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メタ読みしてもいいですか?  作者: 矢玉


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2/11

1.目覚めますか?


 ぼんやりとした視界が、ゆっくりと像を結ぶ。何度かまばたきをし、それが白い天井と………

 「優馬!」

 我が親ながら、年齢不詳な母・秋音の顔だとわかった。切り揃えられた髪の向きから、自分が仰向けで、覗き込まれているらしい事も。

 「大丈夫?痛むところは?」

 言われて、体の感覚も戻ってくる。トレーナーは脱がされて………

 (うぉっ。脱がされてる)

 ジーンズも脱がされていた。布団をめくって確認すれば、浴衣みたいな入院着。痛みは脇腹と、脚に少々。

 「なにが……、ここどこ?」

 起きようとした体を押さえつけられる。

 「お母さんの務めてるビルのクリニック。車にはねられたって」

 ナースコールを押しながら言われて………そういえば、最後の記憶は迫りくるトラックだった。

 (あれで助かったのか、俺)

 しかもほぼ無傷っぽい。そうとうな悪運と思われる。

 「もうちょい詳しく……ってか、今何時?」

 「もう夜よ。あとで説明してあげる」

 医師と看護師が現れて、逆にこちらが質問される。名前と誕生日だの、体についてだのを戸惑いながら答えつつ、それでやっと自分の傷を把握した。

 脚の擦り傷、ハデに転んだくらいのもの。同じく、額に傷と腫れ。脇腹にはアザが出来てた。

 (結構ないきおいで向かってた気がするけどな……)

 ケガの度合いに不満があるわけではないけれど。この程度で済むような衝突だったとは思えなかった。

 首を傾げていると、一度廊下に出ていた母が見知らぬ男と一緒に戻って来た。歳の頃は三十前後。ひと目で高級とわかるスーツ、ツーブロックのさわやかな顔立ち。おまけに高級そうな腕時計。

 ヤなヤツだ、と断じて。でもそれを顔には出さずに、目だけで秋音に尋ねる。

 「このビルのオーナーで、ユニバーサル・リサーチ社長の香宮(かみや)さん。あなたをここまでつれてきてくれたのよ」

 だからしっかりお礼を言っときなさい、と言外に念を押される。

 「それは……ありがとうございます」

 母の務め先の社長でもあるならば、それはもう上げる頭がみつからない。

 「いや、偶然近くに居合わせただけだよ」

 「ですがここの手配や相手への対応までしていただいて……」

 「敷地内だし、事故を起こしたのはうちに来ている業者だったからね。業務の範囲とも言えるから」

 謙虚とお礼が折り重なるオトナな会話でも、聞いていれば少しは事態の推測が出来た。

 このビルに納品に来ていた業者がサイドブレーキをかけ忘れ、そのトラックが優馬の方へ突っ込んできたらしい。救急車も呼ばれたが、目の前のビルにはクリニックがあり設備もある程度整っている。オーナーが仕切りをしていれば、そりゃクリニック側は協力するしかない。

 事故を起こした業者側も、オーナーが間に立てば『おっしゃるとおりに』と言った態度らしい。そもそも百パーセント運転手の責任で、あとはもうケガの度合いで賠償額が決まるだけ、といった具合だし。

 去るタイミングを計っていたのだろう。医者が後日の来院を告げて出て行った。残った香宮は、

 「しかし優馬君のケガが軽いようでよかったよ。違和感とかはないのかい?」

 「はい」

 じっとしてれば忘れられるほど、痛みは軽い。

 「そうか。まぁ今日は安静にしていた方がいい。まだ春休みだろう?」

 「明後日始業式です」

 「無理はしないようにね。日立さんも、社の仮眠室で良ければ泊まっていくといいよ」

 その言葉に思い出す。そもそも優馬がここまで来たのは……

 「あ、荷物」

 秋音の『帰れないグッズ』を届けるためだ。だが優馬が持ってた鞄などは………

 「………」

 秋音に目を向けると、小さく首を横に振る。当然、ダメか。

 その様子を見て察したらしい香宮は、

 「ビジネスホテルで良ければ近くのを手配するけど?」

 「いえ、他にも必要な物があるので帰ります」

 「ではタクシーを手配しよう」

 ふところからスマホを出すと、こちらの返事も聞かずに操作し始める。慣れた手つきとスマートな仕草。おそらくタクシー代もこちらに払わせる事はないだろう。

 非はないのに、香宮へのヘイトが上がる優馬。

 「じゃあ帰るけど、明日また来るから」

 秋音が荷物をまとめつつ告げる。

 (正直すぐ帰ってもいいけど……そうはいかないんだろうな)

 仮にも車にはねられたのだ。どうせ入院費は相手持ちだろうし、少しは入院体験というのをしてみても………と、気付いた。個室だ。しかも結構広い。

 「タクシーはすぐ来るそうだよ。それと………」

 優馬と目が合う。なにかと思えば、

 「下のカフェに言ってなにか作らせよう。なにがいい?」

 言われて、空腹に気付く。カフェのメニューなどわからないので、適当にと言ったら、

 「それじゃあ。日立さん、下まで送りましょう」

 「じゃあ優馬、明日ね」

 十分ほど後、トマトリゾットのふわっとろオムライスが届いた。ハーブティーも添えられて。

 香宮の気の回りっぷりに、文句の付け所がなくて文句を付けたくなってると翌朝、新しい着替えと鞄まで届いた。

 金持ちで気配り出来てさわやかなイケメンだと?

 (………ヤツは、敵だ……)


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