこと忘れているわ」
そう言い、ルミ姉は一息おく。
「……召喚というのは全く別の場所からその者をこちらに呼び寄せているもの。つまり、何が言いたいかというとようするに召喚している間もこちらに存在し続ける為にずっと魔力を消費し続けているのよ。あなたの魔力を見る限り恐らく複数召喚してそのままにしていたから足りなくなったんだと思うわ」
「なるほど……」
そういうことだったのか。アーリー、ありがとう。
「まぁ、限界を超えるという意味では魔力をほとんど使い切るのもありよ。身体がだるくなるだろうけどそれは成長している証だから。あなたはまだまだ増えると思うわ。あ、でも魔力欠乏症にならない程度にね」
魔力欠乏症、なんか筋肉痛みたいな感じだな。となれば俺が一度に召喚できる数は最大二体までってことか。といってもそもそもアーリーとあのランプみたい奴の二体しかいないけどな。
「さて、召喚の方はそれで大丈夫かしら?」
「はい、大丈夫です」
「じゃあ次は……。そういえばルミ姉ってなんでそんなに知ってるんだ?」
俺がそう聞くとルミ姉は笑みを浮かべた。
「それは私が神様だからに決まってるじゃない。なんでもという訳ではないけどあなたの近くで起こった事はだいたい把握してるわ」
そ、そうなのか……迂闊に変なこと出来ないな
「あら? 私は別に盗賊になろうが一緒にいる女の子を襲おうが何も言わないわよ」
「っ!?」
俺の心読まれてる!? てか別にそんな事考えてないし……
「ふぅん、白い髪の女の子の胸触って喜んでたような気がするんだけど?」
はいごめんなさい。ほんの少しだけ考えてました。てかもう勘弁してくれ……
「じゃあ次はあなたがここに来る前に戦ってた魔物のことね。あれは瘴気の魔人といって簡単に言うと病で死んだ人の成れの果てみたいなものよ」
「成れの果て……?」
「そう、私達神々の間でも話題なんだけど実はあまり解明されていないわ。未知の病で命を落とした者はごく稀にアンデットとして復活し、新たな魔物として誕生する可能性があるの。その魔物を私達はシグアンデッドと呼んでいるわ。シグアンデッドに知性はなく、無差別に生き物に接触し、今回のように接触した人間を昏睡状態かつ、衰弱させていくわ」
「……ということは」
「そう。今回の事件は未知の病なんかじゃない。シグアンデッドによって起きたものよ。こう言ってはなんだけどシグアンデッドの発生率は物凄く低いからある意味運が良かったといえるわ」
そんな運、まじでいらねぇ……ん?
「じゃあシグアンデッドにやられた人達はどうなるんだ?」
「それは大丈夫。シグアンデッド自身が死んだらみんな元に戻るわ」
「そっか」
ならこれでフィアスの件も王国の件も無事に解決だな。
「あとは……あなたのこれからね。神々の決まりで直接あなたに干渉することはできないけど助言とかの間接的なことなら出来るわ」
「これからか……」
これが終わったら俺はまたやることがなくなるのか……
「ふふっ、あなたは不思議ね。冒険してお金持ちになるなり国を作るなりハーレム作るなりすればいいのに。大きな欲がないわ。ただ、私は見てて飽きない」
そういわれてもなぁ……こんな展開ラノベ読みすぎてなんかお腹いっぱいなんだよな。
「そういえばルミ姉ってなんで俺をここに連れてきたんだ?」
するとルミ姉は顎に指をあて、考える素振りをする。
「そうね、もうすでに聞いてると思うんだけどあなたの行動をたまに見ている神様がいるの。私もその1人」
「えっ? なんだそりゃ?」
「あれ? 聞いてないの?」
「初めて聞いたぞ」
「あー、あの子達ね。詰めが甘いというかなんというか……こほん。じゃあ私から説明するわ。先程も言った通りあなたの行動を見ている神様がいるんだけどそれは別に変な意味じゃないわ。単にあなたの行動に興味を持って見ているだけなのよ」
「お、おう」
なんかそれ全部見られているようで恥ずかしいんだが……
「といっても四六時中見ている訳では無いわ。ほんとたまによ? んで今回、あなたに興味を持った私があなたと話したくてここに呼んだの」
ごめんなさいねと手を合わせて謝られる。
「……ちなみにどれくらいの神様に見られたかわかる?」
「うーん、私が知る限りだとあなたがここであった神様ぐらいよ」
ということは3人か。いや、ミラシィ様を除いてガイシアとルミ姉の2人か。そこまで見られてなくて良かった……
「まぁ大体はあなたに何か教えてくれる子ばかりのはずだからあなたに不都合が生じることは無いわ。あなたの恥ずかしい所を見られる可能性はあるけど」
「うっ……それは勘弁してくれ」
「ふふっ、分かったわ。なら他の子があなたに興味を持った時あなたに言うわ」
「あぁ、ありがとう」
こうして時間はあっという間に過ぎていった。
補足ですが、さらっとアーリーがカードの中へ戻る描写が登場したお話でありますが、アーリーは和樹が何も指示しなくても自分の意思でカードの中に戻ることができます。ランプは……出来ません。




