第14話 更なる召喚術
「そんなことはさせない。君はここで倒す! はああぁっ!」
ナルタスは剣を持ち、魔物に斬りかかる。
ガキンッという金属音が辺りに弾ける。
魔物はナルタスが振り下ろした剣を片手で簡単に受け止めていた。
金属音が鳴ったところをみる限り、どうやら手の部分だけ質を金属に変化させたようだ。
「なっ!?」
「クバァッ!」
魔物の口から黒い煙が吐き出される。
「くっ……目が」
まるで海中でイカが墨を吐いたかのように黒い煙はすぐに廊下一帯を覆い尽くす。
そこへチャンスとばかりに魔物の鋭い爪が俺に襲いかかる。が、フィアスが俺の前に出て剣で爪を弾いた。
「フィアス、ありがとう」
コクリと頷くフィアス。
「ふんっ!」
「ギャアアアッ!」
魔物が予想外のガードに怯んでいる隙にナルタスが辺りの煙を取り払い、背後から剣を振り下ろした。
直後、魔物の身体は真っ二つに斬り裂かれる。
「グ……オノレ……」
そう言い残し、魔物は地面に倒れ伏した。
「……やったのか?」
「……分からない」
俺の問いにナルタスが答える。
意外とあっけなく終わったように思える。けど、動かないところを見ると倒したのだろう。
そう思っているとーー、
「いえ! まだです!」
「「っ!?」」
フィアスの声に思わず魔物の方を見ると倒れ伏したはずの魔物が再び立っていた。
真っ二つに斬り裂かれた身体は元どおりに修復されている。
「何故だ……? 真っ二つに斬り裂いたはずなのに」
驚くナルタスに対し魔物は笑みを浮かべる。
「ぐあっ……!」
「きゃっ!」
突如魔物の周囲に青いオーラのようなものが放出される。
そのオーラはまるで衝撃波であるかのように俺たちを吹っ飛ばした。
「っ……フィアス! ナルタス王子!」
俺はなんとか起き上がり、二人に呼びかけるがどちらも返事が返ってこなかった。
「っ!?」
フィアスとナルタス王子の元に駆けつけて見ると、目を閉じたまま壁にもたれかかっていた。運悪く頭を強く打ったのか、意識を失っていた。
大事には至らなさそうだが、あれ。これって……
俺の脳裏に嫌な予感が走る。
「ギギギ……オワリダ」
そう言い、魔物は口を大きく開いた。
やっぱり絶望的な状況じゃねぇか!
こう言う時大きく口を開く奴は大抵大技を仕掛けてくる。
かといってそれを防ぐには……
「どうすればいいんだ……」
頭を抱えながら呟く。
その時、まだこの状況をなんとかする方法があることに気づく。
俺の召喚術だ。
さっきはアーリーを召喚した時のリスクを考え、思いとどまったがもうやるしかない。
たとえアーリーが地面をボコボコにしようが叩き割ろうがその時は王様に許しては貰えないだろうが謝ろう。ここで何もしなかったら多分ここにいる全員が死ぬ。
最悪、アーリーに地属性の攻撃をさせなければいいだけの話だ。
なら話は早い。
ここでやるしかない。
とにかく活路を開かねば。俺はポケットからカードを取り出す。こういう時のためにアーリーは取り出しやすい位置に入れていた。
「ン……?」
訝しげな目線を送る魔物。
俺は構わずカードを前に振りかざす。
「アーリーを召喚!」
「グッ……ナンダコレ! ミ、ミエナイッ」
カードから黒い煙が溢れ出し、それと同時にアーリーが現れる。
「ん? なんだこれ……?」
その時、アーリーのカードがピカピカと光っていることに気づいた。
『主様』
「えっ?」
今、俺の脳裏に誰かの声が聞こえた気がした。気のせいかと思っていると、
『気のせいではありません主様』
「っ……?」
再び俺に誰かが声をかけてくる。
辺りを見回すが2人は気を失っているからまずないとして、他に誰の姿もない。
「グガァ!」
煙を振り払った魔物が俺に近づいてくる。
『話は後です主様! 今ポケットにある箱を取り出し、2枚目のカードを見てください!』
俺の脳裏に誰かがそう言った次の瞬間、俺の身体はそれに従うようにポケットから箱を取り出し、2枚目のカードを取り出した。
見たことがあるシルエット。そこにはランプのようなシルエットが描かれていた。
『それを早く召喚して下さい! 今の主ならそれが可能です!』
誰かの声に身体が反応する。
「カードに描かれしものよ……我が声に応えよ! 召喚!」
途端、カードから辺りに黄色い煙が溢れ出した。それと同時に襲いかかろうとしていた魔物が立ち止まる。
「グアァッ! マ、マブシイイイィ!」
魔物は眩しそうに顔を歪め、両手を顔に当てる。
「なんだこれ……?」
更に黄色い煙の中から光が溢れ出していた。まるで暗い闇の夜を消し去ろうとしているかのように。
やがて煙の中の主は姿を現わす。
「チェル?」
姿を現わしたのは可愛らしい声で鳴くランプだった。胴体は茶色に塗られており、その胴体の真ん中には先ほどの光の元であろう炎が頑丈そうなガラスに包まれ、ユラユラと揺らめいている。
更にそのガラスの上にはくりっとした黒い目と小さな口のようなものがついていた。
「お、おう……」
やはりシルエット通りだ。ただ、なんか見た目が可愛いな。
「グッ……」
態勢を取り戻した魔物はランプに襲いかかる。
だが、魔物の右手が触れる直前ーー、
「ホーリーパージ」
ランプがそう言うと同時にランプの身体からまばゆい光が放出された。
「グギャアアアアッーーーーーー!」
魔物が顔に左手を当て、苦しみ声をあげる。
その右手と身体の半分はすでに焼け落ちていた。
更にランプは魔物に近づきーー、
「ホーリーライト〜」
可愛らしい声で言うランプ。
次の瞬間、ガラスに包まれている炎が燃え盛り、ガラスから一直線に伸びる光が至近距離で魔物に放たれた。
「グボアァ……ァ……」
魔物の身体を見るとまるで心臓の様なもの……菱形の赤い核が剥き出しになっていた。その菱形の核はすでにランプが放った光によって貫通され、穴が空いていた。
身体の半分と自身の核を失った魔物はバランスを崩し、今度こそ地面に倒れ伏した。




