表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『最強暗殺公爵の異世界定食屋〜『ネット通販』と現代兵器でスローライフを満喫してたら伝説の種族が常連客になった件〜 』  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
82/119

第七章 炎上神の台本崩壊! ポポロ村・絶対防衛メシ

「炎上神ワイズの苛立ちと、最悪のプロデュース」

 天界セレスティアの一角。

 女神ルチアナの散らかったコタツ部屋とは対極にある、ガラス張りで無機質な『意識高い系ITオフィス』のような空間。

 そこに、最近神界に中途採用(?)でやってきた新入りの男神――炎上神ワイズの苛立たしい舌打ちが響き渡っていた。

「……あり得ない。なんだこのトラフィックの異常値は」

 ワイズは、純白の高級ソファに深く腰掛けながら、片手にグランデサイズの『天使の微糖フラペチーノ』を持ち、もう片方の手で最新型のエンジェルすまーとふぉん(限度額無限の漆黒ブラックカード仕様)を親指で猛烈にフリックしていた。

 彼の視線の先にあるのは、神々の動画サイト『ゴッドチューブ』の総合ランキング画面である。

【総合1位】3億2000万PV

『【神回】極貧アイドルが本気で歌ったら、ヤクザのボスが泣き崩れた件www』

「ぽっと出の地下アイドルが、カニの匂いに釣られて歌っただけの動画が、3億PVだと……? ふざけるな。ルチアナやカグヤのやってる『ほのぼのコメディ路線』なんて、とっくにオワコンなんだよ!」

 ワイズは、自身の教養のバイブルである『群衆心理』や『影響力の武器』を机に叩きつけた。

 彼の信条は明確だ。人間という愚かな群衆を最も効率よく動かし、莫大なPV(金)と信仰スパチャを集めるコンテンツ。それは「悲劇」と「復讐」、そして「血なまぐさい怒り(ヘイト)」である。

 彼が裏でプロデュースした『魔族に村を焼かれた少年が、暗殺者になって復讐する胸糞ダークファンタジー』の動画は、確かに1千万PVを稼いだが、リーザの理不尽なアイドル動画の前には赤子同然だった。

「……大衆は刺激に飢えている。中途半端な悲劇ではもう満足しない。ならば、もっと最悪で、もっと絶望的な『炎上企画』をブチ上げて、その数字ごと俺が喰い尽くしてやる……!」

 ワイズはスマホを操作し、裏回線で自身の『専属タレント(駒)』たちをモニターに呼び出した。

『――はい、どーも! みんなの希望の星、勇者ゼロスだよっ☆ 今日も魔物から可哀想な子供たちを守ってきたよ! みんな、いつも応援スパチャありがとね!』

 モニターの右半分に映し出されたのは、聖なる鎧とミスリルマントに身を包んだ、非の打ち所がないイケメン勇者・ゼロス。

 ……しかし、彼がカメラの録画ボタンを切った瞬間、その爽やかな笑顔は汚物を見るような冷酷な顔へと豹変した。

『あー、クソッ。ガキの鼻水が鎧についたじゃねぇか。おいスタッフ、早く除菌シート持ってこい! つーかワイズ、今日の配信のギャラ(課金ステータス)、ちゃんと振り込んだだろうな?』

「あぁ。お前のユニークスキル『マネー(重課金)』用の予算は、俺の無限カードから送金済みだ。ステータスはまた跳ね上がってるはずだぞ」

 ゼロスは『P2W(Pay to Win=課金すれば勝てる)』の申し子である。

 金さえ積めば努力ゼロで神の領域のステータスを得られる彼にとって、勇者の使命など「承認欲求と金を満たすためのインフルエンサー活動」でしかなかった。

「それよりゼロス。次はお前に、史上最大の『英雄』になってもらう特大の台本シナリオを用意した」

『へぇ。どんな台本? まーた、お涙頂戴の村でも救えばいいわけ?』

「そうだ。だが、今回は規模が違う。……ミラース、繋がっているな?」

 ワイズが呼びかけると、モニターの左半分に、漆黒の闇に包まれた男が映し出された。

 魔王軍のネフィリム(禁忌の混血)にして、世界への憎悪を煮えたぎらせるダークファンタジーの権化、ミラースである。

『……我を気安く呼ぶな、薄汚い神もどきが。我が手にある妖刀・哭刀こくとうが、貴様の血を啜りたがって泣いているぞ……』

「相変わらず痛々しいセリフ回しだな。だが、その『ガチの悪役オーラ』が画面映えするんだ。お前には次の魔王の座を約束してやる。その代わり、俺の台本通りに動け」

 ワイズは、空中にアナステシア全土のホログラムマップを投影し、ある一点を指し示した。

 ルナミス帝国、獣人王国、魔皇国の国境が交わる緩衝地帯。

「お前たちの次の舞台(ロケ地)は、この『ポポロ村』だ」

 ワイズの口から、致命的な名前が飛び出した。

「まず、ミラース。お前がネフィリムの絶望的な力で、この村を徹底的に蹂躙しろ。村人を恐怖のどん底に叩き落とし、大量の血を流せ。悲劇が深ければ深いほど、数字(PV)は跳ね上がる」

『……フッ。造作もない。下等な虫ケラどもに、我が深淵の絶望を刻み込んでやろう……』

「そして、村が業火に包まれ、誰もが神に祈りを捧げるその絶望のピークで――ゼロス、お前の出番だ」

『なるほどね! 俺が颯爽と駆けつけて、この痛いネフィリムのオッサンをボコボコにして、生き残った村人たちを抱きしめて涙を流すわけだ!』

 ゼロスは懐から『目薬』を取り出し、ポトリと瞳に落として悲劇のヒーローの顔を作った。

『――ごめん! 俺の到着が……あと少し早ければ……ッ!(泣)』

「完璧だ。その偽善の涙で、ゴッドチューブの視聴者の同情とスパチャは限界突破する」

 ワイズは下卑た笑いを浮かべた。

 彼がなぜ自分で手を下さないのか。それは、天界の絶対調停者『聖獣機神ガオガオン』の第1法(戦争扇動・虐殺への絶対焼却)を恐れているからだ。

「あくまで俺はプロデューサー。魔族が勝手に村を襲い、勇者が勝手に救っただけ。この『自己責任の抜け道』がある限り、ガオガオンの炎は俺には届かない」

 ワイズは勝利を確信していた。

「所詮ポポロ村は、三カ国の間に挟まれた貧しいド田舎の農業村だ。防衛力など皆無の、使い捨ての舞台にはお誂え向きの場所さ」

 ……しかし、彼は全く知らなかった。

 その「貧しいド田舎の農業村」が。

 マッハ1で敵の顎を砕く月兎族の村長と、相手の口座を凍結させる守銭奴の猫耳族、元暗殺者の天才料理人、そして、海神すらワンパンで泣き落とす強欲のアイドルが住む、最新鋭の魔導兵器で完全武装された『難攻不落のメシウマ要塞』であることを。

「さぁ、行くぞお前たち! 最高の悲劇コンテンツを配信し、あの人魚の娘からランキング1位の座を奪い返すんだ!!」

 かくして、読者のヘイトを極限まで煮詰めた最悪の炎上プロデュース陣営は、自らの破滅ざまぁへと続く片道切符を握りしめ、意気揚々とポポロ村へと進軍を開始したのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ