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『最強暗殺公爵の異世界定食屋〜『ネット通販』と現代兵器でスローライフを満喫してたら伝説の種族が常連客になった件〜 』  作者: 月神世一


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EP 2

「リーザの歓迎と『ふ~ん石(呪い)』」

「……というわけで、今夜はオリンの歓迎会よ! リリス、キュララ、それに村長のキャルルたちも呼んで頂戴! もちろん経費(お代)はオリン持ちでね!」

「なんで私が払う流れになっているのだね!?」

 ルチアナの理不尽な宣言により、急遽ポポロ屋の広間で『世界神オリン歓迎の宴』が開かれることとなった。

 オリンはブツブツと文句を言いながらも(PVを稼ぐチャンスかもしれないという下心もあり)、しぶしぶ広間の上座に腰を下ろした。

「オリン様! はるばるポポロ村へようこそですの!」

 そこへ、芋ジャージに健康サンダルという見慣れた姿で、シーラン国の王女にして極貧地下アイドルのリーザが駆け寄ってきた。

「おお、君は……ルチアナの報告書で見たことがあるな。確か、海底国家シーランの王女で、現在はルナミス帝国でアイドルをしているという……」

「はいですの! でもアイドルはお金がかかるので、今はパンの耳と雑草サラダで食いつなぎながらポイ活を頑張ってますの!」

 王女の口から出たあまりにも悲惨な近況報告に、オリンは思わず胃薬の瓶を握りしめた。(なぜルチアナの周りの人間は、どいつもこいつも極端なのだ……)

「えっと、その、オリン様! 私、今日村の端っこで『すっごく綺麗な石』を拾ったんですの! オリン様が来たお祝いに、これ、プレゼントしますの!」

 リーザがジャージのポケットから取り出したのは、鈍い鉛色をした、ゴルフボールほどの大きさの石だった。表面には、人間の顔が「ふぅ~ん……」と呆れたような表情をしている謎の模様が浮かび上がっている。

「……ん? なんだこの石は」

「公園で鳩と喧嘩して負けた後に、草むらで光ってたんですの! きっと幸運の石に違いないですの!」

「ほ、ほう。現世の石など珍しくもないが……まぁ、君の純粋な好意は受け取っておこう」

 オリンはニコリと笑い、その石を自らの神官服の懐にしまった。

 ――その瞬間である。

 ズゥゥゥゥン……。

 オリンの背後に、見えない「どす黒いオーラ」が立ち込めたのを、天界組(ルチアナ、カグヤ、リリス)だけはハッキリと視認していた。

「……ねぇ、カグヤ。今、オリンのステータスに妙なバフ……いや、デバフがかからなかった?」

「ええ。間違いないわ。アレ、ルナミス帝国のオカルト雑誌で見たことがあるわ……。持つ者の運気を、最低値(リーザの現在の不運度)以下に突き落とすという呪いの魔石……通称『ふ~ん石』よ」

 カグヤが青ざめた顔で扇子を口元に当てる。

「ふ、ふ~ん石!? なんでそんな危険なものがポポロ村に……!」

「アバロン魔皇国のルーベンスが、競馬で大負けした時に腹いせで捨てた『魔界の不運グッズ』が、回り回ってリーザの元に届いたんじゃないかしら……。どうするルチアナ、オリンに教える?」

「……いや。このまま放っておけば、オリンが勝手に自滅してPVが稼げるかもしれないわ。黙っときましょ」

 堕落女神たちのクズすぎる保身により、オリンの破滅のカウントダウンは静かに進み始めた。

 ◇ ◇ ◇

 そして、宴が始まった。

 ポポロ村の村長であるキャルルや、自警団のダイヤ、GOD-Tuberのキュララたちも集まり、広間は賑やかな空気に包まれていた。

「さぁ、お偉いさん。お待ちかねのメインディッシュだ」

 厨房からリアンが現れ、オリンの目の前に巨大な大皿をドン! と置いた。

「おお……! これは見事な……黒鯛の刺身(洗い)かね!?」

 皿の上には、氷を敷き詰めた上に、透き通るような美しい白身が芸術的な薄造りで盛り付けられていた。大根のツマ(もちろん月見大根)と、添えられた陽薬草が、一層その美しさを引き立てている。

「ウチの自警団のイグニスが、シーラン海との合流地点で釣り上げてきた特上の黒鯛だ。ポン酢と……お好みでモミジおろしで食ってくれ」

 リアンは腕を組み、自信満々に笑う。

「……ふむ。現世の魚など、天界の甘露に比べれば泥水のようなものだが。まぁ、君たちの誠意に免じて一口食べてやろう」

 オリンは偉そうに箸を手に取ると、黒鯛の刺身を一切れ持ち上げ、ポン酢につけて口へ運んだ。

 モグッ。

「――!?」

 カッ!!

 オリンの目が、驚愕に見開かれた。

「な、なんだこれは……ッ! 身の締まり具合、口の中で弾けるような上品な脂の甘み! そして、それを引き締めるポン酢の酸味と陽薬草の仄かな香り! まさに……まさに神の舌を唸らせる絶品ではないか!!」

 オリンは感激のあまり、ハゲ頭から神々しいオーラ(物理的な光)を放ちながら、次々と刺身を口に運び始めた。

「美味い! 実に美味いぞリアンくん! 現世にこれほど美味な魚がいるとは……む?」

 バクバクと食べていたオリンの箸が、ピタリと止まる。

「……オリン様? どうかなさいましたか?」

 キャルルが不思議そうに首を傾げる。

「いや……なんだろうな。この刺身を食べていると、なぜか胸の奥底から……『自分の心の内に秘めた、絶対に誰にも言えない秘密』を、大声で叫びたいという……強烈な衝動が湧き上がってくるのだ……!」

 プルプルと震え始めるオリン。

 その言葉を聞いた瞬間、釣ってきた張本人であるイグニス(竜人族)が、ふと何かを思い出したように顔を青ざめさせた。

「あっ……! オイ待て、リアン! その黒鯛、ひょっとしてエラの下に『人間の唇』みたいな模様がなかったか!?」

「ん? ああ、そういえば奇妙な模様があったな。だからその部分は切り落としたが」

「バカ野郎!! そりゃただの黒鯛じゃねぇ! 魔界の深海に生息する、食べた者の隠し事を強制的に全部吐き出させる魔魚……『暴露鯛ばくろだい』だ!!」

「「「……えっ?」」」

 宴会場が、水を打ったように静まり返る。

 しかし、時すでに遅し。

「あ……あああ……! 言う……! 私は、言ってしまうぞおおおおおッ!!」

 懐に忍ばせた『ふ~ん石』のデバフ効果により、魔魚の呪いはオリンの強靭な神格を完全に貫通していた。

 オリンは立ち上がり、ハゲ頭をミラーボールのようにビカビカと発光させながら、全宇宙を揺るがす「第一の暴露」を叫ぼうとしていた。

お読みいただきありがとうございます!


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