EP 3
「光り輝く後光。第一の暴露『漢達の頭皮戦線』」
ビカァァァァァァァァァッ!!!
ポポロ屋の広間が、まるで超新星爆発でも起きたかのような強烈な閃光に包まれた。
光源は、上座で頭を抱え、ガタガタと震えている世界神オリンの『ハゲ頭(頭頂部)』である。
「はぁ!? ちょ、ハゲ! 眩しすぎるんだけど! 目が潰れるわ!!」
ルチアナがビールのジョッキを落とし、両手で目を覆いながら叫んだ。
「せっかくのお祝いの席なのに、なんて迷惑な光量かしら……! これじゃマカロンの色が見えないじゃない!」
カグヤも扇子で顔を隠しながら顔をしかめる。
しかし、一番パニックに陥っていたのは、料理を作ったリアンだった。
「いや、まて……俺としたことが! いくら美味そうでも、魔界の『暴露鯛』を捌いちまうなんて……! おいハゲのおっさん、今すぐ吐き出せ! それ以上飲み込むな!!」
リアンがオリンの背中を叩こうと接近するが、遅かった。
オリンの懐に入っている呪いのアイテム『ふ~ん石』のデバフ(不運効果)が完璧に機能し、オリンの「神としての精神的耐性」をリーザ(極貧)以下のスライムレベルにまで下げきっていたのだ。
「ああっ……! ダメだ、口が、私の口が勝手に……!! うぅ……ッ!!」
オリンはテーブルに突っ伏し、涙と鼻水を流しながら、ついにパンドラの箱を開け放った。
「実は……私は毎晩、コソコソと『育毛剤』を使用しているんですぅぅぅ!!」
シーン……。
ポポロ屋の広間が、再び水を打ったように静まり返った。
全員の視線が、ビカビカと輝くオリンの「不毛の大地(頭頂部)」に集中する。
「……そ、その頭で!?」
GOD-Tuberのキュララが、思わず素のトーンでツッコミを入れた。
彼女の周囲には配信用の追従カメラが浮遊しており、この『神の悲しき告白』は、ゴッドチューブを通じて全宇宙へと生配信されている。
「えっ、でも世界神様が使ってるなんて、きっとすごく高価で効果があるお薬なんですよね!」
空気を全く読まない見習い女神・リリスが、初心者マークのジャージのポケットからみたらし団子を取り出しながら、純真無垢な瞳で尋ねた。
「その育毛剤の名前はなんですかぁ?」
その瞬間、ポポロ村の財務担当であるニャングル(猫耳族)の全身の毛が、バチッ! と逆立った。
彼の『神眼』が、この後に起こる恐るべき経済的カタストロフィを完璧に予測したのである。
「ア、アカン! き、聞くんやないでリリス嬢ちゃん! その質問は絶対にアカン!!」
ニャングルが算盤を放り投げてオリンの口を塞ごうとダイブするが、オリンの暴露の勢いは止まらない。
「ルナミス帝国の製薬会社が作っている、『漢達の頭皮戦線』です!! 朝晩2回、神気を練り込みながら欠かさず頭皮に揉み込んでいるのに、産毛一本生えてこないんですぅぅぅ!!」
「アッジャーーッ!! 言うてもうたぁぁぁ!!」
ニャングルが頭を抱えて床を転げ回る。
――全宇宙の視聴者が、その瞬間に一つの真理を悟った。
『全知全能の神(世界神)が、毎日欠かさず使っても1ミリも生えない育毛剤』。
それはつまり、「その育毛剤には、医学的にも魔法的にも、1ミリの効能もない完全なプラシーボ(詐欺商品)」であるという、絶対的な証明に他ならない。
「あわわわっ……! オ、オリン様……!」
リリスが、慌てて自前のエンジェルすまーとふぉんを取り出し、ルナミス帝国の株価チャート(証券アプリ)を開いた。
「ルナミス帝国の第一部上場企業、『毛髪製薬株式会社』の株価が……!! ま、真っ逆さまに落ちていきますぅぅ!!」
「そらそうやろ! 神様が『効かん』って実証してもうたんやからな! ストップ安や! 関連会社の株まで連鎖的に暴落しとるで!!」
ニャングルの悲鳴と共に、ルナミス帝国の経済(の一部)が、オリンの一言によって完全に崩壊した。
明日には『漢達の頭皮戦線』の不買運動が起き、数万人の毛髪に悩む男たちが絶望の涙を流すことだろう。
『(コメント欄)神が使って生えないなら無理だろwww』
『(コメント欄)俺の使ってた育毛剤じゃねーか! ふざけんな返金しろ!!』
『(コメント欄)世界神、ハゲをこじらせて経済を破壊するwww』
『(コメント欄)株券がただの紙切れになったぞ!!』
『(コメント欄)腹痛いwww ゴッドチューブ史上最高の放送事故www』
株価の暴落とは反比例するように、ゴッドチューブのPV(視聴者数)と投げ銭は天文学的な数字へと跳ね上がっていく。
「ふはははっ! オリン、アンタ最高じゃない! これで私たちのPVノルマ、一瞬でクリアよ!」
「ええ。他人の不幸で食うマカロンは、格別に美味しいわね」
ルチアナとカグヤがゲラゲラと笑い転げ、宴会場は爆笑の渦に包まれた。
だが、オリンの暴露はこれだけで終わるはずがなかった。
『ふ~ん石』の呪いは、オリンの精神の「さらに深い奥底」にある、絶対に触れてはならない神界のタブーへと手を伸ばし始めていたのである。
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