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『最強暗殺公爵の異世界定食屋〜『ネット通販』と現代兵器でスローライフを満喫してたら伝説の種族が常連客になった件〜 』  作者: 月神世一


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第四章 カジノとヴァルキュリアの壁ドン説教

「カジノ・ポポロ計画と、ノリノリの壺振り邪神」

「賭博場を開きたい……?」

 ポポロ屋の店内。

 村長のキャルルは、長いウサギの耳をピンと垂直に立て、あからさまな警戒心を露わにした。

「そうでんねん、村長。ただの賭博ちゃいまっせ。熱き魂がぶつかり合う、極上の『丁半博打ちょうはんばくち』や!」

 猫耳商人のニャングルは、ニヤニヤとあくどい笑みを浮かべながら、手元の算盤をカチャカチャと軽快に弾いた。

「う~ん……賭け事って、なんか恐そう。借金取りとか、柄の悪い怖いお兄さんたちが村をウロウロするのは嫌よ」

「そんな先入観もたんと! きちんと厳しいルールを設けて、管理を徹底すれば、立派で安全な大人の娯楽になれるんでっせ!」

 ニャングルは身を乗り出し、机を叩いて熱弁を振るう。

「考えてもみぃ。ここはルナミス帝国、ワイズ皇国、レオンハート獣人王国の3カ国が交わる交通の要衝! 今やただの『美味い飯屋がある村』から、もう一歩踏み込んだ『目玉の観光資源』が無いと、せっかくの立地が損や!」

「観光資源……」

「せや! 国境警備で毎日ストレスを溜め込んどる各国の兵隊さんたちから、給料を綺麗に吸い上げる……いや、楽しく有意義にお金を使ってもらうための『カジノ・ポポロ』計画や!」

 キャルルは腕組みをして唸った。

 確かに、村の財政が潤うのは村長として非常に魅力的だ。しかし、治安の悪化だけはどうしても避けたい。

「……治安の維持はどうする気だ、猫」

 厨房の奥から、リアンが絶対零度の低い声で口を挟んだ。

 手元では、夕食用の『太陽芋のポテトサラダ』を、完璧な手際でマッシュしている。

「いくらルールを設けても、ギャンブルには必ずトラブルが付きまとう。イカサマ、借金の踏み倒し、負けた客同士の喧嘩……。俺の神聖なシマに血の匂いを持ち込むようなら、その計画ごとテメェを叩き斬るぞ」

 リアンの背後から漏れ出す元・最強暗殺者の冷たい殺気に、ニャングルは一瞬ビクッと背筋を震わせた。だが、生粋の商人はすぐに不敵な笑みを浮かべた。

「ふっふっふ……リアンはん、ご心配なく。『絶対に誰も逆らえない、最強の用心棒兼・胴元ディーラー』なら、すでにウチの店に居りまっせ」

 ニャングルがビシッと自信満々に指を差した先。

 厨房の片隅にある、洗い場。

 そこには、最高級のアルマーニスーツ(ベスト姿)の上に『フリフリのピンクのエプロン』を身につけ、ピンクのゴム手袋をして山のような皿を黙々と洗っている男がいた。

「……あ?」

 インテリヤクザ邪神・デュアダロスである。

 無銭飲食のツケ(神々の大宴会代+超高級ワイン代で30万超え)を払うため、絶賛過酷なバイト中だ。

「このおっさん、『極道』の設定なんやろ? 見た目も怖いし、魔力もそこそこ(神レベル)ある! 『壺振り(サイコロを振る役)』にはピッタリやんけ!」

「……壺振りだと?」

 デュアダロスの動きが、ピタリと止まった。

 彼は泡だらけの皿をそっとシンクに置き、ゆっくりと振り返った。

「ワシに……あの任侠映画で見た、畳の上で上半身裸になって、壺を振って『丁半駒揃いました』って言うアレをやれと……?」

「せや! あんた、ヤクザ映画マニアなんやろ!? これ以上ない適役やないか!」

 ニャングルの言葉を聞いた瞬間、デュアダロスの瞳に、かつてないほどの熱い光が宿った。

 インテリヤクザとしてのプライド、そして何より、地下ダンジョンでヤクザ映画を見ながら何百年も拗らせてきた「任侠ロマン」への強い憧れが、完全に爆発した。

「や、やる……!!」

 デュアダロスは、ピンクのゴム手袋を勢いよくむしり取った。

「やらせてくだせぇ!! ワシ、ずっとアレをやってみたかったんじゃ!! 地下ダンジョンで来る日も来る日も一人でサイコロ振って練習してたから、手首のスナップには自信がある!!」

 かつて世界を滅ぼしかけた最恐の邪神が、目をキラキラさせて子犬のように懇願している。

「……アホらし」

 リアンは深い、深いため息をついた。

 だが、このバカ邪神がこのまま皿洗いを続けても、莫大な借金を返し終わるまで何年かかるか分からないのも事実だ。

「……まぁ、借金返済の足しになるなら、やらせてみるか。客のトラブルも、コイツの『指パッチン(次元塵化)』で黙らせられるしな」

「ほんまっすか、リアンはん!?」

 デュアダロスが、まるで宝くじに当たったかのような歓喜の声を上げた。

 だが、リアンは一瞬で間合いを詰め、包丁の峰をデュアダロスの喉元にピタリと当てた。

「ただし。お前がイカサマをしたり、売上をごまかしたりしたら……その竹の壺ごと、お前の頭をかち割るからな。わかったな?」

「ヒッ……! わ、わかっておりやす!!」

 邪神は直立不動で敬礼した。

「よっしゃ! ほな決まりや!」

 ニャングルが両手をパンッと叩いて喜ぶ。

「会場はポポロ屋の裏にデカいテントを張って作るで! リアンはんは『ギャンブル飯(カツ丼や串カツ)』の準備をお願いしまっさ! 熱い賭博場には、油ギッシュで美味いジャンクフードが必須やからな!」

 こうして、平和なポポロ村に新たな(そして絶対的にヤバい)娯楽施設が誕生することになった。

 「カジノ・ポポロ(丁半博打会場)」。

 胴元は、任侠ロマンを拗らせた最恐の邪神。

 用心棒は、元・裏社会の伝説の暗殺者。

 そして経営は、がめつさ限界突破の猫耳商人。

 これほど客にとって「勝てば天国、イカサマすれば地獄(物理)」なギャンブル場が、未だかつてあっただろうか。

 各国の国境警備兵たちの財布と給料が、本格的に絞り尽くされようとしていた。

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