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メタ読みしてもいいですか?  作者: 矢玉


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4.踏み入れましたか?


 昼過ぎの公園には、さわやかな風が流れていた。葉の擦れる音に混じり、どこからか鳥の声が響く。

 改めて見れば、所々にベンチが設置されているものの雑草は目立つし、木陰と言えば聞こえはいいが茂りすぎているせいで薄暗い。

 整備された公園というより、遊歩道が広がって公園も兼ねている、といった印象だった。

 昨日とは違う入り口から、線路沿いの道を目指す。

 『公園から家までの道はいいのか?』と聞いたら、

 「それは最後の手段だ」

 それは家が近い事を意味するので、物部としては否定しておきたいらしい。

 複雑な男心………まぁわからないでもない。というか、

 「すでに仲良くなった女子くらい、いるだろう」

 「知らんか、分母の法則を」

 仲良くなった女子については否定せず、怪しげな理論を展開する。いわく、

 「俺という男とマッチする可能性を1%とした場合、10人の中にマッチする人がいる確率は低いが100人と知り合えば一人はマッチする可能性が100%」

 「…………。」

 色々間違ってるが、言いたい事は理解した。だが、

 「分数で言うと、分母を増やしたら確率下がるぞ」

 「…、!」

 一瞬沈黙、そして『あっ』という表情。

 ばかかな、コイツはとも思ったが………頭の良さとは直結しないのが学校の成績だったりするし。少なくとも、コミュ力と情報収集力はあるようだし。

 「あぁ、そういやちょっと聞きたいんだけど……」

 ちらりと思った、昨日のアレがオカルトである可能性。妖怪、心霊現象の類ならば、他の目撃例もあるはずだ。

 「この公園でさ……」

 クラスメートとのくだらない会話。そんなものですっかり“日常”なんてものを感じてしまったせいか、警戒心は薄れていた。やはり『ありえない』という思いが強かったのだろう。けれど……───

 「っ!!」

 ぞくり、と肌が粟立つ。景色が反転したかのような錯覚。思わず見回せば、物部は感情の色が失せたように棒立ちに、そしていつの間にか道の先には………

 (フードの男……)

 幻覚?じゃあ物部の状況は?通り魔?だとしても、鳥の声さえ消え去るようなこの異様な空気をなんとする?

 混乱する優馬の前で、男は……

 「……」

 「!?」

 なにかつぶやくと、その手に“剣”が握られる。

 その後は、昨日と同じだった。まばたきひとつで距離を詰められる。違ったのは……

 「…こちらはまだだったな…」

 狙いが、優馬でなく物部だった事。とっさに……───

 (腕…いや、切られるッ)

 出たのは脚の方だった。男を蹴り飛ばす。だがわずかに遅かった。

 「物部っ!」

 人形のように倒れる彼を、服をつかんで引っ張る。その額からは鮮血が吹き出し………それでも傷口が見えるくらいには浅い。

 そんな状態になっても、物部は無反応で。その異常さにぞっとする。

 「……いい反応だ」

 押し殺したような、低い声。数メートルの距離は離れたが、今日は消えてくれなかった。

 フードの下、確かに冷たい光りを宿した瞳と目が合って………一瞬のうち、いろんな考えが巡る。

 警察?来たとして何分かかる。なにか武器は……あったとして、“剣”を持ち一瞬で距離を詰める相手に対抗できるか?だとしたら切られるしかないのかイヤ昨日は弾いたはずそれが今回も発動すれば………

 出した結論は、シンプルだった。

 「なにが目的だ」

 会話による時間稼ぎ。本当は警察への連絡もしたいが、そんな素振りを見せればすぐに切られるかもしれない。

 「………招待だよ」

 (乗ってきた──!)

 あとは舌先三寸、時間を稼ぎつつ隙をみてケータイで連絡を………

 「招待って……───

 「詳しくは、彼も試してからにしようか」

 (おい、会話には付き合えよ)

 物部へと向かってくるフード男に、仕方なく間に体を入れる。けれどどこか冷静な部分が、あの“剣”なら二人とも真っ二つだな、なんて……───

 ─キンッ!─

 その音を聞いた時、また自分が防いだと思った。が、実際は、

 「彼の傷口を押さえ、少し待っていてくれ。すぐ片付ける」

 ふわりとひるがえるスカート。こんな時でもきれいな脚につい目が奪われる。

 「混乱してるだろうが、今は私を信じてほしい」

 ─キン!!─

 刀を振り上げ、受け止めた剣を押し返す。すかさずふところに入り、フード男をさがらせていく。

 「…ジー・オーのイヌが」

 「ただのイヌではないぞ。確かめてみるか?牙の鋭さを」

 構えの変化。だがほぼ同時、ひとつのバックステップで大きく距離を取られる。

 「それは別の機会に取っておくよ」

 追いかければ、もう少し情報を得られるかもしれない。それを理解した上で、彼女は踵を返した。

 優馬と物部のもとへと来た冬華は、片手にハンカチ、片手にケータイを取り出していた。

 「これで傷口を押さえて。手配は私がする。すまないが、少し付き合ってほしい」

 既視感を覚えつつ。

 半井冬華の提案に、優馬はうなずくしかなかった。


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