表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王と魔法使いはかくて勇者を殺し、世界を破滅へと導いた  作者: 変愚の人
第1章(クドラク編)
13/92

第11-1話


誤算だった。まさか素性を知られているとは。

そして、ファリスの意思は存外に強い。俺ともあろう者が、完全に甘く見ていた。


ベルチェル家は、当主を失ってもなおベルチェル家だったということか。

暗殺者としての血筋か、はたまた幼い頃の薫陶か、あるいはあのアミュレットのせいか……とにかく、ファリスの殺意は本物だ。


プルミエールは既に逃げ出している。しかし、彼女は所詮魔法使いだ。身体能力は一般人にも劣る。



……不本意だが、俺が壁になるしかねえな。



腰に下げている刀に手をかける。「遺物」でこそないが、ランパード家に伝わる大業物だ。


ナイフが地面から引き抜かれた。歪みが大きく動こうとした時こそ、最大の好機!



ザッッッ!!!



大きく右足を踏み込み、腰の回転を使って「剣から鞘を抜く」。十二分に加速された初撃は、一撃必殺の威力を以てファリス……いや「クドラク」の背後を斬った。



そのはずだった。



「なっ??」



……手応えが……ない??



いや、違う。まるで風にたなびく布を斬ったかのように、威力が減じられている!?



クドラクが、こちらを向いたのが分かった。



「ジャマスルナ、イシャ」


「ぐっ……行かせるかよっ!!」


日は徐々に沈み始めている。これ以上暗くなると、完全に姿は把握しきれなくなる。足止めできるのは、今しかねえっ!!


俺は逃げ出すクドラクを追いながら詠唱を始めた。プルミエールはさっきの一撃のお蔭で10メドほど先にいる。間に合うはずだ……多分。


「星の力よ、我に力をっ……重力波(グラビディっ!!!」


プルミエールに追い付きかけていたクドラクの足が急に止まる。上手く行ったっ!!

荒事はあまり得意じゃねえが、これだけは自信がある。

重力波。見えない波動を当てることで、相手の動きを著しく鈍らせる。これと居合術の組み合わせは、幾度となく俺を助けてきた。


逃げるんじゃねえぞ、今度は確実に斬……



ズズッッ



「……嘘だろ!!?」



クドラクが、プルミエールを追おうとしている。もちろんさっきよりは遅い。しかし……それでも成人女性並みの速さで、彼女を追い始めた!?


「ぐっ……」


俺は刀を握る右手に力を込めた。重力波の効果はそう長続きしねえ。それにしても、あれだけの短時間で動けるようになるとは……怪物だ。


それでも、もう一撃……!!



ズバッッッッ!!!!



脇腹を、熱い物が貫いた。……短刀だ。迅、過ぎる。



「ぐあっっっ!!!」



「ジャマスルナ、トイッタ」



貫かれた場所の傷を押さえる。内臓まで傷は行っていないが、それでも苦痛は苦痛だ。

治癒魔法で血を止めにかかったが、それでももう俺が奴を追うことはできねえ。……完敗だ。


「常識……外れだろうがっ……!!」


プルミエールの姿はかなり小さくなった。クドラクが作る空間の歪みも遠ざかっちゃいるが、一応足止めという目標は達成できた、か。


この分なら、プルミエールは噴水前に辿り着けるだろう。そこからは、ワイルダ組の連中がひたすら遠距離攻撃を仕掛けながら、袋小路にクドラクを追い詰めていく、らしい。

上手く行くかは知らねえ。ただ、最後に魔王エリックが控えているらしいのは分かった。俺に知られたくない、本領を以てクドラクを討つわけか。


しかし……俺の想像以上にクドラクは強い。あんな速度だとは、思いもしなかった。


そして……もう一つ分かったこと。それは……



クドラクは理性のない獣ではない。



奴は俺を「医者」と言った。俺をちゃんと認識できているということだ。

そして、この脇腹への一撃。……恐らく、わざと急所を外している。


なぜか?俺に死なれちゃ困るからだ。クドラクは生きたがっている。自分を治す医者を殺しては本末転倒だ。


つまり……思考能力はちゃんとある。ということは、袋小路で罠を張るエリックの作戦は……見透かされ得る。


「クソがっ……」


俺は何とか立ち上がった。どこに追い詰めるかまでは聞かされてはいねえ。しかし、このままでは、多分……



作戦は失敗する。



技・魔法紹介


「重力波」

重力魔法。見えない波動を相手に当てることで、一時的に対象にかかる重力を2倍とする。使い手はかなり限定されており、ランパードはじめ数えるほどしかいない上級魔法。

詠唱を伸ばすことで重力量を増やすことが可能。今回は詠唱時間が取れなかったため2倍どまりだったが、それでも並の相手ではろくに行動ができなくなる。

ランパードは重力波→居合斬りの連続技を得意としており、これだけでかなりの相手を斬っている。


2倍の重力でクドラクが動けたのはランパードの計算外であったが、3倍以上なら目的は達成できたかもしれない。

なお、ランパードの真の切り札はまだ温存されている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ