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『最強暗殺公爵の異世界定食屋〜『ネット通販』と現代兵器でスローライフを満喫してたら伝説の種族が常連客になった件〜 』  作者: 月神世一


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EP 11

「神々の暇潰しと、エルフの(物理的)パラダイス」

「あー……クソ退屈だぜ」

 ダメージデニム姿のフェンリルが、マルボロ・アイスブラストを吹かしながら天井を仰いだ。

「ここは飯とカジノは最高だがよ……いかんせんド田舎だからな。パチンコもねぇし、キャバクラもねぇ。……目の前に居るのは、ヨレヨレの『芋ジャージババア』だけだ」

「はぁ!?」

 カウンターで昼間からジョッキを傾けていたルチアナが、勢いよく振り返ってフェンリルを睨みつけた。

「ババアって誰のことよ! 私は神界歴で永遠の17歳なんですけど!? あんたの目は節穴か!」

「17歳がスルメかじりながらワンカップ飲んでたまるかよ」

 ギャーギャーと騒ぐ女神と狼王。

 しかし、いつもならフェンリルを吹っ飛ばす竜王デュークも、今回は静かに腕を組んで頷いた。

「しかしな。……フェンリルの言う事も一理ある」

「デュークまで!?」

「我のラーメン屋台とリアンの店、そして丁半博打だけでは、流石に娯楽のバリエーションが少なすぎる。たまには違う刺激も欲しいところだ」

 デュークの言葉に、隣で焼きチーズをかじっていたインテリヤクザ邪神・デュアダロスも、深く頷いて葉巻(食後の一服)の煙を吐き出した。

「違いねぇ。極道たるもの、もっとこう……パーッと派手に、景気の良い事をしたいのぉ。ネオン街のギラギラしたネーチャンをはべらせて、ドンペリってやつを空けてみてぇもんだ」

「ヤクザ映画の影響受けすぎでしょ、おっさん」

 呆れるキャルルをよそに、今度は不死鳥フレアが、色目をつかいながら厨房のリアンに身を乗り出した。

「ねぇ~、リアン君♡ あんた、何でも作れるんでしょ? パチンコとか、キャバクラとか、そういう遊べる場所、何かパパッと作ってよぉ」

「アホか」

 リアンは包丁でネギを等間隔に刻みながら、冷たく一蹴した。

「ウチは定食屋だ。それに、今から娯楽施設を新しく作るとなったら、設計から建築まで……ドワーフの親方衆を呼んできても、最低でも1年はかかるぞ」

「え~!? 1年も待てないわよ!」

 神々がブーブーと不満を垂れ流し、店内の空気が重くなった、その時である。

「あらあら~。皆さん、刺激と娯楽をお求めですかぁ?」

 トテトテと、可愛らしい足音。

 ルナが、いつの間にか『極彩色に毒々しくマーブル模様を描く、巨大な鉢植え』を抱えて現れた。

 そう、ワイズ皇国の強欲監査官ゴルドーの脳を焼き切った、あの『ハッピードリーム草』である。

「……おい、エルフの嬢ちゃん。なんだそのヤバそうな草は」

 フェンリルが訝しげに眉をひそめた。

「ふふっ。手っ取り早く『パラダイス』に行ける、魔法のお薬(植物)ですぅ☆」

 ルナは満面の笑みでフェンリルに歩み寄ると、鉢植えの蕾をフェンリルの顔面に向けた。

「はぁい、お注射ですよ~☆ えいのえいのえいっ!」

 プシュゥゥゥゥッ!!

「なっ!? ゲホッ、ゴホッ! なんだこの甘ったるい煙……は……」

 致死量に近いピンク色の幻覚ガスをゼロ距離で吸い込んだフェンリル。

 そのチャラい瞳孔が、一瞬にして限界まで見開き、そして……だらしなく溶けた。

「あ……あへぇ……」

 フェンリルの表情が、完全に「ダメな大人」のそれに変わる。

「おぉ……!! パ、パチンコだぁ……! すげぇ、全台『確変』入ってやがるぜぇ……! ドル箱が山積みだァ……!!」

 彼は何もない虚空を見つめ、両手で必死に見えないパチンコのハンドルを握る真似を始めた。

「ひゃはは! おっ、美人のね~ちゃんだぁ……! おいでおいで、俺様がドンペリ入れてやるからよぉ……へへへ……」

 誰もいない空気を撫で回し、だらしなくヨダレを垂らして笑う狼王。

 かつて絶対零度で世界を震え上がらせた神の眷属の、あまりにも無惨な姿であった。

「……」

「……」

 店内に、氷のような沈黙が落ちた。

 リアン、キャルル、そしてルチアナ、フレア、デューク、デュアダロスの神々でさえ、ドン引きして言葉を失っている。

 そんな中、ルナだけは鉢植えを抱えたまま、ニコニコと振り返った。

「すっごく楽しそうですねぇ! さぁさぁ、皆さんもパラダイスを味わいますか? 順番にお注射しますよぉ☆」

 ピンク色の煙を吹き出すヤバい草が、ゆっくりと神々の方へ向けられる。

 世界を滅ぼす邪神も、創造神も、最強の料理人も、全員の心が一つになった。

「「「いえ、結構です……!!!」」」

 ポポロ村で一番恐ろしいのは、魔王でも邪神でもなく、確実にこの「笑顔の天然エルフ」である。

 神々すら平伏する絶対的なヒエラルキーが、また一つ強固になった瞬間だった。

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