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『最強暗殺公爵の異世界定食屋〜『ネット通販』と現代兵器でスローライフを満喫してたら伝説の種族が常連客になった件〜 』  作者: 月神世一


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EP 3

「ナンパヒモニートの来店と、邪神の屈辱」

「ギャハハハハ! ここが最近、帝国の裏社会でも噂になってる『ポポロ村』かぁ。いいじゃねぇか、シノギ(金)の匂いがプンプンするぜぇ!」

 熱気に包まれたテントの入り口ののれんを乱暴にめくって入ってきたのは、一人の青年だった。

 色落ちしたダメージデニム(ジーパン)に、黒のタンクトップ。首にはジャラジャラとシルバーアクセサリーをぶら下げ、口には愛用のタバコ『マルボロ・アイスブラスト』を咥えている。

 見るからにガラの悪いヤンキー丸出しの格好。

 だが、その身から漏れ出す圧倒的な魔力(冷気)は、ただのチンピラのものではない。

 神の眷属にして調停者の一角――狼王フェンリルである。

「お~い! ねぇちゃん、酒くれ! 一番度数の高いやつな!」

 フェンリルが空いている樽(テーブル代わり)にドカッと腰を下ろして手を挙げた。

「は~い! ただいま!」

 バニーガールのカチューシャ(自前のウサギ耳に後乗せ)を揺らしながら、村長のキャルルがトテトテとジョッキを運んできた。

 なみなみと注がれたポポロ村特産の『芋酒』。

 ドンッ。

 ジョッキがテーブルに置かれた瞬間、フェンリルのチャラい瞳が、キャルルの引き締まったスタイルを上から下まで舐め回した。

「へぇ……。ねぇちゃん、すげぇ可愛いなぁ」

 フェンリルはタバコの煙をふっと吐き出し、ニヤリと笑った。

「こんなド田舎の村長やってるには勿体ねぇよ。どうだ? 俺の女にならないか? 美味いもん食わせて、帝国のネオン街で毎日遊ばせてやるぜ」

 言うが早いか、フェンリルの手がキャルルの尻へとスッと伸びた。

 神の眷属である彼の動きは、人間の目には全く見えないほどの神速。

 触られる――!

 ビュゴォォォォッ!!

 凄まじい風圧がテント内を吹き荒れた。

 フェンリルの手が尻に触れるコンマ数秒前。

 キャルルの右脚が、フェンリルの顎をかち割る軌道で跳ね上がり――顔面ギリギリ(数ミリの距離)でピタリと止まっていたのだ。

「……お?」

 フェンリルのタバコの灰が、風圧でパラパラと落ちる。

 キャルルは満面の営業スマイルを浮かべたまま、しかし目は完全に笑っていない状態で言い放った。

「ナンパは困りますぅ、お客様!」

「……ふぃ~」

 フェンリルは冷や汗一つかかず、しかし微かに目を細めて口笛を吹いた。

「こぇぇねぇちゃんだ。……ただのウサギじゃねぇな。今の蹴りに乗せた『闘気』、並の竜より重いぜ」

 フェンリルは両手を上げて「降参降参」というポーズを取った。

 バトルジャンキーの血が騒いだが、今日の目的は喧嘩ではなく「ギャンブル」だ。彼は舎弟(帝国のゴロツキ)たちやパトロンの女たちから巻き上げた分厚い札束を取り出し、カジノのメインテーブルへと歩み寄った。

「ま、いいや。ねぇちゃんは後で口説くとして……まずは一勝負だ!」

 フェンリルは人混みを強引にかき分け、熱狂する丁半博打の台の真ん前に立った。

「おい、そこの壺振りのオッサン! 俺様の有り金全部、『半』に賭けて……ん?」

 フェンリルの言葉が、ピタリと止まった。

 台の向こう側で、上半身裸になり、見事な『昇り龍の刺青』を晒しながら竹の壺を構えている男。

 その男もまた、フェンリルの声に反応して顔を上げた。

「……あぁん? どこぞのチンピラかと思えば……」

 デュアダロスの顔の筋肉が、ピクピクと痙攣した。

「フェンリル……!?」

「デュアダロスゥゥゥ!?」

 二柱の神(と邪神)の目が、数百年ぶりに至近距離で交錯した。

 数秒の静寂の後。

 フェンリルが、腹を抱えて爆笑し始めた。

「ギャハハハハハハ!! マジかよ!! 世界を二分した最恐の邪神サマが、なんでこんなド田舎で、上半身裸で『壺振り』やってんだよ!? 罰ゲームか!? それとも新しい趣味か!? ギャハハハ!」

 バンバンと台を叩いて笑い転げるフェンリル。

 デュアダロスは屈辱で顔を真っ赤にし、背中の龍の刺青が怒りで赤熱し始めた。

「ワレェ……! 女のヒモやってるニート風情が、極道として真っ当に(借金返済の)シノギを削っとるワシを笑うんじゃねぇ!! そのチャラい首、次元ごと斬り落としたるわ!!」

 デュアダロスが仕込み刀を生成しようと指を鳴らしかけた、その時。

「おい」

 フェンリルの背後に、ヌッと黒い影が立った。

 手には、揚げたての『串カツ』が盛られた巨大な銀盆。

 リアンである。

「俺のカジノで騒ぐなと言ったはずだぞ。……それに、冷気を垂れ流すな。揚げたてのカツの衣が湿気るだろうが」

 リアンの放つ「ガチの殺気(料理人の怒り)」に、バトルジャンキーのフェンリルすら背筋をゾクッとさせた。

「お、おいおい……。なんだこの店。村長もヤバけりゃ、料理人もバケモンかよ」

 フェンリルはニヤリと笑い、マルボロの煙を吐き出した。

「面白ぇ。……上等だぜ、壺振りのオッサン。俺様のこの『帝国の金』を、全部巻き上げてみろや。イカサマしたら、この村ごと氷漬けにしてやるよ」

「抜かせ。身ぐるみ剥がして、店の便所掃除させてやるわ!」

 こうして、ポポロ村の賭博場にて、「インテリヤクザ邪神」VS「ヒモニート狼王」という、神話の歴史書にも絶対に載せられないレベルの最低なギャンブル対決が幕を開けたのだった。

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