第11-6話
いつか、こうなることは分かっていた。
もし地獄があるとするなら、私の末路はそこだろう。赦されようとは思っていない。
でも、薄れゆく視界の中、私の心によぎったのは……後悔だった。
私は、ずっとお父様のために生きてきた。私にとっての世界は、お父様だけだった。
だから、お父様のお役に立ちたくて、私は禁忌を犯した。それが二度と戻れない過ちだとしても。
そうすることが、私の生きている証になると信じていた。お父様の思念からクドラクの「活躍」を読み取る度に、私は例えようのない喜びを得られた。
でも、死と共に呪いから解き放たれようとする今なら、それはどうしようもない誤りであったと分かる。
そう思うことこそ、まさにアミュレットの呪いだったのだ。
お母様もまた、それに囚われていたのだろう。だから、アミュレットとドレスを私に託した。
お母様を恨む気持ちはない。ただ、なぜ呪いにかかってしまったのだろうという疑問はある。
それは決して、私には知り得ないことだ。
ただ、一つ言えるのは……私もお母様も、救われない存在であったという事実。
目が掠れる。目の前で、プルミエールさんが泣いている。貴女を殺そうとした、私のために。
……私も、貴女のように、縁のない人のために生きることができたのだろうか。
その可能性は、あった。たとえ残りの命が少なくても、多くの人と関わることはできた。
闇に生きるのを選んでしまったのは、私自身だ。そして、それから解き放ってくれたのは……貴女。もう……遅すぎたけど。
「……プルミエール、さん」
「……ええ」
彼女が左手を握ったのが分かった。もう、身体の感覚はさっきからなくなっているけど……その手の温もりだけは、はっきりと分かった。
「……あなたとは……ちがう、かたちで……」
プルミエールさんが、何か叫んでいる。もう、それが何かは分からない。
せめて、生まれ変わったなら。
貴女と、友達になりたい。それが、叶わぬ夢だとしても。
そして、私の意識は、消えた。
キャラ紹介
ファリス・エストラーダ(20)
女性。ロペス・エストラーダ候の一人娘。長い金髪の女性で、鼻が高い整った顔立ちをしている。
病弱のため身体は痩せており、身体能力はアミュレットなしでは極めて低い。子供の頃から病弱で、「外に出たい」「父親の役に立ちたい」という想いが非常に強かった。
20の誕生日になり母親であるレナの死の真相を知ったこと、そしてアミュレットを着用してしまったことで運命が暗転する。
もっとも、アミュレットの副作用を知っていたとしても、彼女がその誘惑に抗えたかはかなり怪しい。
世界がエストラーダ邸の中で完結しており、対等な友人が遂にできなかったことが道を踏み外す原因となったと言える。
もし相談相手がいたなら、そして別の形で世界と関わることができたならば、彼女が「クドラク」となることはなかっただろう。
彼女自身の性格は極めて真面目であり、多少近視眼的ではあるが善良な性質だった。
もしアミュレットの「呪い」に囚われず、かつ健康であったなら良い為政者となっていただろう(ただし、理想主義であるため敵も多かっただろうが)。




