不安
友人は、無言のまま部屋に入ってくると、体重3桁の頭を踏んで通り過ぎ、此方を向いてそばに屈んだ。
今日は、C型装備だった。
友人は、瞳孔を全開に開かせながら此方を見ていた。いつにない表情が恐く感じられた。
「…朝から何をしているのかな?」
「え、えと…その…急に女性が倒れてきて…」
「体重3桁を押し倒したとでも?」
「…はい。」
「…私に、その話を信じろと?」
「…僕が嘘を言ってないという真実の、つぶらな瞳を見て下さい。」
「……。」
「……。」
「…もう少し、目は開かないのかな?」
「…えと、…限界です。」
「……。」
「……。」
「……ところで、」
「……?」
──友人の顔色が悪い事に初めて気がついた。
「女性が、両手で首のマッサージをしているように見えるけど?」
「…えっ?」
「……私にされてたら、安らかに逝けたと思う。」
「……。」
「……女性の赤い爪が食い込んでいるけど、大丈夫?」
「……。」
「……寝ているのか?」
「……お、起きてます。」
「…普段の時も寝ている時も同じ顔してるね。」
「…目が細いだけです。」
「目、見せて。」
「…こんな感じ?」
体重3桁に不釣り合いな¨鏡のカラコン¨をキラリと御披露目する。
暫くの間、友人が手を振って楽しんでいた。
「凄い。私が写っている」
「目力アップです。」
──その目力で、女性を見つめた。
「何だか、女性が凄くイラついているように見えるんだけど?」
「……?」
女性の顔が、体重3桁のモアイ顔にゆっくりと近づく。
あの時の表情の顔に、少し殺気が感じられた。
「瞳を閉じたほうがいいんじゃない?」
「……そうし……ま…」
──ぶふぇっくしょんっ
今年最大級のくしゃみが、体重3桁の頭を激しくバンギングさせた。
そして、その頭が女性の顔面に直撃してしまった。
女性は、その衝撃で後ろに転がっていき、トイレの便座に頭をぶつけてそのまま横に倒れた。
トイレのドアが、独りでに閉じていった。
「……。」
「……。」
「トイレのドアを開けたら、また…」
「…来るかな。」
「これから…どうするの?」
「…女性が素手なら大丈夫かと。」
「この部屋に刃物は?」
「確か無いはず。…でもトイレブラシで撲殺されるかも……」
「それは無いよ。」
「…そうかなあ。」




