EP 7
「弓丸レンジャー降下作戦と、発狂するゲーマー魔人」
「……よし。前線の邪魔なゴミ(装甲)は消し飛んだな」
空飛ぶ巨大空母『轟丸』のブリッジで、センチネル(リアン)はモニターに映る戦果を冷徹に確認した。
プラズマ砲の絨毯爆撃により、死蟲軍の最前線は完全に更地となっている。しかし、天魔窟からは依然として後続の『死蟻型』や、空を飛ぶ『死蜂型』が湧き出し続けていた。
「プラズマで焼き尽くすと、肝心の『甲殻』まで炭になっちまうからな。……ここからは、食材を傷つけないように各個撃破(乱獲)していくぞ」
『了解! キャプテン! 弓丸部隊、降下シークエンス開始!』
賢者君の陽気なアナウンスと共に、轟丸の甲板から無数の輸送用ドラゴン型マグナギア『竜丸』が飛び立った。
バササササッ!!
上空を旋回する竜丸の腹部から、次々と太いロープが地上に向けて投下される。
そして、そのロープを伝って、身長180センチの陸戦レンジャー型人形『弓丸』部隊――その数、実に10,000体――が、特殊部隊さながらの鮮やかな手つきで次々と地上へ滑り降りていった。
ガチャッ、ジャキッ!
着地と同時に、弓丸たちは背中の魔法ポーチ(四次元ポケット)から、ファンタジー世界には絶対に存在してはならない無機質な鉄の塊を取り出す。
M17自動拳銃、HK417アサルトライフル。
そして、対戦車ミサイル『ジャベリン』に、携行型地対空ミサイル『スティンガー』。
「ギチチチチッ!!」
弓丸部隊の降下に気づいた死蟻型の群れが、強酸の涎を撒き散らしながら一斉に襲いかかってきた。
だが、感情を持たない機械の兵士たちは、一切の動揺を見せずに銃口を向けた。
タタタタタタタタタタッ!!
「ギガァァァァッ!?」
HK417から放たれる徹甲弾が、死蟻の硬い装甲を易々と貫き、緑色の体液を噴出させる。
上空から毒針を撃とうと急降下してきた死蜂型には、スティンガーミサイルが容赦なく発射され、空中で鮮やかな爆発の花火(熱源追尾)を咲かせた。
さらに、死蟲軍の奥に控えていた超巨大な『死王蟻型』が、怒り狂って咆哮を上げた瞬間。
――パラパラパラ……。
上空の竜丸から、パラシュートをつけた『3センチほどの極小人形(ミニ丸)』が無数に投下された。
彼らは死王蟻の開いた口の中へと見事に吸い込まれ、そのまま食道から胃袋へと侵入していく。
「ギ……?」
巨大な死王蟻の動きが、ピタリと止まった。
そして数秒後。
「ギギギャァァァァァァァァァァァ!!!」
胃壁を内側から『麻酔針を装備した無数のミニ丸』にチクチクと刺し続けられるという、想像を絶するえげつない内臓攻撃に、死王蟻は悶絶して地面をのたうち回り始めた。
剣と魔法の誇り高き戦いなど微塵もない。
あるのはただ、現代兵器と物理的な嫌がらせを極めた『完璧な殺戮と捕獲の作業』であった。
◇ ◇ ◇
「アアアアアアアアアアアッ!?」
天魔窟のモニタールームで、魔人ギアンの絶叫が木霊した。
インテリジェンスを気取っていた彼の手は、今や恐怖とパニックで震え上がり、キーボードを無茶苦茶に叩いている。
「な、なんだよあいつら! 銃!? ミサイル!? なんでこんな辺境の村に、近代兵器をフル装備した軍隊がいるんだよ! 魔法使いと剣士が『くっ、なんて数だ……!』って絶望するテンプレ展開はどうしたァ!?」
モニターの向こうでは、彼の誇る死蟲軍が、無表情の人形兵士たちによってシステマチックに射殺され、あるいは胃袋をチクチクされて泡を吹いて倒れていく。
「卑怯だぞ! お前ら、それでもファンタジーの住人か!? 剣で戦え! 魔法を詠唱しろ! 遠くからミサイル撃ってくんなァ!!」
ギアンはついに理性を失い、被っていた道化師の仮面をメリメリと剥ぎ取って床に叩きつけた。
その素顔は、残忍な魔人というよりは、ゲームで理不尽なハメ技を食らって発狂した「ただのクソガキ」のそれだった。
ドンッ!! バンッ!! ガンッ!!
「くそう! ふざけんな! クソゲーが! こんな喜劇(無理ゲー)なんて求めてない!!」
ギアンはモニタールームのコンソールデスクを、涙目で力任せに殴りつけ(台パンし)始めた。
「コンティニューだ! コンティニューさせろォ!! ママあああああ!!(※死蟲王サルバロスのこと) 銅貨1枚ちょうだい!! じゃないと俺のゲームが終わっちゃうぅぅぅ!!」
鼻水を垂らしながら台パンを繰り返す、情けなすぎる引きこもり魔人。
彼がこれ以上の増援を呼ぶ前に、センチネルからリアンの本体へと意識が戻る。
「……よし、害虫駆除(乱獲)はあらかた終わったな」
ポポロ屋の勝手口で、リアンはニヤリと笑った。
彼の足元には、異次元の食欲を持つ召喚獣『喰丸』が、不要な死蟲の死骸や兵器の薬莢を掃除機のように吸い込んでいる。
「さて、極上の『甲殻類』は確保した。……後は、あのバカ神どもに飯を食わせてやるか」
絶望の魔人ギアンの台パンが響く中、リアンの頭の中はすでに「極上のシーフードBBQのレシピ」で完全に満たされていた。




