6.決意しますか?
ピザとコーラという背徳的な夕食後。そろそろ日付も変わろうという時刻。
優馬はこっそりとベランダに出た。秋音は瞬間爆睡の特技を持ってるので大丈夫だろう………寝起きも良いので注意は必要だが。
すこし冷たい夜気を吸い込む。
いろいろと考えたが、どうしても必要な事がある。先延ばしにすると致命傷になるかもしれないし。まぁ好奇心と冒険心も否定できないけど。
「…………」
目を閉じる。気配を探るなんて、ちゃんと出来るかわからない。イメージは………
(〈感知〉の判定)
頭の中でダイスを振る。なにせ頭の中だ。出目は良い。
「………ホンマかいな……」
思わずつぶやく。いまいち信じられないが………道を挟んだビル、その非常階段あたりに視線を感じる。
そのビルの周囲を観察し、最後に視線を感じた辺りにはっきりと目を向けておく。
そして上着を引っ掛け、部屋を出た。
明けて、朝。大きなあくびをしながらマンションを出る。
ぼんやりするのは頭を使い過ぎたせいか。脳みそを絞ったかのような疲労がある。
(授業は頭に入らないだろうな…)
もう一度あくびをしながら歩く。その先に、いぶかしげな表情を隠そうともしない冬華がいた。
(まぁ、そうくるか…)
なにせ昨日の今日。本来なら様子見、あるいは相談。状況次第でさらに深い説明をするとかなのだが。
「おはよう」
「おはよう。連絡は受けてる」
優馬に並んで歩きながら、もはやその視線はいぶかしげというより犯罪の証拠を探るようですらあった。
「キミは………」
聞きたいことはたくさんあるのだろう。逆の立場なら、優馬だってそうなる。
冬華はしばし言葉に迷って、結局………
「私の手には負えないケースだな」
乾いた苦笑いを返すしかない。
この先の展開を想像した結果、どうしても優馬の“シナリオ”を早めておきたかった。そのために昨晩……───
「呼び出した……って事でいいんだよな?」
視線を感じたビルの駐車場。街灯の明かりの輪の中、虫を気にしながら待つこと数分。停められた車の陰に彼は現れた。
といっても、姿は見えない。声から男性ということはわかるが。
ひとつうなずいて、
「……頼みたい事があります」
優馬は、相手の立場を推し量った。
情報と力を得た優馬を見張りに来た、おそらくG.O.のキャバリエ。あまり上の立場でもない………とは思うが。『人手不足のため支局長自ら』なんてのはよくある。それならそれで話は早いのだけれど。
「戦い方、…力の使い方を教えてください」
“アビリティ”と言いそうになった。その言い方は、まだ教えられていない。
「理由は?俺は、おまえの見張りもしてるが護衛も兼ねてるんだぜ」
防御に自信があるらしい。ということは、スタイルにはシールドが入っているタイプだろうか。防御の他、かばったりもできる。
優馬は、
「今日の話を聞いて、自分の状況を考えると………」
という前置きで。実際は『自分がこういうシナリオを作るなら』を語る。
返答は、長い沈黙と………
「……ちょっと待ってろ」
一本の電話の後だった。
パタン、とケータイを閉じた音。ゆっくりと、明かりの中に彼は出てきた。
「混乱して何も考えられないのが普通だけどな。よくそこまで頭が回るもんだ」
トレッキングシューズ、着古したジーンズ、よれた革のジャケット。歳の頃は30~40。髪はオールバック………ではなく、後ろで結んでるらしい。ほどいても、それほどの長さはなさそうだ。
優馬より頭ひとつは高いのではないかという身長と、絶対スポーツをやっていただろうという体躯。暗闇から現れたこともあり、獣のような威圧感があった。
「おまえさんの危惧はもっともだ。理屈も通ってる。なら……教えるしかないな、戦い方を」
笑みを見せたその口元に牙が見えたような気がして。
おとなしく待ってれば、冬華にレクチャーしてもらえたのかもと後悔した。
「それで、成果はあったのか?あの人からレクチャーを受けたのだろう?」
“あの人”と、冬華は名前を避ける。
聞いてないし、今は言えないと言われてる。味方になるかわからない状態の優馬には教えたくない、という事だ。
ゲーム的にいうならコードネームはあるだろうから、それならかまわないんじゃないかとも思うが。
「ブランドと体の動かし方くらいだけど……まぁ、なんとか」
その答えに、冬華は『ほぅ…』と驚いた。
ブランド……武器を出すのは初歩の初歩である。これにつまづいては話が進まない………というのはシナリオの都合だけど。
難しいっていう設定はなかったよなと記憶を探ってると、
「強化された身体能力についていけない、というのが最初のハードルだ。一晩で形になるのなら………展開の読みといい、キミは特別かもな」
(言われてみれば……)
読みや情報は、元の知識があったから、で済む。だが身体能力は別だ。
体育の成績は悪くなかったが、スポーツに打ち込んでいたわけでもない。マスカレーダーとしての身体能力には、確かに最初は戸惑った。
一歩踏み出したつもりが三歩分、ちょっと跳んだつもりで宙返り、など。いきなりマウス感度を上げて操作した、とでも言えばわかりやすいか。それでも………
(まだこんなものじゃない………だから慣れられた……)
そんな気がする。
まぁ、それを言えば冬華に人外を見る目で見られるかもしれない。マスカレーダーの時点で人外に足を踏み入れてるのに。
「こちらとしては是非スカウトしたい人材だな。追加の情報開示も含め、接触は早いだろうから考えておいてほしい」
スカウト……G.O.に所属となれば、冬華と同僚ということになる。それはとても魅力的だ。
(うるおい……高校生活にうるおいが出る)
オラクル・ウィルスという世界の秘密とセットだが。
今日だって、はたから見れば仲良く登校しているように見える………
(!?)
なにげなく歩いて来てしまったが、女子と二人で登校、である。
引っ越し前に憧れて、二秒で諦めた夢が実現している。そこに恋愛感情がないことなど、今はささいな問題でしかない。たとえこのあと………
「それでは、またな」
教室の前で別れ…た瞬間に。
「どぉーゆぅーことだぁ!?」
物部に連行され、さらには言葉も交わしたことのない男子に囲まれて椅子に座らされても。
この囲みを抜けることなどたやすい力があるから、ではないところで、優馬の心には余裕が生まれていた。
針のような(一部女子からも?)視線を感じつつ、答える。
「俺の口からは、なにも。彼女の言うことが真実さ」
「方向同じだったから声かけただけだってよ~」
情報はあっさり、廊下付近の女子からもたらされた。どうやら冬華も『取り調べ』を受けたらしい。
『なんだ』や『それでもうらやましぃ』といった感じで囲みは解けた。
「なにを話した。どのていど話した」
物部をのぞいて。
「それよりおまえ……ケガは平気なのかよ」
暗い目でこちらを問い詰める彼の頭には、大きなガーゼがネットで留めてある。
「………ツイてないとか言われたよ。ってか、礼を言わなきゃな」
謎の男に切りつけられたところを助けた………なんて言えるわけもなく。“デュエル・コート”で記憶がないのをいいことに、朽ちて落ちてきた枝に当たって気絶した、という事になっている。
「救急車呼んでつきそってくれたらしいな。そっちの病院はどうしたんだ?」
「事情話したら俺も受け入れてくれた。検査も受けたし……転院だよ」
「頭部負傷転校通院仲間か。美人の女医さんいたけど、そっちにも手出したら縁切るからな」
「“も”ってなんだよ、“も”って」
「“も”は“も”だよ。半井さんとなにを話した、どのていど進んだ」
せっかく逸らした話が戻ってきてしまった。
色々聞かれても困るのだ。彼女との話は、ほとんどが『話せない話』。ひとに漏らすわけにはいかないが、気になるのもわかる。自分が逆の立場だったら……いや、ここまでしつこくは聞かないか。
「………………コーヒー紅茶より緑茶派だな、彼女は」
それでもひねりだした情報を、
「つまりはそーゆう誘いをするかしたんだな?キサマは」
「傷に障るから、あまり興奮しない方がいいぞ」
「ぅやかましい!」
冬華の言葉通り、『接触』は早かった。
一時限目、全校レクレーションとやらのため体育館に向かう途中で冬華に引っ張られ、人目を避けて校舎裏。建物と枯れかけたような生垣に挟まれた3、4メートルほどの空間に、昨日レクチャーを受けた男性と、もうひとりが待っていた。
「はじめまして、日立優馬クン」
「………はじめまして」
かろうじて挨拶を返す。
声をかけてきたのは、同年代の女子だった。制服である黒のセーラー。やや小柄だ………まぁ、なんというか、一部を除いて。ハニーベージュの、ややクセのあるショートボブと、丸い瞳からどことなく小動物っぽさを感じる。学年はわからないが、印象だけでいうならば『かわいい後輩』といったところ。
だがこの状況で現れるのだ。というか、予想してしかるべきだったかもしれない。
G.O.は各地に支局を持ち、それぞれに支局長がいる。この支局長、プレイヤーに任せる場合、作成されるキャラにはひとつの傾向がある。
すなわち、頭脳系スタイルの十代女子。
ここで現れたのだから、当然彼女は………
「あたしは“神格の瞳”。コードネームだけど勘弁してね。いちおー、この辺りの代表的な立場だから」
支局長、という事になる。冬華たちの上司だ。距離を置いたまま、彼女は下から優馬の顔をのぞきこむような上目遣いをみせた。
「さっそくだけど、キミの指摘に関してはあたしも同意見。当然調べてはある……んだけどね、」
指摘というのは、昨晩話した『展開』についてだろう。優馬を襲い、物部に傷を負わせたフードの男の正体についてだ。
「結論から言えば、黒に近いグレー。資金集めや能力に怪しさはあっても、とってもすごいヒト、とも言えちゃう。ぴったりマークできればいいけど、ウチもそんな人材豊富じゃないから」
人手不足はG.O.永遠の課題だったりする。そもそもが秘密組織だし、オラクル感染者は多いが発症………マスカレーダーの数は決して多くない。しかも大半は力に呑まれ、ローグとなる。
評価と値踏みをされてるような気分で、優馬は別角度のアプローチについて質問する。
「転校組の方はどうです?共通点はありましたか?」
「かしこまらなくていーよ」
どことなくコビられてるような態度にムズがゆくなる。都会の子は、初対面でもこんな距離を縮めてくるのだろうか。
「そっちは問い合わせ中。それなりの人数だから時間かかるよ。あと………」
どこからかネコ耳の飾りのついたカバーのスマホを出すと、近付いて画面をこちらに向けた。映っていたのは電話番号。
「遠くからだけど、見張りを付けといた。なにかあればキミのトコにも連絡が行くよ。とりあえず、これでいいかな?」
番号を覚えつつ………見張りを付けてくれた事も含め、しっかり対応してくれた事に感謝する。ピラミッド構造とはいえ、末端の判断を軽視せずある程度の権限を持たせてるG.O.だからこそ、か。
うなずく優馬に、彼女はさらに距離を縮めた。
「で、こっちの番だけどぉ……」
瞳をのぞき込まれる。いや、優馬がのぞいているのか。反らす事を許さないような引力がった。
「………」
(ディバイン・サイトか……)
彼女のコードネームを思い出して身構える。
おそらく彼女のスタイルは“モノクル”。感知、頭脳系のスタイルで、武器を出して振り回すような直接戦闘力はない分、情報収集・分析の分野で活躍する。
(感覚強化もあったよな…)
つまり嘘は見抜かれる可能性がある、という事だ。こちらの隠ぺい能力次第になるが、下手にアビリティを使えばアビリティを使った事がバレる。隠そうとしたモノがわからなくても、隠そうとした事がバレる。
「ユウマくんは……」
慣れない名前呼びに、地元では見なかったようなスタイル。いやマスカレーダーとは関係ない意味での“スタイル”。気のせいか、湿った空気の中に甘い香りさえ混じってるように感じる。
アビリティ以前に、それ以上近付かれたらコロッ、といってしまいそうだ。色仕掛けなんてシチュエーション、判定は何度も経験してきたが、リアルだと自分の心次第というがなんとも………。
泳いだ視線の先に回り込んで。というか、それほどまでに近付いて。ニヤつきながらの質問は、
「冬華ちゃんのこと、どう思ってる?」
「…へ、は?」
不意を突かれたのは優馬だけではなかった。
「ハル!」
黙って見ていた冬華が声を上げる。
(あ、“はる”っていうのか)
思わぬ形で名前を知ったが。
「ウチの子カワイイでしょ?今ならちょーぉっと同意するだけで深い仲になれまっせ?」
「いや深い仲って組織の同僚ってことだろ?そりゃ二人だけのヒミツとか出来るけどイヤ二人だけじゃないし」
「じゃぁあたし?やさしくしてくれるならそれでもいいケド」
「なんの選択肢でなんの誘いだよ!」
脊椎反射のようにツッコミを入れて。それでもなお喋ろうとした“ディバイン・サイト”改めハルは、
「あピ!」
冬華に制服を引っ張られ、退場した。
「……………」
「なんか……いろいろスマン」
「あ、いえ…」
見送った優馬に、入れ替わって前に出てきた………まだ呼び名を知らない男性が頭を下げる。
革の上着にジーンズと、服が替わってないのは………昨夜優馬が呼び出したせいだろう。
「言い方はアレだったが、お前さんをスカウトしたいって意味だ。組織は人手不足で………特にマスカレーダーは、いくらいてもいい」
そのあたりは想像通りらしい。そして所属自体はやぶさかではない。さきほど特典みたいな事も言ってたし………
と、ついよぎった思考が顔に出たのか、
「言っとくが、妙な期待はするなよ?」
スゴまれた。さきほどまでは冷静な大人だったのに。
ハル以上に近付いて(嬉しくない)、
「あいつは立場こそ支局長だが歳はまだ若い。そもそも冬華が声を掛けたのだってなぁ……───
「アラシさんまでそちらに行かないで」
「うクッ」
後ろのちょんまげを引っ張られて言葉が止まる。
「本当にすまない」
「あ、いや…」
今度は冬華が前に出る。
というか、名前をすべて冬華がばらしてるが………
「キャバリエ……所属マスカレーダーの少ない支局でな。最年長のアラシさんは責任を感じる所もあるのだろう」
(責任というより保護者のような雰囲気だったような……)
娘の男友達を値踏みする父親のようだった。
少し照れた様子の冬華というのももう少し見ていたかったが………いや、見て見たかったから、か。そちらにもツッコミを入れる。
「………さっきから名前、言ってるけど。いいの?」
「…………………キっ、キミが所属してくれれば問題ないっ」
声が裏返った。すこし焦点をずらせば、下がった二人がジト目を向けているのが見えた。
……まぁ、仲が良さそうなのはわかった。というか、こういうノリは、なつかしくもうらやましくもある。
「えぇー…っと。所属についての条件や義務があるなら教えてほしい」
優馬としては、もう答えは決まっている。だが確認と、なにより『知らない』事をアピールするためにも聞いておかねばならない。
「それについては、あたしが」
ぴしりと手をあげ、ローテーションのようにハルが出てきた。乱れた襟を正して、ぴっと指を立てて説明を始める。
「組織の名称は最後ね。秘密保持とケース・オラクル………ローグ含むオラクル・ウィルス関連と思われる事件、事故の解決や対策が所属した時の義務。というか、業務内容ね。条件は、精神論みたいなものだからダイジョーブ」
(たしか……)
“騎士団”の名の通り、規範みたいなものを掲げていた。だが、違う理想を掲げるからといってクビに出来るわけもなく。それぞれがそれぞれの理想とプライドで剣を握る………と、ルールブックに書いてあった。
「所属しない場合は?」
「「……」」
空気が硬くなる。それでも、ここでこれを聞くのがお約束だ。
「監視対象になる。秘密をばらさないか、ローグ化しないかを監視しなきゃいけないから」
淀まず答えたハルはさすがだ。下手に沈黙を挟めば誤解を招きかねない。
ゲームマスターとして、優馬も答えてきた内容だ。だから予想はついていた。それでも聞いたのは、
「……あたしとしては、本当に所属してほしいと思ってる。強力な戦力になるって打算もあるけど、秘密を話せる仲間を作ってほしいと思ってるから」
こういうやりとりは、醍醐味のひとつだろう。
(いや、TRPGのだけど)
戦闘特化のシステムでは難しい、心情の強く出るロールプレイ。いやこれは現実っぽいけど。だからこそ、か。ちゃんと聞いておきたかった。
ともあれ、ハルの初めて見せたシリアスなトーンと表情。それは……
「それに……」
一瞬で崩れた。
「所属だけしてほぼサボる、幽霊局員になった方が面倒なくていいよ。局内の風当りは強くなるけど]
「それをあんたが言っていいんかい」
これにも脊椎反射のようにツッコミが出たが、笑うハルを見て慎重過ぎたかと思う。
TRPGなら、プレイヤーが操るキャラクターか、ゲームマスターの出すNPCかというのはわかっている。プレイヤーのキャラクター同士ならばそこまで疑う必要ないとわかるから、ある程度はお約束の流れだけですっと飛ばせる。
でも現実に、目の前に一人の人間として現れると………こんな状況だし、即決とはいかなかった。
(G.O.所属がベストだ…)
オラクル関連の組織はいくつかあるが、規模、内容ともにG.O.がベスト。それをもう一度頭の中で確認し、優馬はうなずいた。
「わかった。今後の事までは約束できないけど、少なくとも今回の件はオレも関わってる。こっちから協力を頼んだこともある。所属して、この件の解決を目指す」
「うん、」
言った優馬の右手を、ハルは握った。
「一緒に、ね」
ソード、ランス、レイピア、シールド、ライフル、ストリングス、スタッフ、モノクル、カタナ。
これらが『シン・ライン・シヴァルリー』基本ルールブックに載ってるスタイルである。この中から1~2種選んでキャラクターを作っていたが、追加ルールブックが発売され、今ではスタイルも12種、取得も最大3種までとなっている。
(ま、“今”が通じるかわからんけど)
ぎしり、と椅子の背もたれに体重を預けて天井を仰いだ。白い天井には、監視カメラを隠した小さなドームがある。
優馬が所属を承諾したあと。ハルは『学校の方はうまいことやっとくからー』と、診療所へとつれてきた。物部を搬送した診療所である。
どうやらここが、この地域におけるG.O.の支局らしい。以前通された部屋とは別の、パソコンのある部屋に通された。そして、
「データに目を通しておいて。その間にいろいろやっとくから」
扱いが雑になったというより、優馬自身が最優先事項ではなくなったという事だろう。人手不足は本当のようだし。
(オレが動ければな…)
知識はある……と思われるが、手順がある。知らないはずの事を知っていては怪しまれるし、その疑いを解いてる時間も、解ける自信もない。
ただ優馬の読みでは、
(何もしてなかったら明日)
もう一度くらい接触してから、コトを起こす。
だが昨晩、優馬は行動を起こした。それがバレているかはわからないが、どんなに前倒しにしたって今日の午後だろう。
それにしたって“見張り”はつけてもらった。あのフード男がまた優馬を襲いに来るかも、という事で、このあと訓練もしてもらう。体の動かし方より進んだ、武器やアビリティを使った訓練を。
大丈夫………のハズだ。
失敗しても、ゴメンやもう一回が効くTRPGじゃない。誰かが傷付くかもと思えば緊張もする。誰かを倒さなければならないと思えば、なおのこと。
ルールブックと違いがない事を確認しながら、画面をスクロールして。サプリ分もある事を確認した。
(ま、そうだよな)
他ならぬ優馬のブランドがサプリのものだった。どこまでのアビリティを取得しているかはわからないが、予定通りで大丈夫………
(……だよな?)
どこかで確かめておきたい。ぶっつけ本番、それまで秘密、というのはカッコいいけど、そんな博打は打ちたくない。それに、そんなのが成功するのはフィクションかスターだけだ。
だが、回数制限のあるアビリティというのがある。それがどういう風に表現されてるかわからないが、メタライゼーションが進む技でもある。練習と言ってぽんぽん打つ事もできない。
結局は、ハルたちを信じ、出来る範囲を確かめて。万全と思える準備をして備えるしかない。
それでも、おとなしく展開を見守るつもりはない。自分や家族の危険がかかってるというのなら………
(シナリオの、斜め上だって行ってやる)




