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『最強暗殺公爵の異世界定食屋〜『ネット通販』と現代兵器でスローライフを満喫してたら伝説の種族が常連客になった件〜 』  作者: 月神世一


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EP 9

「料理人リアン、空気を粉砕する」

 世界中が「泥沼夫妻の狂気と純愛」に涙し、宇宙には『メロン星雲』が誕生した翌朝。

 ポポロ村の広場にあるポポロ屋の厨房では、元・最強の暗殺者にして料理人であるリアンが、愛用の銀の包丁をビカビカに研ぎ上げていた。

「よし。切れ味は完璧だ。……行くぞリーザ、ミラース」

「えっ!? 行くって、どこにですかリアンさん!?」

 朝ごはん(※タローソンのからあげの残り)をモチャモチャと食べていた極貧地下アイドルのリーザが、目を丸くする。

「決まってんだろ。泥沼農園だ」

 リアンは分厚い『魔導真空断熱ポット』を背負い、腰に前掛けを締め直した。

「あの夫婦……自分が育てた食材メロンのあまりの美味さに号泣しながら、顔面をドロドロにして完食しやがった。まさに『農家の鏡』だ。だが、あいつらは素人ゆえに、一つだけ致命的なミスを犯している」

「ミ、ミス……?」

「ああ。メロンの『皮』と、間引いた『余分な種』を残したままだ」

 リアンは包丁の切っ先を天に向け、ギラリと目を光らせた。

「命をいただくからには、骨の髄……皮の一枚まで美味しく料理して食い尽くすのが、料理人としての『礼儀レクイエム』ってもんだ。俺が今から、あいつらの残した皮を最高のグルメに昇華してやる!」

「ち、違いますよリアンさん!! あれは純愛の果ての悲劇(NTR)で……! メロ美ちゃんとメロ彦くんの亡骸(皮)を漬物にするとか、サイコパスの所業ですよぉぉ!!」

「ハッ。食材にロマンスを持ち込むな。行くぞ!!」

 リーザの必死のツッコミ(正論)も空しく、リアンは弾丸のような速度で泥沼農園へとカチコミをかけた。

 ◇ ◇ ◇

 泥沼農園、母屋のリビング。

 そこには、昨晩の『狂乱の捕食』を終え、すっかり賢者モードに入った愛蔵(50歳)と恵(45歳)が、互いの手の中にある「愛の結晶(種)」を見つめながら、聖母のような穏やかな微笑みを浮かべて座っていた。

「愛蔵さん……私たち、すっかり心が洗われた気分ね」

「ああ、恵。俺たちの愛したメロンは、今、俺たちの中で一つになっているんだな……」

 まさに、全宇宙を巻き込んだ『感動のフィナーレ』の余韻。

 神々すらも涙した、犯してはならない聖域の空気。

 バァァァァァァァァンッ!!!

 その神聖なリビングの扉が、凄まじい蹴りで粉砕された。

「……邪魔するぜ、農家の鏡たち」

 砂埃と共に現れたのは、銀の包丁を逆手に構え、絶対零度の殺気を放つ暗殺料理人・リアンであった。

「な、なんだお前は!?」

「ポポロ屋の料理人だ。……昨日の『食いっぷり』、見事だったぜ。あんたらの食材への感謝の涙、俺の胸にビシビシ伝わった。だがな……」

 リアンは、リビングの隅に置かれていたゴミ袋……いや、メロ美とメロ彦の『残骸(皮)』を指差した。

「本当に食材を愛してるなら、皮まで食え!!」

「はあぁぁぁっ!?」

 愛蔵と恵がドン引きする中、リアンは神速の足捌き(ステップ)で残骸に接近。

 昨晩まで「愛蔵さぁん♡」「恵……」と甘く囁いていた愛人メロロンたちの変わり果てた姿(ただのメロンの皮)をまな板の上に乗せると、目にも留まらぬ速さで刃を振るった。

「『微塵切り(サイレント・チョップ)』ッ!!」

 ダダダダダダダダダッ!!!

 愛人メロロンの皮が、芸術的なまでの薄切り(千切り)へと解体されていく。

 泥沼夫妻が「ああっ! メロ美が!」「メロ彦がぁっ!」と悲鳴を上げる暇すら与えない。

「皮は硬いが、ポポロ村特産の『醤油草』と『鷹の爪』、そしてごま油で揉み込めば、極上の酒のツマミ(浅漬け)になる! さらに、余った種は塩とニンニクでカラッと炒り上げる!! これぞポポロ屋特製……『メロロン皮のピリ辛浅漬け』と、『種のガーリックロースト』だ!!」

 ジュワァァァァァァッ……!!

 ごま油とニンニクの暴力的な香りが、メロロン特有の甘く淫靡なフェロモンを完全に上書きし、強引なまでの『飯テロ空間』へとリビングを塗り替えた。

「食え!!」

 ドンッ!! と、テーブルの上に小鉢が二つ置かれる。

「く、食えるわけないだろう! それは俺の愛したメロ美の……!」

「私のメロ彦を漬物にするなんて……悪魔よ!!」

「いいから食え。一口食って不味かったら、俺の首を刎ねてもいいぜ」

 リアンの凄まじい眼力と殺気に気圧され、愛蔵と恵は震える手で箸を伸ばした。

 そして、メロ美とメロ彦の『皮(浅漬け)』を、口に運ぶ。

 ポリッ。

「…………えっ」

 ポリポリポリポリッ!!

「な、なんだこれ!? 皮のコリコリした食感に、醤油草の旨味とごま油の香ばしさが絡み合って……奥底からメロンの仄かな甘みが弾ける!!」

「種のローストも……! パリパリしてて、ニンニクの塩気が絶妙よ! これ、サケスキー(芋酒)が無限に飲めるわ!!」

 先ほどまで「永遠の愛」を誓っていたマスクメロン夫婦は、あっさりとごま油とニンニクの暴力(B級グルメ)に屈服し、自分たちの愛人の亡骸(皮)を「うめぇ! うめぇ!」と貪り食い始めたのである。

【天界・ゴッドチューブ特別配信枠】

『(コメント欄)…………ファッ!?』

『(コメント欄)ロマンスどこいったwwww』

『(コメント欄)愛人の亡骸が、酒のツマミになっちまったぞwww』

『(コメント欄)感動の余韻をニンニクの匂いで粉砕するなwwww』

『(コメント欄)リアンのサイコパス料理人ムーブ最高すぎるwww』

 全宇宙が涙した究極の純愛劇は、リアンの『食材を無駄にしない』という料理人としての執念によって、完全に「シュールなB級グルメ食レポ動画」へと叩き落とされた。

「あはははは! 素晴らしい! これがポポロ村の料理人の腕ですか!」

 同行していたミラースが、拍手喝采を送っている。

「いや、ダメでしょ!! 空気を読んでくださいよリアンさぁぁぁん!!」

 リーザが頭を抱えて叫ぶ中、天界のモニターの前では、大号泣していた女神たちが、あまりの仕打ち(情緒破壊)に呆然と固まっていた。

お読みいただきありがとうございます!


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