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『最強暗殺公爵の異世界定食屋〜『ネット通販』と現代兵器でスローライフを満喫してたら伝説の種族が常連客になった件〜 』  作者: 月神世一


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EP 8

「天網恢恢。神獣機神ガオガオンの絶対OSと、黒コゲの炎上神」

「消えろ! 消えろ消えろォォォッ!! なんで履歴ログが削除できないんだよォォッ!!」

 天界セレスティアのガラス張りのオフィス。

 炎上神ワイズは、顔面を蒼白にさせながら、エンジェルすまーとふぉんの画面を狂ったように連打していた。

 彼の『自己責任の抜け道』――自分が直接手を下さず、駒にやらせるという姑息なプロデュースの証拠は、ポポロ村のニャングルが仕掛けた【ニャングル・ファイナンス】の決済ログを通じて、天界のメインサーバーへと完全に筒抜けになっていた。

『エラー。該当の通信記録(虐殺の指示および不正資金の送金ログ)は、すでに【聖獣機神ガオガオン・メインシステム】へ転送されています。削除は不可能です』

 無機質なAIの音声が、ワイズに絶望の宣告を下す。

「あ、あぁ……! 嘘だろ、俺はまだ、これからランキング1位を獲って……ッ!」

 ゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォッ……!!!

 天界の空が、圧倒的な『黄金のオーラ』に包まれた。

 ワイズのオフィスの窓の外に、巨大な影が浮かび上がる。

 普段は社内恋愛のドロドロに悩まされている彼らだが、ひとたび『基本OS』が起動すれば、彼らはアナステシア世界における「絶対無謬の調停者」へと戻るのだ。

『――対象の行動履歴と、第1法【生命尊厳と平和に対する罪(明確な悪意による虐殺の扇動)】との照合を完了』

 機械的で、一切の感情を排した冷酷な声。

 ワイズは腰を抜かし、這いつくばって逃げようとする。

『――第3法【絶対無謬なる適正手続き(デュー・プロセス)】に移行。……0.0001秒の内部裁判を開始』

『…………』

『――有罪確定ギルティ。これより、刑を執行する』

「ま、待て! 俺は神だぞ!? 期待の大型新人プロデューサーだぞ! PVを、莫大な広告費を天界にもたらす俺を焼き殺す気かァァァッ!?」

『――判決は覆らない。正義の鉄槌を下す』

 神獣機神ガオガオンの胸に輝く『黄金の獅子』の口が、カパッと開いた。

 そこに収束されるのは、万物を塵に帰す紅蓮のレーザー。

『聖獣合体・制裁モード――【獅子の大咆哮ゴッド・パニッシャー】!!』

 ピシャアァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!

 極太の光の柱が、ワイズのオフィスを斜め上から正確に撃ち抜いた。

 高級ガラス張りのデスクも、MacBook風の魔導端末も、飲みかけの『天使の微糖フラペチーノ』も、一瞬にして分子レベルで蒸発する。

「ギャアァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 ワイズの断末魔は、圧倒的な爆音にかき消された。

 ◇ ◇ ◇

「おーおー、派手に燃えてるわねぇ」

「最近の若いのは、数字アルゴリズムに振り回されてすぐ炎上商法に走るからダメなのよ。……リリス、スルメもう一枚焼いて」

 ワイズのオフィスから遠く離れた、ルチアナのコタツ部屋。

 ジャージ姿の女神ルチアナと、永遠の17歳(自称)魔王ラスティアは、窓の向こうでキノコ雲を上げる新人神のオフィスを見ながら、のんびりと缶ビールを煽っていた。

「ま、これでゴッドチューブの規約コンプライアンスも少しは綺麗になるでしょ。月人君の動画の邪魔だったのよね、アイツ」

「それな」

 神々の頂点に立つ彼女たちにとって、新人の炎上など「ただの酒のつまみ」でしかなかった。

 ◇ ◇ ◇

 一方、その頃。

 ポポロ村の広場でも、空がピカッと黄金色に光るのが見えていた。

「おっ、天界の方でデッカい花火が上がったなァ」

 ニャングルが煙管をカンカンと叩きながら、算盤を懐にしまう。

「これで、借金の連帯保証人への『取り立て』も、ガオガオンのダンナがキッチリ代行してくれたみたいやな。おおきに」

 ポポロ村を脅かしていた『炎上神の陣営』は、完全に消滅した。

 プロデューサー(ワイズ)は黒コゲになり、主役ゼロスは借金100兆円を背負ってマグローザ漁船行き。

 そして、悪役であったはずのネフィリム(ミラース)はというと――。

「リーザ様ァ! 踏み荒らされた畑の土壌改良、完了いたしました!! 闇魔法ダーク・マターで土中の害虫も全滅させておきましたッ!!」

 芋ジャージにタオルを巻き、クワを片手に満面の笑みを浮かべる『超有能な農業ボランティア』へと成り下がって(昇格して)いた。

「うん、ご苦労様。……でも、アタシの朝ごはん(雑草)はもう戻ってこないのよね……」

 リーザはみかん箱から降り、ぐったりと肩を落とした。

 彼女の「強欲オーラ」はすでに解け、いつもの『極貧地下アイドル』の顔に戻っている。戦いが終わった途端、急激な空腹が彼女の胃袋を容赦なく締め上げていた。

「お腹すいた……。死ぬ……。誰か……恵んで……」

 その時である。

 村長キャルルに安全靴で蹴り飛ばされ、勇者ゼロスの巻き添えを食らって荒らされた『月見大根』と『太陽芋』の畑から、元・暗殺者の料理人リアンが、泥だらけの野菜を抱えて戻ってきた。

「……フッ。誰が『食い物が無くなった』と言った?」

「えっ?」

 リアンは、割れた大根や、傷のついた太陽芋をドンッ!とまな板の上に置いた。

「表面が割れようが、形が崩れようが……味は変わらねぇ。いや、むしろ『味が染み込みやすくなった』って考えるのが、料理人のプロってもんだ」

「り、リアンさん……!!」

 リアンは巨大な『タローマン製・魔導真空断熱ポット』を用意し、その中に、昆布と肉椎茸で引いた黄金の出汁をドボドボと注ぎ込んだ。

「さぁて、お待ちかねの『まかない』の時間だ。……世界を震わせたポンコツアイドルと、畑を耕した魔族のおっさんに、ポポロ村最強のB級グルメを食わせてやる」

 ゴッドチューブの生配信のカメラドローンが、いまだにポポロ村の様子を世界中へ流し続けていることも知らずに。

 リアンは、ポポロ村特製の『究極の煮込みおでん』の調理を開始したのである。

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