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魔王と魔法使いはかくて勇者を殺し、世界を破滅へと導いた  作者: 変愚の人
第4章(ヘイルポリス編)
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第30-6話


「で、どうするかな?」


アリスが去った後、ナイトハルトが槍を小さくして言う。


「……どうするとは、何だ」


「決まっているだろう?プルミエール・レミュー嬢のことだよ。さっきの話は終わっていない。

私が彼女を欲しているもう一つの理由は、もう理解できただろう?彼女の記憶を取り戻し、『ム=カイ遺跡』への道を開く」


「断ったら?」


「君たちをこの場で殺し、彼女を連れ去る。もちろん、ヘイルポリスも占領させてもらう。

カール・シュトロートマンは厄介だが、所詮彼一人でできることは少なかろう。大人しくしていれば、兵は引こう」


ナイトハルトの余裕は本物だ。僅かな油断があったとはいえ、アリスとこいつとの力量差は確かにあった。

俺一人なら、あるいは何とかなるだろう。ただ、「加速アクセラレーション」は使い勝手が決して良くない。「10倍速」以上を使えば、周囲に被害が及ぶ。


「エリックは、どうなるんですか」


プルミエールが声を絞り出した。


「ん?」


「彼にも利用価値がある、そうあなたは言いました。ならば、私があなたと一緒に行くのなら……彼も生かしてもらえるのですか」


「プルミエールッ!!!」


思わず声が出た。それは……ダメだ。


「俺のことより、自分のことを考えろっ!!本当に、それでいいのか!?」


「私なら、大丈夫。それに……もともと、記憶は取り戻さなければいけなかったもの」


「フフフ……なかなか麗しい愛情だな。心配は無用だ、君を生かすなら、彼のことは不問としよう。

というより、彼にも『ム=カイ遺跡』の発掘に協力してもらう」


「え」


「何??」


ナイトハルトが口の端を上げた。


「発掘には、有力な冒険者が必要なのでね。私自らが行ってもいいが、貴人自らが危険に身をさらすのは、さすがに立場上よろしくないのだよ。

こちらの精鋭数人と君とで、深層に赴いてもらう。あの目障りなミカエル・アヴァロンを殺してくれたことの礼の意味もあるのだよ」


「……さっきアリスが言っていただろう。深層にある『何か』を目覚めさせることは、世界の破滅に直結すると。発掘の狙いは何だ??」


「あの遺跡は等級『3』ということになっているが、私の見立てでは最低で『4』、あるいは『ガルデア遺跡』に匹敵する『5』の可能性もあると見ているのだよ。

つまり、この世を一変させる『秘宝』が存在する可能性が極めて高い。アリス・ローエングリンが言っていた『未来を知れる』秘宝のようなものがあれば、世界は大きく変えられる。テルモン皇国の治世も、より盤石になろうというものさ」


「……もし発掘に成功した暁には、俺を何かの理屈をつけて処分しようという肚か」


「さあ、それは君の貢献の度合いにも依るな。安心したまえ、事の正否に関わらず、レミュー嬢の命は私が保証しよう。

ローエングリンが言っていた『2人目』にさえ手を付けなければ問題ないのだろう?」


俺は唇を噛んだ。選択の余地は……ない。


「……エリック」


プルミエールが涙目で俺を見る。……このまま、ナイトハルトの言う通りにするしかないのか。



……いや、一矢は報いれるかもしれない。



「いいだろう、だが一つ条件がある」


「ほう?」


「俺たちに協力してもらいたいという奴が、多分数日後に来る。それまで、発掘は待って欲しい」


「よろしい、人手は多ければ多いほどありがたいからね。その代わり、行動は全てこちらの管理下に置かせていただく。シュトロートマンの一派と組んで反乱でも起こされてはたまらないからね。その人物の名は?」


「シェイド。もう一人、デボラという女も一緒のはずだ」


視線をクロエにやった。少し驚いたような顔をされたが、すぐに頷いてきた。

多分、明日か明後日にはシェイドたちが俺たちを追ってヘイルポリスに来るだろう。彼らと合流さえできれば……状況は幾分マシになる。


「よかろう」


ナイトハルトは2人のことを知らないようだ。俺は安堵した。


「ならば交渉成立ということだな。兵は約束通り退こう。シュトロートマンに『命が延びたな』と伝えておいてくれたまえ」


プルミエールが不安そうに俺を見る。俺はもう一度「大丈夫だ」と小さく告げた。

ナイトハルトに彼女を汚されるのは、正直に言えば耐えられない。


だが……生きてこそ浮かぶ瀬もある。


俺は拳を握り締める。血が掌から滲むのが分かった。


#



皇都でプルミエールに残酷な真実が突き付けられることを、この時の俺たちはまだ誰も知らない。




(今回の設定紹介はお休みです)

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