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魔王と魔法使いはかくて勇者を殺し、世界を破滅へと導いた  作者: 変愚の人
第5章(皇都テルモン編)
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第34-1話


朝起きて、私は思わず唇に触れた。……昨晩のことは、夢だったのだろうか。

ほんの数秒、触れあうだけのキス。でも、その暖かさが、まだ唇に残っている気がした。



……「俺だけは、お前に向き合ってやる」、か……



どこまで本当かは、分からない。でも、それを信じるしかない。

そして、真実は私が見極めないといけない。過去から目をそらすのは、もうやめないと。



ノックの音がすると、ナイトハルトが入ってきた。


「お目覚めかな?」


「入っていいとは、言ってません」


「失礼、ただ今日は急いだ方がいいのでね」


「え」


ナイトハルトから、笑みが消えた。カーテンの隙間から見える外の風景は、まだ暗い。


「『追憶』で10年前の『記憶』を思い出し次第、ジークポリスに向かう。そして、『ム=カイ遺跡』を開いてもらう」


「なぜ、急ぐのですか」


ナイトハルトの顔が険しくなった。


「……善は急げ、と言うだろう」


「『善』、ですか」


「そうだ。既に準備は済ませている。着替えて下に来い」


……何かを焦っている。あれだけ余裕を崩さないナイトハルトにしてはおかしい。


私は起きて、急いで眼鏡をかけた。


#


下の広間には、既に兵士が揃っていた。……今日はエリックの姿も見える。彼と一瞬視線が合ったけど、すぐに外された。

ナイトハルトが、金の甲冑姿で現れた。アウグストも、グロンドを持って付き従っている。


「夜明け前に済まないな。至急、行動を開始したい」


「閣下、何故急がれるのか、理由を」


アンソニーというホビットが手を挙げた。


「詳しくは言えない。ただ、予定を巻かねばならない。遅れれば、それだけ討たれる可能性は高まる」


「……なるほど」


……誰かに狙われている?昨日は「シェリル」の手の者が来ていた。やけにあっさり引き下がったと思ったけど……事情が変わった?


「諸君には、有事の際に彼女を守ってもらいたい。『追憶』の完了までは数時間。最初よりはかからないはずだ。……そうだな?」


私は頷いた。いつ事件が起きたか、正確な記憶がなかった昨日と違い、今日はいつまで戻せばいいかははっきりしている。その分、多少は楽だ。


「宜しい。朝の9の刻頃までに終わっていれば理想だ。ずれ込むほど危うくなるからな。ここでこうしている時間も惜しい。……アウグスト、頼む」


「御意」


アウグストが「グロンド」を構えた。光が放たれたと思った次の瞬間、視界は切り替わる。目の前には、あの公園があった。


「ご苦労。しばらく休んでくれ」


「全く、人遣いの荒い」


「そういうな。全てが終わってから、然るべき『報酬』を支払おう。……やはり、まだいないな」


時刻は朝の5の刻を少し過ぎたぐらいのはずだ。初夏だけど、まだ日は上っていない。薄闇の中、私は詠唱の準備を始める。


「殺害後まで行ったら声を掛けてくれ。トンプソン卿とミハイル・コバレフが何を話していたかを、まず把握する」


「はい」


ナイトハルトは、そのまま退いた。公園を囲むように、彼の私兵とエリックたちが監視を始める。



……真実と向き合わないと。小さく呟き、私は「追憶」を発動した。




(今回の設定紹介はお休みです)

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