第26-7話
視界が、ゆっくりと落ちていく。何が起きた?
…………ドスン
地面に叩き付けられる衝撃。声を出そうとしたが、なぜか何も出てこない。
私の身に、何があった?エストラーダが急に喚いたかと思った瞬間に、私の前に魔王が出てきた。そして、これだ。
私は、何かの攻撃を受けた。それだけは分かった。
そして、この状況は私の予定にはない。本来なら、プルミエール・レミューはガルバリ山中に送られ、魔獣ノーサの餌食になっていたはずだった。
魔王エリックも同様だ。あの小柄な身体で、私に勝てるはずもない。そのはずだった。
視界が、急速に暗くなっていく。
神は、私をお助けにならないのか?
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私は、12の時からずっと、一念に神に祈りを捧げ続けた。自らの贖罪のために。
そう、私は母を殺した。ユングヴィの神学校へと通わせるため、折檻を加え続ける母を殺した。
母は悪魔に魅入られていた。しかし、悪魔払いはその筋に任せるべきであった。自ら行ったことで、私は深い禁忌を犯した。
だが、母は自殺……狂死として処理された。私がそう装ったからだ。
そして、それを幸いに、私は神に強く帰依するようになった。自らのために、そして神のために。
祈り続けていれば、我が罪は浄化され、神の御心が私をお救いになる。そう信じて35年以上生きてきた。
果たして強い神への想いは、自らを高みへと押し上げた。だが、足りない。私をお救いになった神への感謝は、こんなものでは足りない。
皆に救いを。そして、それを拒む愚者には裁きを。信じ続けた果てに、神はおわすのだ。
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しかし、神の姿は、未だ見えない。私は腕を天に伸ばした。
ああ、我が神よ。私は自らを、貴女に捧げ続けました。せめて、どうか一目でも……!!
「かみ、よ……」
『神はもういない』
どこからか、声が聞こえた。
「え」
『神はもういない。お前はそこで、朽ちていけ』
今際の際に聞こえたその声は……20年前に死んだはずの、魔王ケインのものだった。
……そんな。こんなことが、あっていいはずがない……!!
私の祈りは、神への想いは、一体……!!!
ぐしゃり
それきり、私の意識は、永遠に途絶えた。
キャラクター紹介
カエラ・アヴァロン(享年35)
ミカエル・アヴァロンの母。夫はアヴァロンが4歳の頃に流行り病で死んだ。
上級貴族の娘であり、ユングヴィの上級司教であった夫が亡くなるまでは幸せな家庭を築いていたようだ。
ただ、夫が亡くなったことへのショックと、子育てのストレスから精神が崩壊。過度に教育と神への帰依をアヴァロンに押し付けるようになった。
耐えきれなくなったアヴァロンは、12歳の時に彼女を殺害。ただ、衝動的なものではなく、ある程度計画的に自殺に見せ掛けていたようである。
なお、アヴァロン自身の記憶も自己正当化のためかなり歪められている。
アヴァロンの性格の一端が幼少期の虐待にあったのは疑い無い。
ただ、独善的で狡猾な性格は、母親殺害時には既にできていたようである。それは彼女の殺害により、より深刻なものとなったと言えるだろう。
なお、アヴァロンはこの後神童として異例の出世を果たす。
20年前の時点では「六連星」ではなかったが、それでも各地の首脳と会える程度の地位にはあったようである。




