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メタ読みしてもいいですか?  作者: 矢玉


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9/11

8.相容れませんか?


 優馬の手に生まれたのは、刃渡り四十センチもない片刃の剣。身幅が広く、鍔も大きい。最大の特徴は、その峰に刻まれた櫛状の凹凸。

 「ソードブレイカー…」

 仮面の下、香宮が微笑(わら)った気がした。

 複数のスタイルを選べるとはいえ、メインとなる武器は一本である。スタイルには区分がされており、メイン、サポート、ガジェットの三種類。メインを複数選んだ場合、それぞれの特徴を合わせたような武器になる。

 逆に、メインとなるスタイルをひとつも選ばなかった場合。それでもサポートとして選んだ武器は発現するし、モノクルなどのガジェットばかりでもその形は現れる。

 ただ“メイン”とされてるのは伊達ではなく、他に比べ攻撃性能が高い。そもそも優馬のブランド“ソードブレイカー”の元は、利き手ではない方に持つ武器である。攻撃力を期待できるスタイルではない。

 それでも、優馬の武器はコレだし、コレで戦うしかない。確かに攻撃力は低いかもしれないが………

 「キミを説得する時間は、まだありそうだね!」

 ─ギンッ!─

 『剣を壊す』という名を冠された武器である。さすがに実際に壊す事までは出来ないが、それでも相手の攻撃を受け、次の攻撃を遅らせる防御に適した武器だ。

 驚いたのは、一応訓練はしたとはいえ、香宮の攻撃にしっかり反応して体が動く事。

 ゲームでは何度も戦闘を行ってきたとはいえ、それはあくまで行動宣言してサイコロコロコロである。実戦で役立つとは思えない。

 戦闘となった時、かなりのケガは覚悟した。以前のような『マスカレーダーかどうかを試す』一撃ではなく、『マスカレーダーに対する攻撃』である。弾けるとは思えないし。

 それが………

 「どうだね?力が欲しくならないか?いや、強力な能力を自由に使いたくならないか!」

 ─ギンッ!─

 見える。どうすればいいか考える前に体が動く。さばき、受け、流し、ときに絡める。なんなら……───

 「ッ!」

 ─ギャリ!─

 反撃すら行える。

 「………キミは特別だよ。在野に埋もれるべきではない」

 足を止め、剣を下ろして香宮が言う。切りつけられた場所を押さえた手。そこには血もにじまず、手を外せば傷口すら残っていない。

 「……そうゆう言葉に心揺れるのが普通なのかもな……」

 ソードブレイカーを倒して構えて。

 (お互いダメージはほぼなし。大技も使ってない。あっちのスタイルから推察すると、必殺2回、防御1回ってとこか……)

 状況を整理しながらも言葉を紡ぐ。

 「でもな、オレの能力とアンタの理想とは別物だ。オレはアンタの手段を否定する。理想への道を否定する。殺そうとして生き残ったから仲間に、なんて都合がいいんだよ」

 「……まだ古い“常識”に捕らわれてるようだね。なら、」

 香宮の構えが変わった。両手で持った剣が、半身の体の後ろに隠れる。

 「一度死んで、考えを改めたまえッ!」

 (来る──!)

 速く、まっすぐな踏み込み。それが間合いに入る直前……───

 ……かろうじて目で追えたのは、移動するという予測と、剣の構えから左に行くという予想から。

 消えたと思うほどのスピードで、香宮の体がスライドする。それはあの公園で切りつけられた時と同じアビリティ。スタイル:ストリングスによる移動だ。

 複数のフィラメントを操るストリングスは、それを操って移動や攻撃の補助に使える。伸ばした先への移動、あるいは周囲に檻のように展開して………

 「…っ!!」

 逃げ場をなくした一撃に使う。

 「ッァアア!!」

 覚悟していたとはいえ、激痛に声が漏れる。無数のフィラメントに切り裂かれ、ソードによる斬撃が腕、胸、肩を深く切り裂く。

 床に倒れ、自身が噴き出した血だまりの上でなんとか体を起こす。

 「まだだ!」

 「……強情だね。普通なら死んでいる。力の恩恵が身に染みただろうに」

 香宮の言う通りだった。腕の傷は骨まで達しているし、胸の傷も致命傷。

 だがそれらも、優馬の意思とは関係なく金属が覆い、あっという間に傷は消えて痛みもなくなる。

 同時に湧き上がる衝動。爆発しそうな闘争本能。それを奥歯で噛み殺し、優馬は立ち上がった。

 「力があるからって何してもいいってわけじゃないだろ。それに、得た力をどう使うかは自由だ」

 失血とオラクル・ウィルスに体を蝕まれる感触に目眩がする。ふわふわとした感覚の中、口をついたのは誰のセリフだったか。ゲームマスターをしていた時にプレイヤーのひとりが言ったセリフだ。

 「その言でいうなら、僕がキミの説得に力を使うのも自由かな」

 (あぁ、ツッコミが入るトコだな…)

 説得とは言葉でするものだと。

 握りしめたソードブレイカーの感触を頼りに意識を繋ぎとめる。かすんだ視界が焦点を戻した。

 「試してみなよ。その力で説得できるか……ひとの心を動かせるか」

 「試すのは、キミが泣いて考えを改めるまでどれくらいか、だよ」

 ─ギンッ!─

 三度の斬撃。

 (クソッ)

 それをさばきながら………こうして反応できるのは、どこかでゲーム的なステータスが作用しているからだろう。能力値的なものがあるなら、たぶん順当な結果と言える。だがゲーム的というのなら、

 (オレのターンじゃないのかよ)

 攻撃は、おおむね交代制のはずだ。こっちの攻撃を待ってくれない、というのは………当たり前だが………そこまで“ゲーム”ではないという事だろう。

 ─ギンッ!─

 それでも、なんとか刃を返す。それこそ何点と出るわけじゃないから、どれくらいダメージが入ってるかなんてわからない。それでも推測するなら、HP70~80に対し合計20~30点くらいはダメージを与えたか。

 さっき防御不可の攻撃を出した香宮の手札は、あと攻撃と防御に一枚ずつといったところ。

 まぁこれも『バランスを考えたなら』であって、そのバランスというのはプレイヤー側がなんとか勝てる事を考えたもの。HPというもの含め、甘えの残る想定でしかない。

 それでも……

 (やるだけやる!)

 振り下ろされる剣を弾き、すぐさま薙がれる剣を受ける。それでも少しずつさばききれなかった攻撃が、傷となり、金属化して体を蝕んでいく。

 「……どうした?“説得”が下手じゃないか、社長サンよ」

 軽口を叩きながらも、ふと視界に入った右手が肘まで硬質化していてぞっとする。頬に感じる違和感も、金属だろうか。

 「思った以上に強情であることは認めよう」

 想定以上の守り、と印象付けたはずだ。攻撃は大した事ない、というのも。

 香宮は、両手で握った剣をかつぐように構えた。

 「それでも、キミが折れる未来は変わらないよ」

 「ッ!」

 圧が増す。一瞬下がりそうになるが、そもそも足が動かない。

 ソードのアビリティ、〈ダウンフォール・ストライク〉。回避ペナルティに攻撃力UP。これが二枚目の攻撃カード。

 (出し惜しみしてたんだ。最後であれよ)

 迫りくる豪剣をにらみ、ソードブレイカーの鍔を左手で握る。

 もともと片手剣であるソードブレイカーの柄は、両手で握れるほど長くない。そもそも両手での運用など想定されていない。だがアビリティとして、両手を使い渾身の一撃で弾き返す、という説明があった。

 〈リバーサル・エッジ〉、こちらの切り札。

 「っぁああああ!!」

 吠える。ソードブレイカーの必殺技は、攻守一体のカウンターだ。

 ─ギィンッ!─

 弾き返したソードの残響を……

 ─ダンッ!─

 優馬の踏み込みがかき消す。香宮のふところへと入り込み、そのままソードブレイカーを振り上げる………その刃に、無数のフィラメントが絡みつく。それは速度を減じ、刃を包み、ついには止める。

 「……惜しかったな」

 ストリングスのアビリティ。これが、香宮の防御のカード。

 「いや……」

 香宮の、その後ろを見つめて。優馬は笑みをこぼした。

 「予定通りだ」

 「……!?」

 黒い髪が軌跡のように。舞うように冬華は………

 閃く斬光は一瞬。

 ……香宮を一太刀で切り伏せた。


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