EP 2
「ウィスタの違和感と、武装する農家たち」
ファミレス『ルナキン』を出たユートとリリスは、肩を組んで夜のポポロ村を歩いていた。二人の間には、共にルチアナという共通の災厄に立ち向かう「底辺の絆」が芽生えていた。
「いやぁ、ポポロ村の夜風は心地いいですぅ。借金のことは忘れられませんけど」
「ああ、全くだ。……だが、なんだかこの村、妙に空気が澄んでないか?」
ウィスタが愛用の魔導ライフルを指先で回しながら、鋭い眼光を村の周囲へと向ける。彼はエルフ特有の敏感な聴覚と、魔力探知能力で周囲の「異常」を感じ取っていた。
「どうしたのウィスタ?」
「……おかしいんだよ。この村、緩衝地帯のど真ん中だろ? 三大国の国境付近なんて、普通ならならず者や野盗が闊歩していてもおかしくないはずだ。なのに、今の今まで『殺気』の欠片も感じない」
ウィスタがふと視線を横の農家へと向けると、窓からおじさんが顔を出した。
おじさんは鍬の代わりに、重厚な『魔導誘導バズーカ』を肩に担ぎ、ニコニコと微笑んでいる。
「おや、旅の人かい? 夜道は危ないから、タローマンの反射ベストを着て行きなさいよ」
「……あ、ああ、ありがとう……(な、なんだそのバズーカは)」
ユートが引きつった笑顔で頷くと、今度は向かいの納屋からおばちゃんが勢いよく飛び出してきた。彼女は洗濯物を干すような手つきで、肩に『対空長距離魔砲』を担いでいる。
「あら、ごめんよ! ちょっとそこ通るから道を開けておくれ!」
「……お、おばちゃん、それ……」
「ん? これかい? 最近、村の上空をワイバーンが飛び回ってうるさくてねぇ。ちょっと撃ち落としてくるだけだよ。気にしないで!」
ドォォォォンッ!!
おばちゃんが空に向けて引き金を引くと、遥か上空を飛んでいたワイバーンが黒焦げになって落ちてきた。
「「「……ひぃっ!?」」」
ユート、リリス、ウィスタの三人は、顔を見合わせて絶句した。
「……ユート、あんたの見た『田舎の農業村』っていう概念、速やかに修正したほうがいいぜ。ここ、ただの村じゃない。**『村全体が歩く要塞』**だ」
「わ、私のエターナル(理想郷)製作計画、ここの自警団に任せたほうが絶対効率いいですぅ……!」
ウィスタはライフルのマガジンを軽く叩き、不敵な笑みを浮かべた。
「面白い。この村の裏側、もっと深く掘り下げてみたい気分になったぜ。……だがな、今はそんなことより『月末』だ。俺たちの嫌な予感は、大抵の場合、外れない」
ウィスタの言葉通り、平和に見える村の地下深くからは、キュルリンのラボの稼働音と共に、何か重厚な金属音が響き渡っていた。
空には、不吉な暗雲が立ち込め、静かに「回収の時」が近づいていることを告げていた。
「……来たぞ。天界の『アレ』と、地上の『アレ』が」
ウィスタが空を見上げたその瞬間、ポポロ村の上空で次元の裂け目が音を立てて発生した。
黒いスーツを纏った屈強な回収人たちと、ルナミス裏社会の取り立て業者が、同時に姿を現したのだ。
「あああぁぁっ! 来ましたぁ! 借金回収人ですぅぅ!」
「マジかよ、勘弁してくれ……! まだ借金返済のメドすら立ってねぇぞ!!」
二人の悲鳴が響き渡る中、ウィスタは愛銃を構え、ニヤリと笑った。
「さて、撃たなきゃいけない瞬間が来たみたいだな。……ユート、リリス、迷うなよ」
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