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『最強暗殺公爵の異世界定食屋〜『ネット通販』と現代兵器でスローライフを満喫してたら伝説の種族が常連客になった件〜 』  作者: 月神世一


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EP 4

「極貧アイドルvs節約聖女の『ポイ活』対決」

 朝日が昇るポポロ村の広場に、二つの凄まじい「闘気オーラ」が激突していた。

 それは魔獣との死闘でも、国家間の代理戦争でもない。

 日々の食費を1銅貨でも浮かすための、血で血を洗う『ポポロ村・朝市特売バトル』の幕開けである。

「いいこと、ユート! 昨日のリアンさんの定食で分かったでしょ! もうゲロオムレツの時代は終わったのよ! 私たちのお金(パーティー資金)はマイナスなんだから、この朝市で限界までタダ飯と割引品をかき集めるわよ!!」

「お、おう……! クレアの奴、魔王の軍勢を前にした時より目がマジだ……」

 朝6時。ポポロ村の広場では、農家のおばちゃんたちが新鮮な野菜や魔獣肉を並べる「朝市」が開かれていた。

 クレアは聖女のローブの袖をまくり上げ、鋭い鷹のような目で市場をスキャンする。彼女の目標は魔王討伐報酬の1億円と、それを元手にした積立NISAによる完璧な老後である。1銅貨(約100円)の無駄遣いすら、彼女の人生設計においては万死に値するのだ。

「あそこよ! ルナミスベーカリー・ポポロ出張所の『パンの耳、ご自由にお持ち帰りください』コーナー! あの炭水化物を確保すれば、3日は食いつなげるわ!!」

 クレアが地を蹴り、聖女らしからぬ猛ダッシュでパン屋のワゴンへと突撃する。

 だが、そのワゴンの前には、すでに「先客」がいた。

「フフッ、甘いですの。このポポロ村のタダ飯ポイントで、プロの右に出る者はいませんのよ」

 ピンク色の芋ジャージに健康サンダルという完璧な戦闘スタイル。

 シーラン国の王女にして極貧地下アイドル、リーザである。

 彼女のサンダルの横には、すでに山盛りの「パンの耳」と、八百屋から「ペットの餌用ですの♡」と言って無料でせしめた廃棄寸前の野菜が確保されていた。

「なっ……!? あんた、昨日のルナキンで烏龍茶すすってた……!」

「クレアさんと言いましたわね。残念ですが、このパンの耳は私のステージ(命)! アイドルは施しは受けない、自分の力で掴み取るんですの! 『Love & Money』!!」

 リーザの瞳の奥に、狂気にも似た執着の炎が揺らめいた。

 二人の美少女の間に、バチバチと青白い火花が散る。

「上等よ……! 私の老後資金(NISA)の利回りを邪魔する奴は、たとえアイドルだろうが容赦しないわ!!」

 クレアがユニークスキル【シールド】を展開する。

 半径3メートルに広がる絶対防御のバリア。その表面には、触れた者を感電させる1億ボルトの電流がバチバチと流れている。

「バリア! バリア! バリアあああッ!! どきなさい芋ジャージ! そのパンの耳は私が貰うわ!!」

「ひぃっ!? 電撃バリアを張りながら体当たりしてくるなんて、聖女の戦い方じゃありませんの!?」

 クレアの『シールドトライ(バリアを張ったままの物理突進)』が、朝市の群衆を掻き分けながらリーザへと迫る。

 しかし、リーザも腐っても人魚姫である。

 彼女は驚異的な敏捷性と、ルナミスデパートの特売セールで鍛え上げた『スリ抜け』の技術を駆使し、クレアのシールドの隙間を水のようにヌルリと躱した。

「甘いですの! 私は交番の前で反復横跳びをしてカツ丼を勝ち取った女ですのよ!!」

「くっ……! すばしっこい……!」

 二人の戦場は、パン屋のワゴンから「タローソンの廃棄弁当争奪戦」、そして「広場の鳩の餌やりおじさん」の周囲へと移行していく。

「ポッポー!」

「どきなさい鳩! その豆は私の朝ごはんですの!!」

「バリア! 鳩ごと弾き飛ばして私が豆を回収するわ!!」

 絶世の美貌を持つ聖女と王女が、広場の中心で鳩と取っ組み合いながら豆を奪い合うという、あまりにも悲惨でシュールな光景。

「……おいウィスタ。俺たち、なんであんな奴らと一緒にいるんだろうな」

 遠巻きに見ていたユートが、遠い目をしながら呟いた。

「気にするな。底辺には底辺の矜持があるってことだ。俺はあいつらのそういう泥臭いところ、嫌いじゃないぜ」

 ウィスタはポポロシガレットをふかしながら、どこか楽しそうに笑う。

 ドタバタの争奪戦の末、二人は広場のベンチに背中合わせにへたり込んだ。

 クレアの手には大量のパンの耳が、リーザのジャージのポケットには鳩と争って勝ち取った豆と試食品のウインナーが詰め込まれている。

「はぁ、はぁ……やるわね、芋ジャージ……。まさか私のシールド・メリケンサックをすべて躱しきるなんて……」

「はぁ、はぁ……クレアさんも……。その節約への執念、見事ですの。私、少しだけあなたを認めますの」

 汗にまみれた二人の間に、戦いを通じて奇妙な「ポイ活仲間ライバル」としての友情が芽生えていた。

「ふふっ、バカみたい。一億円手に入れたら、あんたにも美味しいパンを奢ってあげるわよ」

「本当ですか!? 言質げんち取りましたの! スパチャとして受け取りますの!」

 泥だらけの二人が笑い合う。

 そんな感動的(?)な光景を横目に、ユートは一人、静かにその場を離れていた。

(たくっ、あいつら鳩の豆なんかで争いやがって……。おっ? あそこの畑、なんか丸々とした美味そうなキャベツが落ちてるじゃねぇか。拾って食おうぜ)

 ユートが、柵も何もない無防備な畑に転がっていた『ネタキャベツ』へと手を伸ばす。

 それが、ポポロ村の絶対的論理ルールを司る、あの「長ネギの樹人」の逆鱗に触れる行為だとは知らずに。

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