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『最強暗殺公爵の異世界定食屋〜『ネット通販』と現代兵器でスローライフを満喫してたら伝説の種族が常連客になった件〜 』  作者: 月神世一


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EP 12

「魔王ラスティア、降臨! と、書類の山のヴァルキュリア」

 アバロン魔皇国、魔公爵ルーベンスの執務室。

 普段は冷静沈着な彼が、今日ばかりはボリボリと胃薬を噛み砕きながら、震える手で一枚の報告書を握りしめていた。

「……ワイズ皇国の軍事施設が、『銀色の流星(笑顔のウサギ)』の襲撃により半壊、だと……?」

 ルーベンスの顔面は蒼白だった。

 つい先日、強欲な監査官ゴルドーがポポロ村で幻覚を見せられ、廃人(笑顔)になって帰ってきたばかりだというのに。今度は物理的な大質量兵器(音速のウサギ)による報復攻撃である。

「あそこは定食屋だろうが! なんで国境警備隊が、たった一匹のウサギに蹂躙されてんだよ!」

 ルーベンスは頭を抱えた。

 これ以上の干渉は、魔皇国にとっても命取りになりかねない。一刻も早く、国家のトップにこの危機的状況を報告し、ポポロ村への不可侵条約を結ばねば。

 彼は足早に執務室を出て、魔王の玉座の間へと駆け込んだ。

「ラスティア様! 緊急の事態です! あのポポロ村が……!」

 バンッ!と扉を開け放ったルーベンスが目にしたのは、恐るべき絶対魔王の姿――ではなかった。

「あ、ルーベンス。お疲れ様~☆」

 そこにいたのは、玉座の横で『芋ジャージ』を着込み、パンパンに膨れ上がった旅行鞄に『朝倉月人(20)の推し活うちわ』を押し込んでいる女。

 アバロン魔皇国の絶対的君主にして、永遠の17歳(自称)――魔王ラスティアである。

「な、何をしているのですか、あなたは……!」

「何って、推し活遠征の準備に決まってるじゃない! 今週末から月人君の福岡ドームツアーなのよ!」

 ラスティアは満面の笑みで、キラキラと光るホログラム仕様のグッズを見せつけてきた。

「それに、ルチアナが入り浸ってる『ポポロ村』って所にも、お忍びで潜入してみようと思ってね! あそこのスイーツと飯、ルチアナが自慢してきてずっと気になってたのよ!」

「ふざけるなババア!! 今、そのポポロ村がどういう状況か……って、おい! その旅行鞄から溢れている大量の金貨はなんだ!?」

 ルーベンスの視界に、とんでもないものが飛び込んだ。

「ん? ああ、これ? 今期の魔皇国の防衛予算(国家予算)よ。アリーナの最前列チケットと、月人君の限定グッズを全種類買うには、ちょっとお小遣いが足りなくてさ☆」

「……てめぇ、また国庫を横領しやがったなァァァ!!」

「じゃ、あとはよろしくね! ブラック・ホール・ゲート、オープン!」

 シュゴォォォォッ!!

 ルーベンスの怒号を無視し、魔王ラスティアは自慢の空間魔法を発動。国庫の金と共に、ポポロ村方面へとルンルン気分で消え去ってしまった。

「……あ、あぁ……俺の、俺の防衛予算が……」

 膝から崩れ落ちるルーベンス。

 中間管理職の胃痛は、ついに致死量を超えようとしていた。

 ◇ ◇ ◇

 一方その頃、天界セレスティア

 荘厳なる白亜の神殿の奥深くで、バンッ!!と机を叩く凄まじい音が響き渡っていた。

「どういうことですか、これは!!」

 山のように積まれた未決裁の書類の真ん中で、天使族族長にして風紀委員長――ヴァルキュリア(永遠の17歳)が、怒りで黄金の翼をワナワナと震わせていた。

「最近、若い天使たちが人間界の任務から帰ってこないと思ったら……全員、ルナミス国境の『ポポロ村』という場所で、串カツのソースの匂いを漂わせながら、『丁半駒揃いました』などと謎の呪文を唱えて堕落している!? あの神聖なる『EPA(天使の試練)』を食べずに、ジャンクフードとカジノに溺れているというのですか!」

 健康と規律を重んじるヴァルキュリアにとって、それは許しがたい反逆行為であった。

 そこへ、トテトテと軽い足音が近づいてきた。

「委員長~、お疲れ様ですぅ。……モグモグ」

 ピンク色の『初心者マーク』が刺繍されたジャージに、健康サンダル。

 手には、ポポロ村特産の『太陽芋の極上スイーツ』を抱えた見習い女神、リリス(本物の17歳)である。

「リリス! あなたもまた間食をして! ……ん? 待ちなさい。あなたが食べているそのお菓子、天界の物ではありませんね? どうやって手に入れたのです?」

「えっ? あ、これですか? ルチアナ先輩に教えてもらった『エンジェルすまーとふぉん』のネット通販アプリ(タロ・イーツ)で、ポポロ村からデリバリーしたんですぅ」

 リリスは悪びれもせず、すまーとふぉんの画面をヴァルキュリアに見せた。

「ルチアナ先輩のクレジットカードと連携してるから、ボタン一つで買えちゃうんですよ! えーっと、今月の利用額は……『1,000,000G(限度額到達)』……あっ、カンストしました☆」

 ピキッ。

 ヴァルキュリアのこめかみに、特大の青筋が浮かんだ。

「ルチアナ様が……また天界の経費を不正利用して、しかも限度額(100万円)を突破している……!?」

 ポポロ村のカジノによる天使たちの堕落。

 ジャンクフードによる規律の乱れ。

 そして、創造神ルチアナのクレカ限度額突破(※リリスの爆買い含む)。

 すべての元凶が、「ポポロ村」にあると確信したヴァルキュリアの瞳に、浄化の炎が宿った。

「……許しません。私が直々に下界へ赴き、規律を乱すその不届きな村を、聖槍グラニの雷で消し炭(浄化)にして差し上げます!!」

 バサァッ!!

 ヴァルキュリアは黄金の翼を広げ、聖なる武具を手に取った。

 魔王の「お忍びオタ活」と、風紀委員長の「ガチのカチコミ」。

 ポポロ村の定食屋に、かつてない規模の世界大戦の火種が、猛スピードで迫りつつあった。

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