表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王と魔法使いはかくて勇者を殺し、世界を破滅へと導いた  作者: 変愚の人
第3章(ロックモール編)
57/92

第26-8話



ぐしゃり



エリックがアヴァロンの頭蓋を踏み砕いたのが見えた。巨大な幹は白い石のようになり、既にさらさらとした砂になり始めている。


「エリック!!」


「もう、大丈夫だ……」


はぁはぁと、肩で息をしている。彼の元に走り、崩れそうになっているのを支えた。


「本当に、大丈夫なの」


「かなり、無茶をしたが、な。……あいつらの、後を追う……」


近くで、何か動く気配がした。……白髪になり、枯れ果てたようにしわくちゃになっている、エストラーダ候だった。


「えっ」


「……君、たちは」


枝に寄りかかり、手を伸ばそうとしている。……意識があったんだ。


そしてようやく、私はエリックの意図を正確に理解した。ああそうか、ファリスさんのアミュレットの欠片は、彼の記憶を呼び戻すために使われたのだ。

あの混乱の中、言われるがままに「追憶」を掛けていたけど……とすれば。


「エリック、逃げないとっ」


「いや、もうエストラーダに、そんな力は、ない。それに……」


小さくエストラーダ候が頷いた。


「ファリスは、逝ったのだな。自らの、意思で」


「そうだ。怪物になり果てた自分を、知られたくない、と」


「……私にも責任が、ある」


「え?」


エストラーダ候が苦笑した。


「アヴァロンが、ネリドと私の前に現れたのは……1ヶ月と少し前、だ。その時、私は……クーデターの計画を、持ち掛けられていた。そして、君たちの排除も。

それに向けて、隠密裏に動いてもいた。思えば、アヴァロンは……あの指輪のことも、知っていたのだろう。そして、計画を知ったファリスが、どう動くであろうかも……グフッ」


「エストラーダさんっ!!」


「もう、いい。寿命が来ているのは、分かる。それに、ファリスの想いも知った……これ以上の殺戮を犯さずに、済んだ……アヴァロンは」


「死んだよ。俺が殺した」


満足そうに、彼は微笑む。


「……そうか。アヴァロン大司教からは、ファリスの居場所を、君らが知っていると聞かされていたが……私は、いいように使われていた、わけだな」


「ああ。だが、落とし前はつけさせた」


「そうか……プルミエール君、だったな。……これを」


胸に刺さっていた金属の欠片を取り出すと、エストラーダ候は穏やかな声で私に言う。


「ファリスのことを……忘れないでくれ。もう、君だけが……彼女と心通わせた人間、だ」


「……はいっ」


目から涙が溢れ出す。……ファリスさんは、エストラーダ候には普通に生きていて欲しかったはずだ。……こんな結末なんて、ない。


私の思考を読んだかのように、エストラーダ候は首を横に振った。


「私のことは、いい。狂人に踊らされただけのこと、だ」


彼は、ロックモールの青空を見上げる。雲一つない、透き通るような空だ。


「……ファリス、今逝こう。愚かな父を、赦してくれ」



カァァァッッ



不意に一瞬、金属が赤く、温かく光った。



これが何だかは、正確には分からない。でも、多分……ファリスさんの答えなんだ。

根拠はないけど、なぜかそう思えた。



エストラーダ候の身体が、白い石に変わっていく。そして、端から砂となって、砕けていった。


彼は、穏やかに笑った。



「……そうか。ありがとう……」



それが、エストラーダ候の、最期の言葉だった。



#


私はエリックを支えながら、なくなった別荘へと向かう。崖を見ると、階段が下まで続いていた。


私は涙を拭う。皆に、追い付かなくちゃ。


「……歩ける?」


「何とか」


海岸伝いにずっと歩けば、通りに出る。逃げる場合は、そこで落ち合う手筈になっていた。


もう、大丈夫だろう。転ばないように、慎重に一歩ずつ階段を下っていった。



その時だ。



ズズンッッッ!!!!



向こうから、地響きのような音が聞こえた。そして、そこから感じられたのは……強大で邪悪な、2つの魔力。



「……何っ?」


「何だ、これはっ」



砂浜の向こうから、誰かが走って来るのが見えた。……デボラさん??



「来るなっ、引き返しなっっ!!!」


「ど、どうしてですかっ??アヴァロンは、もう……」


「それどころじゃないんだよ!!!」


心を落ち着けるように、大きくデボラさんが深呼吸する。顔色は、顔面蒼白だ。




「カルロスが…………怪物になっちまった」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ